会社は従業員へ事故傷害保険をかけた場合でも、労災保険の支払義務はある
于氏は、2013年3月にある会社で溶接の業務に従事していました。会社は事故傷害保険をかけていたものの、労災保険には加入していませんでした。2014年4月、于氏は業務中に受傷してしまい、労働災害と認定されました。その結果、10級の後遺障害と認定されました。2015年3月、于氏は現地の労働人事紛争仲裁委員会に仲裁を申し立て、会社側へ後遺傷害補助一時金、労働災害医療補助一時金、後遺傷害就労補助一時金の合計93,752元の支払を求めました。会社は、于氏への労働災害を賠償することについて異議は申し立てなかったものの、于氏が事故傷害保険から得た18,000元は差し引くべきだと主張しました。
労働社会保障部弁公庁『商業保険のうちの事故災害保険をかけた後に労働災害保険に加入すべきか否かという問題に関する返書』によれば、「『労働法』第72条に『使用者と労働者は、法に基づいて社会保険に加入し、社会保険料を納付しなければならない。』とあります。つまり、中国国内の会社は、商業保険の事故傷害保険に加入しているか否かに関わらず、労働災害保険に加入し、法に基づいて労働災害保険料を納めなければならないとされています。すなわち事故災害保険は、労働災害保険に代わることはできないとされています。また、会社は、労働災害保険に加入すると同時に、その会社の実情に基づいて、従業員のために事故傷害保険に加入することができます。」とされています。ここから見て取れるように、会社は、従業員のために事故傷害保険に加入するかどうかは自由に選択することができますが、社会保険の強制的な規定から逃れることはできません。『労働災害保険条例』第62条第2項には、「本条例の規定により労働災害保険に加入するべきにも関わらず労働災害保険に加入していない雇用者の従業員に労働災害が発生した場合には、当該雇用者がこの条例所定の労働災害保険待遇項目及び基準に従い費用を支払う。」と規定されています。会社は、従業員が事故傷害保険から賠償を受けていたことを理由に労働災害の給付を免除されることはできず、労働者が既に得た事故傷害保険から差し引くこともできません。協議を経て、会社と于氏は和解が成立し、于氏へ後遺傷害補助一時金、労働災害医療補助一時金、後遺傷害就労補助一時金として合計65,000元が支払われました。
(中工ネットより)
作成日:2015年07月13日