最新法律動向

「責任を追及しない」と承諾後、労災認定を申請 …労災認定は撤回すべきか 

2.6万元の補償金を手にし、「永遠に責任を追及しない。」という合意書に署名した従業員が、改めて労働災害認定を申請し、労働災害と認定された。当該認定は、撤回されるべきだろうか。

2012年8月6日午後4時頃、高峰(仮名)は、職場で勤務中、不幸にも受傷した。2012年12月5日、労使双方は、高峰が署名、会社側が捺印した合意書を作成した。合意書には、「会社は、高峰へ受傷期間の補助及び業務遅延賃金並びにその他全てに対する手当てとして合計2.6万元を一括で支払う。高峰は労災認定を放棄し、なお且つ永遠に責任を追及しない。」と明記されていた。

2013年6月8日、高峰は、煙台市人力資源社会保障局(以下「人社局」という。)へ労災認定を申請した。2014年1月16日、人社局は高峰が業務により受傷したと認定した。会社側は、既に高峰と合意書を締結しており、合意履行後、高峰が合意の約定に違反して労働災害認定を申請したことは、民法における信義誠実の原則に違反しているとして、人社局による労働災害認定の決定を撤回することを求め、裁判所に訴えを起こした。

裁判所は、審理の結果、高峰と会社が協議した補償合意は、民事法上の行為であり、労働災害は、社会保険行政機関が法に基づいて認定するものであるため、この両者はお互いに代替できないものであり、会社は合意書の約定により会社が負うべき強制的な義務を排除することはできないとした。故に高峰が行った労働災害認定の申請に基づき、人社局が労災認定を行ったことは、何ら法律の規定に違反していない。但し、労働災害賠償金の金額が確定した場合、そこから既に合意に基づいて支給した補償金を差し引くことができるとした。

(中工ネットより)

作成日:2015年07月06日