最新法律動向

特許権侵害に関する損害賠償制度の整備

先頃、中国の最高裁判所は全国人民代表大会常務委員会に対し特許法執行調査報告書が示す問題の処理についての状況を報告した。この報告では、賠償額が低すぎる等の問題を解決するため、特許権侵害に関する損害賠償制度の整備を提言している。

 最高裁判所によると、知的財産権侵害に関する損害額の正確な計算が難しいことは、世界共通の課題であり、これは知的財産権が無形で、権利侵害行為が多岐にわたるためであるとしている。現在、知的財産権侵害案件に関して実際に判決された額は、当事者の請求額、期待額との差が大きいものになっている。それには主に2つの原因がある。先ず権利者が賠償額に関する証拠を提示できないか、証拠が足りないこと。次に、立法規則と法律執行基準そのものに改善の余地があるためである。

 最高裁判所は、特許法の改正を契機として、特許権侵害に関する損害賠償制度を整備するよう提言した。また、商標法の規定を参照し、懲罰的賠償制度を増やし、故意の権利侵害、重複する権利侵害現象に対し一定の倍数の懲罰的賠償を設け、制裁効果を高め、現状に鑑み法定賠償の最高額を適度に引き上げ、権利侵害行為者の文書提出義務を強化するよう建議した。更に、裁判所が賠償額を決定する際に、権利者が立証責任を果たしたものの、権利侵害行為に関する帳簿、資料が権利侵害行為者の管理下にある場合には、権利侵害行為者に対し関連する帳簿、資料を提供するよう要求することができ、権利侵害行為者が提出しないか虚偽の帳簿、資料を提出した場合、裁判所が権利者の主張及びその提供する証拠を参考に賠償額を決定できるよう明確に規定することを申し立てた。

 最高裁判所は、司法政策及び規則を系統立てて整理することを提案した。最高裁判所は一貫して知的財産権侵害に関する損害賠償問題に強い関心を持ち、度々政策的な文書によって政策及び規則を明確にしてきた。今後、システムの整理と賠償に関する司法政策とルールについて、有効な措置を講じ、賠償問題を適切に解決するとしている。具体的には、次の内容が含まれる。1.訴訟において、証拠ルールを十分に運用し、釈明能力を高め、当事者の立証責任を強化し、当事者が証拠提出、対質及び訴訟過程において知的財産権の市場価値を説明することを促し、権利侵害による損害賠償において知的財産権の実際の市場価値を反映させる。

2.市場仮定法、価格比較法、業界平均法等の業界分野で通用または公認の分析評価方法を検討し、運用して、損賠賠償における計算の合理性を高める。

3.法定賠償及び酌量賠償の定義及び関係について処理し、酌量賠償の適用比率を向上させ、賠償額計算に必要な一部データが証拠を有しているとの前提の下、案件運用の裁量権に基づき、賠償額計算に必要なその他のデータを確定し、公平かつ合理的な賠償金額を酌量して決定する。4.生産者、製造者などが関わる権利侵害の源流分野における権利侵害行為に対し、取締り強度を高め、賠償額を引き上げる。

5.現在の法律サービス市場の価格及びその他権利保護のための費用支出の実情を考慮し、実際の状況に基づいて権利保護と合理的支出を支持し、「勝訴したにもかかわらず、損をする。」という不合理が発生する事を回避する。

(法制ネットより)

作成日:2015年04月24日