法律相談Q&A

社員旅行中の怪我

従業員が、会社が計画した旅行中に受傷した場合の労働災害認定

Q当社は、青島にある電子関連会社です。営業担当の王は2013年始めに入社以降、優秀な成績を収めてきました。今回、2014年の5月8日から15日までの日程で、王を含む9名の成績優秀な従業員とともに、張家界へ旅行に出かけました。この旅行の際、王はぬかるみに足を取られ、怪我をしてしまいました。このような場合、労働災害と認定されるのでしょうか。

 A:(ここでは労働災害についてのみ分析を行い、その他の法的な論点は割愛させて頂きます)

今回のようなケースが労働災害と認定されるか否かについては、以下の2つの見解がございます。

第1の見解は、『労働災害保険条例』の関連規定に基づき、従業員が勤務時間、勤務場所又は業務上の理由により事故傷害を受けた場合に、労働災害と認定すべきであるというものです。一般的に、会社が計画した旅行は、従業員に対する福利であり、労働者の本来の業務とは関係がありません。また、国が労働災害保険制度を設けた趣旨は、業務上の理由で傷害をした従業員が、補償を受けられるようにするためです。また、現実的な問題として、労働災害保険基金の統制及び有効利用との観点から、いたずらに労働災害保険が適用される範囲を拡大したくない、という背景もございます。

この見解によれば、本ケースは張家界で発生した事故であり、時間、場所、性質等において、すでに業務の範囲を逸脱しているため、一般的には労働災害として認定できないということとなります。

第2の見解は、旅行は従業員のための福利という性質があるものの、業務という要素が存在しないとは言えない、というものです。一般的に社員旅行は、会社が計画するものであり、従業員は旅行中、会社とのつながりを離れて単独で存在することはできません。会社が社員旅行を計画する場合、その目的は従業員の作業効率を高め、組織の団結を高め、従業員と企業の一体感を高めるとの点にあり、企業文化を育成するとともに、有効な管理を行うための手段の一つと理解することもできます。

この見解によれば、今回の旅行は業務の延長と見ることができ、今回の受傷も労働災害として認定されるべきということになります。

会社が計画した旅行中の傷害が、労働災害と認定されるか否かについては、次の2つの基準を参考に、判断して頂ければと存じます。

(1)業務活動との関係性の有無。従業員の様々な能力を開拓し、組織の団結を強化し、業務の効率化を図るなど、旅行の内容に業務活動に関わる要素が含まれている場合、業務に関連した活動と見なすことができます。反対に、単純な休暇、観光に過ぎない場合、容易には業務と関係のある活動と見なすことはできないと思われます。

(2)強制性の有無。企業が従業員に、必ず旅行へ参加することを定め、参加しない場合は欠勤と扱う場合、この旅行には強制性があり、業務との関係性があると見なすことができます。

 なお、いずれの場合につきましても、労働災害と認定されない場合、企業は従業員に対する責任を負い、金銭的な負担が増える可能性がございます。このような事態を避けるため、企業が社員旅行等を計画される際は、従業員に対し事故傷害保険を付保されることをお勧めいたします。

なお、個々のケースにおいては、それぞれの事情もございます。また法律法規には、今回のケースのような受傷について、これを判断する明確な規定がないため、各地の労働行政機関の態度を把握することが、非常に重要となって参ります、このため、具体的な対応の前に、専門の弁護士に問い合わせされることを、お勧めいたします。

作成日:2015年01月17日