まもなく公布される『賃金団体交渉条例』の影響について
Q:人力資源社会保障部(以下「人社部」という。)主導の『賃金団体交渉条例』が年内にも公布されると聞きましたが、この条例公布の背景と企業にどのような影響があるかを教えて下さい。
A:賃金団体交渉制度とは、従業員側が企業と労働報酬、労働時間、休暇休憩、労働上の安全と衛生、保険福利等の事項をめぐり平等に交渉することを進める制度です。
これには2008年に金融危機が発生し、多くの地域及び業界に労働力不足や、従業員が過激な方法で企業に賃上げを求める事件が発生し、労使の矛盾が一時的にエスカレートしたことが背景にあります。労使の矛盾を緩和し、企業と従業員に正常な賃金団体交渉制度を導くため、人社部等の機関が相次いで一連のガイドライン文書を公布しました。この他、各地方政府でも地方立法という形で賃金の団体交渉制度が規定されました。
賃金集団交渉制度の全国規模での施行を更に進めていくため、人社部は『賃金団体交渉条例』(以下「条例」という。)の制定業務を主導しています。関連するメディアの報道によれば、「条例」は年内にも公布される可能性があり、この「条例」により今後各地での賃金団体交渉業務にハッキリとした方向性と原則的な要求を打ち出されるだろうと話しています。
「条例」の発効後は、企業に対して次の影響が考えられます。
1.賃金団体交渉制度の履行が、今後企業と従業員の権利及び義務となる。
上記の文書は、賃金団体交渉制度について作成された規定ではあるものの、いずれもガイドライン的な文書であり、法的な効力は備えておりません。また地方の法規は、当該地方のみ有効であり、全国範囲では適用されません。
「条例」は、法律の形式で全国範囲の企業と従業員が賃金団体交渉を行う権利と義務を規定するものとなり、今後如何なる企業及び従業員も必ず遵守する必要がでてきます。
2.企業が賃金団体交渉制度を履行しない場合、一定の処分に直面する可能性がある。
「条例」は、賃金団体交渉制度の具体的なメカニズムや、当該制度の執行を拒んだ場合に科される処分といった問題に関わる可能性があります。そのため、「条例」発効後、企業は定期的、積極的に従業員と賃金の団体交渉を行う必要が生じ、なお且つ従業員が賃金の団体交渉を申し出た場合、企業は積極的に対応しなければならず、さもなければ企業又は主な責任者が一定の処分を受ける可能性があります。
3.従業員が賃上げを要求する方法が緩和され、過激な手段(ストライキ等)が行われた場合、企業は法に基づいて対応することができるようになる。
「条例」は、従業員に賃金の団体交渉権を与え、従業員の賃金に対する要求を行う際の正常なルートを明確化しているため、従業員が過激な手段によって賃上げを要求する可能性は低下すると思われます。また、従業員が過激な手段を採用した場合、企業側も「条例」の規定に基づいて対応し、企業と従業員間の矛盾がエスカレートすることを避けることができます。
「条例」の発効は、法的なレベルから従業員の賃金上昇の問題を解決し、調和の取れた労使関係を実現する上で大きな役割を果たすでしょう。各地方政府が「条例」の内容に基づいて、より具体的な実施方法を制定する可能性がありますので、企業の皆様におかれましては引き続き、現地の政策を注目してゆく必要があるかと存じます。
作成日:2014年12月19日