一人っ子手当は名ばかりの存在に、「奨励基準の引き上げ」要望高まる
30年間変わらない、5元の一人っ子手当に今どれだけの価値があるか。
一人っ子父母光栄証と毎月5元の一人っ子手当、80年代には栄誉であり実益もあったこうしたことも、現在では本来の意義がほとんど失われている。
1982年、中共中央、国務院より公布された『計画生育政策のより一層の強化に関する指示』に基づき、全国各地において一人っ子家庭に対する奨励政策の実施が始まった。そして今日に至っても、全国の大半の地区ではいまだに昔のままの奨例措置を維持しており、30年間に渡って全く変化のないことが非難の対象となっている。
毎月5元の一人っ子手当は名ばかりの存在に
80年代の人々にとって、毎月5元の一人っ子手当は大半の人々の半月分の生活費に相当したため、決して少なくない額であった。
当該政策が打ち出された背景には、計画生育政策の普及推進があった。一人っ子家庭が「一人っ子光栄証」を受け取った場合、この証明書に基づいて勤務先から毎月5元の奨励金を子供が満14歳になるまで受け取ることができる。また、一人っ子手当を受領しないことを選択した場合、子供が満14歳になるまで無償で医療サービスを受けることができる。
貿易会社で経理を担当していた今年62歳になる戴華春氏は「80年代、普通の人々の1ヶ月の収入は数十元に過ぎなかったため、その奨励金は極めて魅力的だった。」また、「当時は5元で沢山のことができた。米・小麦粉は1角/0.5kg、肉は1元/0.5kgだった。そして、当時一人っ子光栄証を受け取った人々は、この赤い「小冊子」が国のために貢献していることの証と考え、大変誇りに感じていた。しかし、32年が経った今、この奨励政策はまだ存在しているものの奨励金は全く上がっていない。一方物価は10倍、20倍に上がり、5元では一杯のラーメンすら食べることもできない。」と語る。
「こんなに少ない手当では、たとえあってもないのと同じだ。」――。戴華春氏は、現在の一人っ子手当は既に名ばかりの存在となって奨励としての意義を失っており、あの栄光の小冊子に本来の重みが戻ってくることはもう二度とないだろうと述べた。
「奨励基準を引き上げるべきだ」との要望が高まる
「国が80年代、90年代に計画生育のために打ち出した政策について、私は終始一貫して一つの観点を主張する。つまり、金銭によって社会背景を評価することはできないという観点だ。」――。南開人口及び発展センター主任の原新氏は、80、90年代は行政、法律、政治的な面において一定の制限があったという時代的な背景があり、当時の状況を現在の若者が理解するのは困難である、と語る。
今年の両会(全人代と政治協商会議を総称して中国では「商会」という)期間中、全国政協委員、ノーベル文学賞受賞者莫言氏は一人っ子手当を引き上げるべきだと提案した。計画生育政策は確かに人口の過剰増加を緩和し、経済発展を促進する効果があり、ゆとりのある社会を構築するために貢献した。一人っ子家庭の待遇を向上させ、配慮する必要があると莫言氏は述べた。一方、全国政協委員の俞金堯氏は、一人っ子手当による奨励は現在既に実質的な意義がないため、新たな奨励制度の制定を提案している。例えば、一人っ子手当を高齢者サービスに移行させるべきであり、高齢者扶養及び医療サービスの享受に関して、既に老年期に入った一人っ子の父母が一般家庭の高齢者よりも優遇されるよう国は配慮すべきだと述べた。
陕西省衛生計生委政策法規処処長の劉天奇氏も「80年代の初め頃と比べると、給与水準は何十倍も上昇したのに対し一人っ子手当の引き上げ速度が遅いのは明らかである。現段階における消費水準から見れば、当該奨励金を平均給与の10%の水準まで引き上げるのが合理的であり、且つ給与水準の増加と共に奨励金も増額されるような定期的な引き上げ制度を制定すべきである」とかつて述べている。
現在の国情と合致する政策の制定が当面の急務へ
「手当を引き上げるべきだ」と主張する観点とは異なり、原新氏は現在の国情に合った政策を制定することが当面の急務であると主張している。
「一人っ子手当等の奨励措置が30年に渡って変化していないことばかりに皆は注目しているが、現在の国情から見て、一人っ子政策を今後も提唱する必要があるかどうかについては無視されている」と原新氏は率直に話した。現在、一人っ子家庭によって生じる弊害は益々顕著になっている。一人っ子奨励政策は、当時の中国の人口動静によって取られたやむを得ない措置であった。「人口学上の研究により、90年代の初め頃から中国は既に「出生率低下」という人口上の新時代に突入していることが明らかになっている。そのため、特に一人っ子を奨励する必要はなくなっており、一人っ子手当を引き上げる必要も当然なくなっている。また別の角度から見れば、一人っ子に対する教育、健康、就職及び一人っ子が死亡した家庭の高齢者扶養の問題等について措置を取ることにより意義がある。」と原新氏は述べた。
また、原新氏は「当時の中国の人口総数から見れば、全力を挙げて一人っ子奨励政策を実施し、少産を奨励することが、非常に大切であった。現在、我が国は計画出産政策を若干の調整し、『父母の双方が共に一人っ子』『父母のどちらか一方が一人っ子』という家庭には第二子の出産を許可したが、計画生育に関する基本的国策を揺るがすことはできない。適切に政策を緩和し、人口交替指数及び出生率の持続的安定を保つなど、政策の継続性は維持されなければならないが、ただ方法については、社会、時代的特徴とより合致させるため多少の転換も必要になってくる」と述べた。
(光明日報より)
作成日:2014年10月27日