会計監査報告書が暴き出す汚職事件の新たな特徴 集団や家族ぐるみの汚職事件問題が増加
6月24日、国務院の依頼を受け、審計署(日本の会計監査院に相当)の劉家義審計長は、第12期全国人民代表大会常務委員会第9回会議において『2013年度国家予算執行及びその他財政收支にかかる国務院の会計監査業務報告書』(以下「報告書」という。)を作成した。この報告書により審計署の責任者は、「報告書」に対する解説を行った。
【政府機関の一部は、規則に違反して研修会を開催し私利を貪る】
まず審計署は、2013年度の国家予算の執行及びその他財政收支への会計監査は、財政、貨幣、産業、投資、税收等の政策措置の執行状況と密接に関係しており、、「報告書」は一部の政策措置の不適合、不連携、不協力等の問題を反映していると考えるとした。これと同時に、国の8項規則を巡り、国務院が「法三章」の要求と節約の励行により浪費に反対する等の規定を着実に実行することにより、「報告書」は一部の国の機関及び所属事業者の三つの公務にかかる経費(財政予算から支出される海外への出張費、公用車の 購入・維持費、接待費)及び会議費用の管理に存在する問題を詳細に反映した。また、それだけではなく、一部の地方が公務出国費用を転用したり、規則に違反して公用車を使用したり、公務による接待の際に贈答品を購入する等の問題を指摘した。
政府の職能の変化状況を巡り、国の機関に所属する事業者と所管の社会団体に対して重点的に会計監査を行い、一部の機関が所属機関の影響力や把握している業界のリソースを利用し、規則違反の料金徴収、批評会の開催、研修会を開催する等を通じて収入を得たり、管理が制度化されていない等の問題を指摘した。
【基準を超えて分配された財政資金は128億元に】
公共資金の守護者として、会計監査は資金の増量を促進するばかりでなく、限りある資金を国民生活の鍵となる分野及びポイントとなる段階に用いることを保障し、公共資金の安全性を維持・保護し、資金の活用を促進し、大量の資金が眠ってしまい、帳簿上に残っているだけで使用されず、浪費となってしまうことを避けなければならない。
審計署の責任者によれば、「報告書」は財政資金の投入とプロジェクトの進展、事業の発展及び政策目標の実現を統一的に考慮し、全編において効果、成績、責任を問うものだという。
財政資金の使用と安全面から、「報告書」は審査認可に関わる機関が多く、情報のやり取りが難しく、これに加え審査チェック監督管理が行き届いていないため、特定項目の資金管理は使用において問題が多いと指摘している。分配段階で、範囲及び基準を超えて分配された財政資金は128億元余りに及ぶ。申告及び支払い段階で抽出調査した6つの国家財政特定項目のうち18億余りが詐取や非合法な所得によるものであった。使用段階で横領された特定項目資金は31億元余りもあった。
【貧困撲滅資金の会計監査により171名の責任者を調査のうえ、処分】
審計署の責任者は、会計監査業務が最低ラインをしっかりと守り、ポイントをおさえ、制度上の要求を完備し、重点的に貧困撲滅資金に使用し、安住保障プロジェクト建設と「農林水」事業資金について特定項目会計監査を行い、問題を鋭く指摘し、問題是正を促進し、国民生活の向上を図ると述べている。例えば特定項目の移転支出について会計監査で指摘しているように、管理権限と責任の配分が順調ではなく、「農林水」科目の資金の66の特定項目は国の本級の9つの所管機関の50の司局、114の処室が配分管理に参与しているにも関わらず、地方に下達した後には省一級の20弱の所管機関が関与するに過ぎないため、審査認可の流れが煩雑となり、資金が到着するまでの期間が長くなっているため、特定項目の整理能力の拡大を促すとしている。
貧困撲滅資金への会計監査を通じ、関係機関及び地方より公布されたか改訂された制度的文書は40項目余り、返金され、支給された貧困撲滅資金は1.38億元、整理・消化された遊休資金は1.45億元、171名の責任者を調査のうえ、処分した。都市の安住保障プロジェクトに対する会計監査を行った結果、関連する地方より41億元余りの資金を回収し、2.9万戸の家庭に対する保障資格を取り消し、住宅1.65万軒を回収又は整理し、制度724項目を是正した。
【中央企業(中国の中心的国営企業)11社のコンプライアンス違反で134億元の損失】
審計署の責任者の説明によれば、11社の中央企業と一部の地区の鉱物資源開発利用状況についての会計監査のうち、国有企業改革、重大決定事項、国有資産の価値保障増値等の段階を重点的に監査したとのことである。そして抽出調査した11社の企業の791項目の重大決定事項のうち、230項目にコンプライアンス違反の問題が存在し、損失又は潜在的な損失が134億元余りに及んだという。大口の物資調達及びプロジェクト建設項目について公開入札を行っていない金額が1,120億元に及んでいる。関連する地方から徴収すべきにも関わらず徴収していないか横領された探(採)掘権使用料、鉱物資源補償費用、資源税等の資金は280億元余りに及んでいる。権限を超えて審査認可したか、規則違反の審査認可で条件に適合していない鉱業権が636件、うち114件には、低価格で譲渡(転売)されたか、市場価格より高値で購入し不当な利益を得る等の問題が存在している。また13件は、国有企業制度改革の際に無償で譲渡されていた。
会計監査を通じ、関連する企業へ整った規則制度の制定を促した例が1,194項目、税金を追徴するか損失を挽回したものは34億元余り、190名の責任者を処分した。関係する地方からの追徴、違法な所得の没収等は136億元余り、完全な制度40項目を制定した。
【多額の貸付金は監督管理を逃れるために不動産投資へ】
2013年度の国家予算の執行及びその他財政收支への会計監査は、一部兆候的、傾向的な問題となる重要分野について監査を強化した。財政分野では、主に2013年6月末以来の地方政府の債務の変化状況を追跡会計監査し、一部の地方の債務では新しい借入で古い債務を返している金額が高く、新たな融資手段を通じて起債して監督管理を回避する等の問題を指摘した。金融分野では、多額の貸付金が同業者との協力を通じ、基金理財等のルートを通じ監督管理を回避し、国が制限している融資会社や不動産会社へ投資されていることが発見された。一部の犯罪者はインターネット金融等を利用して違法な資金集めや、ネット詐欺等の問題を起こしている。物資の備蓄面では、主に一部の戦略物資の備蓄不足、経済的備蓄における確保政策上の在庫量や、輸入備蓄物資のクオリティコントロールが充分でない等の問題を反映している。
【監査の結果、重大案件として処理された者は1,100名に】
「報告書」は、2013年の各項目への会計監査により発見され、処理された重大な違法・規律違反案件の手がかりは314件に上り、関係者が1,100名に及んだことを開示した。今年、これら重大な違法・規律違反事件の手がかりを分析したことを通じ、審計署は、現在の汚職事件には3つの新たな特徴が存在すると考えている。
①集団的な汚職の問題が著しく、家族ぐるみの問題が増加していること。
②違法な犯罪の手口がより巧妙となり、わざと関連側の「代理人」となって利益を増やす業務を行い、最終的に仲介側から利益の還元を得ていること。
③権力や金銭がらみの裏取引による収益の先物化や、権力や金銭がらみの裏取引での投資や出資要求の傾向、業務の独占、鉱業採掘等の隠れた利益があること。
審計署は、詳細な分析を通じて速やかに異常な変化や異常な事項を発見し、事件の発見や調査処理能力を高めるだけでなく、関係機関のために正確に不正撲滅業務が実施できるよう明確な標的を提供することが、直接的な治療と根源からの腐敗撲滅に繋がると考えている。
(法制日報より)
作成日:2014年09月09日