新『環境保護法』について
Q:中国にて、近々新たな『環境保護法』が施行されると聞きましたが、新法の施行は日系企業に対してどのような影響を及ぼすことになるのでしょうか。
A:新たな『環境保護法』は、今年4月24日、第12期全国人民代表大会常務委員会第8回会議にて改訂案が可決され、来年1月1日より施行される運びとなりました。
新たな『環境保護法』は4回の審議を経て可決にこぎつけ、全面的な改訂を行いました。改訂後の新法は合計7章70条となり、現行の『環境保護法』合計6章47条に比べ、大幅な変更が見られます。現行の『環境保護法』に比べ、次の2点で企業に大きな影響を及ぼすと思われます。
1.環境汚染行為のある企業に対する罰金の上限が撤廃されます
新たな『環境保護法』の第59条には、環境汚染行為のある企業に対して罰金処分を科し、改善命令を受けても改善しない場合、行政機関は改善命令を下した日の翌日より、元の罰金額に基づいて1日ごとに連続で罰金を科することができ、且つ汚染防止設備の運用コストと、違法行為が招く直接の損失等の要素に基づいて執行すると規定されることになりました。また地方ごとの法規では、環境保護の実際の必要性に基づいて、1日ごとに連続して処分を科す違法行為の種類を追加で設けることが可能とされています。
中国の環境関連の法律に定められた罰金額は低額であり、且つどれも具体的な金額で上限がありました。新法において罰金を「1日ごとに科す」という規定が施行された後、環境汚染行為のある企業の罰金額に上限がなくなることとなりました。このため、行政機関から改善命令が下された場合、企業の責任者は速やかに改善を行わなければ高額の罰金を科されるリスクに直面することになります。
2.監督管理を逃れて汚染物質を排出した場合に行政罰として拘留されます
新たな『環境保護法』の第63条および第69条には、企業において直接責任を負う主管人員およびその他の直接の責任者に次の事由がある場合、関連する法律法規の規定に基づいて処分されるほか、状況により15日以下の拘留が科され、犯罪を構成する場合には刑事責任が追及されると規定されることになりました。
①建設プロジェクトに対して法に基づいた環境アセスメントを行わず、建設停止を命令されても、これを拒否した場合。
②法律の規定に違反し、汚染物質排出許可証を取得せずに汚染物質を排出し、汚染物質の排出停止を命令されても、これを拒否した場合。
③地下パイプ、排水ホール、排水溝を通じて汚染物質を流すか、検査データを改ざんまたは偽造するか、汚染防止設備を正常に使用しない等、監督管理を逃れる方法により違法に汚染物質を排出した場合。
④国が明文にて生産や使用を禁止している農薬を生産や使用し、改善命令を受けても、改善を拒否した場合。
①と②は、生産メーカーが注目すべき問題でしょう。企業の責任者は建設工事の際には必ず環境アセスメントを行い、承認を得た上で着工し、汚染物質排出許可証を取得した上で汚染物質を排出するようにしなければなりません。この義務を行わなかった場合には、拘留されたり、刑事責任を追及されるリスクがございます。
中国の環境問題が著しく悪化するに伴い、中国各地の行政府も環境問題を益々重視するようになってきており、環境保護の関係機関による取り締まりも一層強化される趨勢となっています。上に述べたリスクを回避するため、生産メーカーは経営の過程で積極的に自己検査を行い、可能な限り環境問題による処分を受けたり、悪影響が及ぶことを避けることをお勧めいたします。
作成日:2014年05月22日