不良債権リスクの予防
【Q】当社は生産加工型の日系企業で、海外市場・国内市場ともに顧客がおります。しかし、ここ数年の国際的な経済情勢の悪化から、顧客が契約の約定に違反し、代金支払い義務の履行を遅らせるというケースに度々遭遇しております。一部の顧客に至っては、雲隠れしてしまうというケースさえあります。こうした状況のなか、どのようにすれば不良債権化するリスクを抑え、当社の合法的な権利を守ることができるでしょうか。
【A】不良債権化のリスクを防ぐには、通常、リスクヘッジ、リスクマネジメント、リスクの移転の3種類の措置を講じることができます。以下具体的にご説明しましょう。
1.リスクヘッジ。これは会社の経営過程で存在する不確定要素のある行為を回避することで、リスクが発生しないようにするものです。例えば生産型の企業であれば、掛売販売を行うと代金が未回収になるリスクが存在します。このため、現金販売方式を採用し、商品を引き渡す際には必ず代金を受け取るようにしましょう。もちろん市場競争が激しい状況では、一部の競争力のない商品に対しても現金販売方式を採用するのは現実的ではないことがあるかもしれません。そのような状況では、以下の2や3の方法を採用されることをお勧めいたします。
2.リスクマネジメント。これは経営過程で発生する可能性のあるリスクについて積極的に対応し、各種の有効な措置を講じて損失が生じる可能性を防止するか、実際の損失を減少させるものです。これには3つのステップがあります。
①先ず、慎重に顧客を選択します。会社自身もしくは専門の調査会社による潜在顧客・目標顧客への与信調査を行い、与信状況の良い顧客に対しては良い取引条件を与え、与信状況の良くない顧客については取引を中止するか、現金販売方式を採用するようにします。
②次に、取引する顧客を決定した後、取引の履行を保証するため、弁護士等の専門家に依頼し、顧客の状況に応じたワーディングが正確で、法的に瑕疵のない契約書を作成し、売買双方の権利および義務を明確に約定します。
③さらに、契約の履行過程においても顧客の与信状況の変化に常に注意し、突然契約が不履行となった場合に対応できるようにします。顧客が違約しそうか、既に違約した場合、速やかに担保の提供を求めるか、裁判所に財産保全を求める訴訟を起こす等の代金回収措置をとる必要があります。
3.リスクの移転。これは将来的に発生する可能性のある経営リスクに対して、担保・保証契約を締結するか、商業保険に加入する方法により、自らのリスクを他社へ移転させるものです。例えば、顧客に販売する際、第三者による契約履行担保を求めることにより、経営リスクを低下することが可能となります。
このように企業経営においては、孫子の兵法にいう「知己知彼百戦不殆(敵と味方の情勢を知り、その優劣・長短を把握していれば、何度戦っても負けることがない)」を実践し、相手会社の実情に応じた不良債権リスクへの対策を講じることをお勧めいたします。
作成日:2014年01月21日