最新法律動向

広州でビットコインに関する詐欺事件が連続発生

 広州警察当局は昨年11月から12月にかけて、ビットコインの販売を理由に詐欺を働く類似の被害届を5件受理し、その被害金額は3.5万元に上っているという。主にビットコインを購入し現金化するか、チャージするか、投資するという名目で詐欺が行われたという。

 ビットコインは凍結できず、追跡できず、納税も不要で取引コストが低いという特徴があり、高い投機リスクが存在し、犯罪者に利用され、犯罪の新たな手段となる可能性が極めて高い。広州の警察当局は、「ビットコインには6つの潜在的な問題があり、犯罪者が詐欺に利用しやすく、違法な資金集めの場となる可能性があり、投資を目的としたネットワークビジネスとして、マネーロンダリングの媒体となる可能性を秘めている。ビットコインへの投資はあてにならず、リスクが大きく、市民はこの種の新手の詐欺に騙されないようにする必要がある。」と話す。

1.事件概況:十日余りで五件もの事件が発生
 11月19日、被害者である伍氏は、広州増城市新塘鎮にてインターネットにアクセスした際、あるビットコインのウェブサイト(ウェブサイト名:比特児-bter.com)にてビットコインにチャージする方法で人民幣9,325元を騙し取られた。同氏によれば、ネット銀行を通じて比特児ウェブサイトのアカウントに送金したという。

 11月27日、被害者である謝氏は、広州市白雲区紅星村でインターネットにアクセスした際、ビットコインにチャージする方法で人民幣2,000元を騙し取られた。

 12月2日、被害者である周氏は、ウェブサイト上でビットコインを購入する操作をし、人民幣6,840元を騙し取られた。同氏は8月に広州大学学園都市の広州大学生活エリアにてインターネットにアクセスし、ビットコイン取引サイトを自称するgblという名前の会社からビットコインを購入し、合計9回人民幣6,840元をネット銀行を通じて当該会社の指定する口座に送金したという。

10月21日、被害者は、突然当該会社のウェブサイトにログインできなくなり、当該ウェブサイトも削除されたことに気づいた。その後、警察によりgbl社詐欺事件が検挙したと聞いたため、すぐに被害届けを出した。

 12月4日、被害者である呉氏は、広州市天河区黄埔大道のあるビルにてインターネットにアクセスし、avalon(ビットコイン採掘機一種の電子商品)の第2世代を購入した。そして売主の郭氏と人民幣13,500元で取引すると連絡を取り、アリペイを使用して郭氏に代金を送金した。被害者が後でアリペイのカスタマーサービスに電話を掛けたところ、担当者から売主はアリペイの代金を受領していないと言われ、詐欺に遭った可能性があるとして警察に被害届けを出した。

 12月7日、被害者である梁氏は、広州市白雲区石井にてインターネットにアクセスした際、ビットコインに投資するという名目で数千元を騙し取られた。うちアリペイを通じて約4,000元を相手に送金したという。

2.なぜビットコインが流行したのか
 ビットコイン(Bitcoin)とは一種のネット上のバーチャル通貨であり、数量に限りがある(合計2,100万個)。テンセント社のQコインに似ているが、現金化が可能であり、殆どの国の通貨との換金も可能である。

 現在ウェブサイト上でビットコインに投資している人は大勢おり、ビットコイン取引サイト(先物取引市場に類似するもの)を通じて買い注文と売り注文が行われ、その市場相場は毎日変動しているという。このためコンピュータプログラマが設計した複雑な計算により多くのビットコインを採掘することができるプログラムを開発している。また、こうしたプログラムの起動には「採掘機」と呼ばれる高スペックのパソコンが必要となる。

 現在、一部の外国政府はビットコインへ合法的な地位を認めている。中国では、ビットコイン購入の主なルートはbtcchina.com、fxbtc.comおよびタイパオウェブサイトの中の10数社のタオパオショップである。北京には、既にビットコインでの支払いを認めているレストランもある。中国国内で初めての「ビットコイン」投資ファンドも現在募集中であり、その総額は2,000万元となっている。

3.匿名で監督管理を受けないものの全世界で流通が可能
 広州警察の責任者によれば、ビットコインには発行機関がなく、全世界で流通することができ、取引費用が安く、個人に専属所有権があり、匿名、免税、監督管理を受けないという特徴があるため、大量にブラックマーケットに流入し、マネーロンダリング、賭博、多国間取引等の活動に用いられる可能性があるとの事である。

 ビットコインの発行と流通は、オープンソースのP2Pアルゴリズムを通じて実行されるという。2040年までにはビットコインの流通量は、2,100万個に達するだろうと言われている。言い換えればビットコイン体制は自給自足することができ、コードを編成することによりインフレを防ぐことができ、他者による破壊を防ぐことができる。

 これと同時に、ビットコインはインターネットに接続できる任意のパソコンで管理することができる。どこにいても、誰でもビットコインを採掘、購入、販売、受領することができる。操作・コントロールにはプライベート・キーが必要であるが、これは全てのストレージメディア内に隔離保存することができ、ユーザー自身以外には誰も取り出すことができない。取引の過程で、誰もユーザーの個人情報に触れることなく、取引費用も安価である。

 上述の責任者は、「ビットコインは、点と点を結ぶウェブ上の匿名デジタル通貨であり、送金ルートは国家による制約を受けない。ビットコインの送金はウェブノードによる集中管理が行われ、取引側は自らの真実の身分を隠すことができ、あらゆる政府、あらゆる銀行からの制約も受けない。」と話す。このため、匿名、免税、監督管理がないという特徴を持つビットコインは、大量にブラックマーケットに流入し、マネーロンダリング、賭博、多国間取引等の活動に用いられる可能性があると述べている。

4.ビットコインには6つの問題がある
 警察当局の責任者による分析では、ビットコインには6つの潜在的な問題があるという。

①犯罪者による詐欺行為のターゲットにされ易い
 「ビットコイン」の取引が日々活発になるにつれ、「ビットコイン」取引を利用した詐欺や、「採掘機」等の派生商品の売買を行うため、非常に似通った偽のネットショップ、偽の取引サイトを設立して被害者を騙し「ビットコイン」のチャージさせたり「採掘機」を購入させるなどのネット詐欺が行なわれている。同責任者は、「現在、広州市で発生したビットコインに関する詐欺事件は、主にビットコインを現金で購入させるか、チャージさせるか、投資の名義で騙し取るものである。」と話す。一方、浙江省東陽市では近時中国国内で初めてのビットコイン詐欺事件が解決に至った。被害金額は2,000万元余りに上るという。

②高い匿名性
 ビットコインの取引サイトは通常1つのウエブサイトであるものの、ビットコインには高い匿名性が備わっているため、盗難事件が発生しても捜査が難しく、ハッカーの攻撃に遭いやすいという弱点がある。2011年6月、あるハッカーが25,000個のビットコイン、50万米ドル相当の盗難に成功し、ビットコイン関連初の窃盗犯となった。 

③取引サイトが違法な資金集めの場となる可能性
 現在多くのビットコイン投資ウェブサイトでは、ビットコインへの投資は、少ない投資でハイリターンであるという旨の広告が行われており、利益率が高いと説明している。犯罪者は、偽物のビットコイン取引サイトを立ち上げるだけで、高額のリターンが見込めるため、専門知識のない投資家に購入を促し、広い範囲で違法な資金集めの犯罪活動を行うことができる。またウェブサイトの運営、メンテナンスは犯罪者の手中に握られているため、必要な場合にはウェブサイトを閉鎖することができ、秘匿性が高いものになっている。

④投資を理由にネットワークビジネスを行うことも可能
 ビットコインは、株式投資、資産運用と同様に、大きな誘惑性が存在している。犯罪者は、これをネットワークビジネスのキャッチコピーとして「ビットコイン」の演算プログラムの特性を利用し、一定の専門知識を持つ人々に対し「経営サンプル」を提供し、ネットワークビジネス活動を展開する可能性もある。

⑤監督管理の弱さ
 「ビットコイン」の取引には監督管理が欠けているにも関わらず、全世界で自由に流通している。その基本的な操作は本人が自ら行い、手数料が安いため、犯罪者はこの特徴を利用して地域や国を跨ぐマネーロンダリング活動を行うことができる。これは伝統的な地下銀行によるマネーロンダリングよりも敏捷で、更に迅速であり、犯罪の痕跡を留める割合が少ないという。先日の警察責任者も「ビットコインは、マネーロンダリング犯罪の媒体となる可能性がある。」と述べている。

⑥脱税に利用される可能性
 現在中国ではビットコインによる商品売買に対して法律による制約を行っていない。またこの種の取引は国の税務機関の税収システムに組み込むことが難しく、必然的に国家の税収の流失を招くことになる。

5.ビットコインを利用した新手の詐欺を防ぐ必要がある
 
ビットコインは流通性が高い、実体通貨に換金することができる、市場相場の変動が大きい等の特徴があり、取引は日々活発になってきている。このためこの種の投資により市民の損失が生じ、紛争も増加している。

 これについて広州警察は市民へビットコインへの投資リスクは極めて大きく、けしてリターンだけでリスクのないものではなく、一般市民が信頼することのできる投資手段ではないと呼びかけている。ビットコイン取引ウェブサイトはハッカーによる攻撃を受け損失を招きやすく、これと同時に経営者が会社の金を持ち逃げするリスクも孕んでいる。

 

(法制ネットより)

作成日:2014年01月15日