最新法律動向

新旅行法が正式施行 -旅行の「裏ルール」は最後の悪あがきへ-

 ある旅行路線の旅客数が短期的に減少した場合、個人旅行とマイカー旅行の旅客数が増加する可能性がある。旅行価格の値上げは、旅行客にとってセンシティブな問題である。

 「なぜ多くの旅行代理店は10月1日以降の旅行料金は値上げすると言っているのだろうか。」国慶節の期間(10月の第1週)に旅行を計画している林さんが幾つもの旅行代理店へ問い合わせたところ、国内旅行が値上げするだけでなく、海外旅行も同様に値上げしてるとの事であった。 

 10月1日より正式に施行される『中華人民共和国旅遊法』(以下「旅行法」という。)は、現在ホットな話題となっている。旧「旅行法」に比べて、料金の点で新「旅行法」には4つの特徴がある。
①旅行代理店は、旅行者へ買い物の場所を指定し、これを旅行者へ斡旋してはならない。
②チップは旅行代金の中に含まれているものとする。
③オプショナルツアーは、全て取り消すものとする。
④不可抗力により費用が増えた場合には、旅行客と旅行代理店の双方が折半する。

 「新法では旅行代理店による旅行者への買い物斡旋に厳しい規定を設けたため、旅行代理店がこれで儲けていた部分が損失を被ることとなった。」睿信致成管理コンサルティングのパートナーである王丹青氏は、「国際金融報」記者の取材を受けた際、「これは旅行価格高騰の鍵となる要素だ。」と述べた。注目すべき点は、当該法が4月に公布されてから、8月末9月初旬に再度ホットな話題となったことである。業界筋の分析によれば、これは消費者へ国慶節以降旅行価格が値上げするというニュースを事前に知らせて消費を促すとともに、「安く旅行へ行きたければ、“裏ルール”など気にせず9月中に行った方が良い。」というメッセージだという。

タイ旅行の価格は、10月以降2倍に
 大手旅行代理店から得た情報によれば、新法施行後各旅行代理店は「値上げ」問題で頭を悩ませているという。値上げが高すぎれば客の旅行離れを招くことになるが、値上げが低すぎれば原価割れを招くことになりかねない。現在、一部の旅行代理店では典型的な大衆団体旅行路線を値上げしつつある。特にタイ旅行ではそれが顕著である。「価格は、いずれのツアーでも若干値上げするだろう。」中国国際旅行社の関係者は「国際金融報」の記者が聞いていた値上げの噂を裏付けた。「現在上海からタイに旅行へ行く場合、ツアーなら4,000元強だが、国慶節休暇以降は7、8,000元前後が必要になるだろう。」

 複数の旅行代理店が語ったところによれば、国慶節休暇以降、海外旅行の値上げ幅は1,000元以上、国内旅行の値上げ幅も100元から200元前後になるとの事であった。烏鎮(上海近くの旅行地)で民宿を経営する葉さんも、この話を裏付けた。「10月以降も烏鎮の入場料の価格は値上げしませんが、宿泊施設や観光地の物価は上がるでしょう。」

 「旅行代理店が旅行客へサービスを提供する場合、具体的な買い物の場所を指定してはならず、別途支払が必要なオプショナルツアーを手配してはならない。」「ガイドが旅行者へサービスを提供する場合、旅行見積の中にガイドのサービス料を明記しなければならない。」記者が把握しているところでは、10月1日より施行される「旅遊法」では、全ての旅行商品(即ちツアー旅行)では、「チップ、オプショナルツアー、買い物場所指定なし」の「オールインワン価格」が求められている。

 王丹青氏によれば、価格に影響を及ぼす鍵となっているのは、この「オールインワン価格」であり、上記の条項が旅行代理店のこれまでの利益を損なうため、価格を上げて利益を保つ必要があるとの事であった。あるアナリストによれば、旅行代理店により価格の調整幅は異なっており、一部の取り扱いが規則通りではなく、低価格で市場を奪おうとしていた旅行代理店などではツアー商品を大幅に値上げすることになるだろうが、規則を守り、サービスの質が良い旅行代理店では、価格変動の幅は大きくないだろうと述べた。

旅行客数は、短期的に影響を受ける予想
 旅行価格の値上げを旅行客は受け入れることができるだろうか。「一部のツアーの旅行客は短期的に少なくなり、個人旅行とマイカー旅行の旅客数が増加することが予想される。旅行価格の値上げは、旅行客にとってセンシティブな問題である。」と王丹青氏は話す。また、「旅行は娯楽的な消費に属するものであるため、長期的にみれば旅行客数は安定していると思われる。旅行代理店も業績の悪化を心配することはない。なぜなら高齢者や社員旅行をする者など、団体旅行を選ぶ人はいなくならないからだ。」と述べた。

 聞くところによれば、新法実施後、全てのツアー日程、サービス基準など、旅行客は旅行前に充分な知る権利が与えられ、なお且つこれらが契約という方法で明らかに約定されるようになるという。そうなれば、旅行客はより安全で満足のいくサービスを受けることができるようになるだろう。ある旅行代理店関係者は、「消費者がツアーを選択するとき、ツアーの日程を通じて参加するツアーの旅行内容、サービス基準等をハッキリと理解することができ、ベストチョイスをすることができる。旅行代理店は経営上、出来る限り悪性の競争を避けるようにしている。我々は、ハイクオリティなサービスを競うようになりつつある。」と指摘する。 

 王丹青氏は「旅行客は新法の規定に基づいて、自らの合法的な権利および利益を維持・保護できるだろう。」と述べる。これは旅行市場全体にとって大変プラスである。「ここ数年、中国の旅行に対する消費は鰻のぼりである。健全な規則で制度化された旅行市場は、業界の発展にとっても極めて有利だろう。転ばぬ先の杖は、泥縄よりも妥当だと思う。」しかし、ある業界筋によれば、「旅行法」が旅行市場を制度化し、旅行の品質を引き上げると同時に一部で反作用を産む可能性もあるという。合理的な買い物と特色あるオプショナルツアーまで一律にゴミ箱行きとしてしまった場合、旅行の値上げを招くばかりでなく、旅行者からのアンコールがかかる可能性もある。

(人民ネット 国際金融報より)

作成日:2013年09月12日