全人代は環境保護法改正案を審議 -悪質違反は毒物投棄と見なすべきだとの声も-
ボイス・オブ・チャイナの報道によれば、第12回全人代常務委員会第三回会議において環境保護法改正案に対する審議が行われた。これは第18回共産党大会の活動報告において、「美しい中国を建設する」という方針が打ち出された後、再び審議が行われている草案である。
環境保護は、どのような時期であるかに関わらず、つねに人々が最も関心を持っている話題である。そして環境保護法の不備は、人々が将来新鮮な空気を吸うことができるかどうか、清潔な水を飲むことができるかどうかに直接関係する問題であり、環境保護法修正案への意見と修正にはいずれも充分慎重でなければならないと言える。
草案二審原稿では、常務委員会の審議において、多くの意見と提案が出され、多くの箇所に修正が加えられた。検討すべき価値のある条項に対しては、各委員が自らの意見を発表した。では、今回の会議において、出席した委員、代表達はどのようにこの美しい中国を保護する法律を作ろうとしているのだろうか。
審議において、ある委員からは現在各地の環境に問題が発生しているものの、一部の地方政府の指導者は重視していないという意見が出された。一部の地方では企業が密かに汚染物質を排出したり、漏らしたり、基準を超えて排出していても、関心がないためそれが常態化しているという。
草案二審原稿では、政府の責任を明確化している。環境に対する違法行為を隠し立てた場合、偽造または検査測定データの捏造を指図した場合、法に基づいて公開すべき環境情報を公開しなかった場合等の状況に対し、関連する責任者を罷免するか解職処分とし、主な責任者は引責辞任すべきだとした。ある委員からは、これは各レベルの地方政府にとって確かに大きな抑止力となり、伝家の宝刀となりうるものだとの意見が出された。
ただし、一部の意見からはこれでは不十分であり、更に法執行機関による不作為、職権乱用等を取り締まるべきだとの意見が出された。万鄂湘副委員長は、調査・検討を行う中で、民事訴訟の中に公益に対する訴訟という概念があるだけでなく、行政訴訟の中にもあるのだから、環境に対する法執行機関の不作為、職権濫用も行政公益訴訟を提起することができると多くの人々が呼び掛けていることを発見したと述べた。
万委員長は、具体的な内容について以下のように述べた。「何をもって不作為と言うのか。調査・処理を命じたのに、調査・処理を行わない場合、または上級の指導機関による制約を受けて、目こぼしを行う場合。このような行為が行政機関の不作為であり、そのに対して公益訴訟を提起することができる。何をもって職権濫用というのか。排出汚染費を徴収しながら、排出汚染の解消のために使用しないこと。これが職権濫用である。また大気土壌汚染の指標、水質汚染の指標等、一部の環境保護情報を公開しない場合や、公開すべき指標を公開しないばかりか、虚偽の指標を公開すること。これらは全て職権濫用行為である。市民や公益団体がこうした機関を監視していれば、彼等が職権濫用することができなくなり、職権の行使に有益なだけでなく、環境保護にも有益である。」
草案は、汚染物質を排出する企業に対する処分の度合いを強めている。草案二審原稿には、「企業事業者とその他の生産経営者は、地下パイプ、地下排水穴、高圧注入を通じ、またはその他の監督管理逃れの方法で汚染物質を排出し、犯罪を構成する場合、法に基づいて刑事責任を追及する。」一部の規則違反行為は、1日ごとに連続して罰金処分を受けると規定されている。」との内容が加えられた。
黄小晶委員は、罰金頼りでは問題解決にならないと述べる。著しい規則違反排出行為は、毒物投棄と見なすべきだという。「一部の企業は地下パイプで排出し、地下排水溝で排出する。なぜ地下パイプ、地下排水溝を使用するのか。なぜならこれらの液体は、人目を憚るものだからである。著しく人々の健康に悪影響を及ぼす毒物だからである。これは毒物廃棄と、どんな違いがあるだろうか。こうした事情は、充分重視すべきである。どの程度に達したら毒物廃棄として処理すべきか、そうした基準を設けてこそ、こうした行為を厳しく抑制することができる。」
万副委員長も、罰金規定に対して意見を述べた。それによれば、一部の法執行機関は罰金により刑罰の代用としているという。このため草案では、当該状況について更に制度化すべきだと述べている。万副委員長は、また「第57条が規定しているのは、行政機関の直接の責任者である。下記の行為を行った場合、解職または引責辞任など各種の処分を受けるべきである。これは直接密かな排出行為の発見した場合、罰金処分のみとし、検察機関へ犯罪の証拠を移送しないことを防止するものである。直接犯罪とされる行為を発見した場合に罰金で代替した場合、行政機関の責任者も第57条の罰則を受けるようにする。このように緊密な連携が取れてこそ、法律上も、ロジック的にも厳密なものとなるだろう。」と話している。
今回の草案には「国民は環境保護意識を高め、環境保護義務を自覚的に履行しなければならない。」という言葉が書き加えられた。陳昌智副委員長は、この表現が更に具体的なものになることを望んでいる。なぜなら現在多くの都市では市民が焼却工場や埋立地の建設に反対しているからである。
陳副委員長は、「市民は、環境保護産業の現地における建設を支持する。この表現について、まだ考えがまとまっていないが、より具体的に規定することができると思う。」と述べているのに対し、孫憲忠代表は、陳副委員長の見方には賛成しない。孫代表は、学術界の多数の者は、この問題提起は再考に値すると考えているという。なぜなら、大多数の国民は、環境破壊の被害者だからである。真に義務を負うのは具体的な個別の人々であり、国民全体ではないからであるからだ。
孫代表は、以下のように述べた。「この法律の中でこうした義務が語られることは、あまり適切ではないと思われる。環境保護法学者は、立法の際に国民の環境権を語るべきであり、国民の環境に対する義務を語るべきではないと考えている。法科学の観点から述べれば、義務は必然的に責任を伴うものである。義務を履行しなければ、必然的に法律の強制的な結果、つまり法的責任を負うことになる。国民が義務を履行しないか、当該義務に違反した場合、どのように法的責任を追及するのか。どのように法的責任を確定するのか。これは事実上不可能なことである。」
(中国ラジオネットより)
作成日:2013年07月17日