法律相談Q&A

最新情報 労働契約法の改訂について(前編)

  昨年12月28日に『労働契約法』の改訂案(以下「改訂案」という。)が可決され、今年7月1日より施行の運びとなりました。今回の改訂案では、現在派遣制度が濫用されている状況に鑑み、①派遣会社の資格に関する条件の変更、②同一業務・同一賃金、③「三つの的」の意味の明確化、④処分の厳罰化という4つの面で労務派遣へ対する規制を強化しています。今回の改訂案は現在派遣労働者(以下「派遣社員」という。)を使用している日系企業にも、今後影響が出ることが予想され、多くの質問が寄せられています。

①派遣会社の資格に関する条件の変更
Q1:当社は、多数の派遣社員を採用している日系生産メーカーです。今回の改訂に際し、会社が契約する派遣会社選びについて今後注意すべき点は何でしょうか?

A1:今回の改訂案では、派遣会社の資格に関する条件について定めた第57条が大幅に改訂されました。例えば、派遣会社は登録資本金人民幣200万元以上、固定した経営場所や施設、相応する派遣管理制度を備えている必要があります。また、会社設立時における行政認可プロセスが追加されました。

 現在、実務において、日系企業と提携する一部の派遣会社は改訂案の条件を満たさない会社もあるかと思われます。正規の経営資格を備えていない派遣会社と提携した場合、派遣労働者を使用している企業も、派遣会社の違法経営による労働者の権利の侵害に対する連帯責任を負わされる可能性があり、かつ政府機関から厳しい行政罰を受ける可能性もあります。したがいまして、改訂案施行迄に自社と提携している派遣会社が正規の資格を有し、行政機関からの認可を受けているか否かについて確認されることをお勧めいたします。

②同一業務・同一賃金について
Q2:改訂案に同一業務・同一賃金の報酬という原則が盛り込まれたそうですが、派遣社員を採用する企業として、どのように対応すべきでしょうか?

A2:業務と賃金について定めた第63条では、同種の職位及び類似の職位では、同一業務・同一賃金の原則に基づいて報酬を支払い、なお且つ書面で派遣社員の報酬を約定する場合には、同一業務・同一賃金の原則に適合する必要があると改訂されました。

 これは、実効レベルの高い法律の中で同一業務・同一賃金の原則の重要性を初めて強調したものであり、企業が同一業務・同一賃金の原則に違反した場合、企業と派遣社員の報酬に関する約定が無効と認定される結果を招く可能性もあります。その場合、企業は同種の職位又は類似の職位の正社員の賃金基準で異なる報酬の差額部分の報酬を補償する以外に、派遣社員へ賠償し、行政罰を受けることになる法的リスクが存在します。したがいまして、改訂案施行迄に、企業は政府機関の同一業務・同一賃金の施行過程でおける今後の具体的な解釈に注意するとともに、自社の賃金制度について慎重に制定・修正し、同一業務・同一賃金の原則に違反する法的リスクを予防されることをお勧めいたします。

(次号後編に続く)

作成日:2013年01月28日