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ネット権利侵害案件に関する裁判所の管轄権

 中国の最高裁の知的財産権法廷の責任者によると、司法解釈に追加された規定に基づけば、権利侵害の行為地と被告の居住地が共に海外である場合も、裁判所は当該案件に対して管轄権を有するとし、権利者が中国にて訴訟を提起し、現実的に権利者の合法的な権利及び利益を保護する上で便宜を図ると述べた。

 最高裁は、26日に『情報ネットワークの伝達権侵害にかかる民事紛争の審理へ法律を適用する際の若干の問題についての規定』(以下「規定」という。)を対外的に公布した。

 上述の責任者は、司法解釈の制定過程において、司法の執行過程で多くの海外に関わる案件が発生しており、被告の居住地及び権利侵害行為の実施地域が何れも国外であったとしても、権利侵害の結果が国内で発生する場合に、裁判所が当該事件に対する管轄権を行使できなければ、権利者の合法的な権利を保護することができなくなることが考慮されたと述べた。

 上述の責任者からの説明によれば、司法解釈は、著作権法、権利侵害責任法及び情報ネットワーク伝達権保護条例等の法律法規へ厳密に沿って起草されたという。「規定」は、裁判所が類似案件の審理に裁量権を行使する場合、権利者、インターネットサービスプロバイダ及び一般大衆の利益に配慮すべきということを特に強調している。インターネットサービスプロバイダに相応の責任を負わせると同時に、過度に責任を負わせることは避ける。これは、インターネット環境における著作権保護の中で、著作権者とインターネットサービスプロバイダの利益のバランスを取るという基本原則に則っている。

 上記の責任者によれば、著作権は私的な権利であるが、同時にインターネット技術の発展の基本的な目標及びその価値の傾向は、情報の交流と伝達ということにあるため、インターネットサービスプロバイダーがネット上の大量の情報について権利者の情報伝達権を侵害しているか否かに対して積極的な監視の義務を負わないことは、既に国際的な共通認識と方法になっているといった。

 中国著作権法および関連条例には、インターネットサービスプロバイダが監視義務を負わないと明確に記載されていないものの、これが採用する規則は、事実上インターネットサービスプロバイダが積極的な監視義務を負わないことを承認するものとなっている。このため、司法解釈の中でもインターネットサービスプロバイダがインターネット利用者の情報伝達権侵害行為に対して主体的な審査を行わないことについて、裁判所はこれを過失とは認定しないと明確に規定している。

 司法解釈は、合計16条からなり、情報の伝達権に関する紛争の審理について制度化したものであり、2013年1月1日より施行される。統計によれば、地方裁判所が去年新たに受理した知的財産にかかる民事案件の一審は59,882件であり、うち著作権案件は35,185件とされている。ここ数年、情報の伝達権に関する著作権紛争案件の受理数は、全ての著作権案件中60%前後を占めている。こうした案件を審理する際、情報ネットワークの伝達権へ如何に境界線を引くか、特にインターネットプロバイダの法的責任について如何に判断するかが、裁判所の知的裁判権審理が直面する大きな問題となっている。 

(新華ネットより)

作成日:2012年12月21日