労災問題について
Q.先日、当社で退勤後に慰労会を行った際、従業員が帰宅時に不注意から転んで怪我をしてしまいました。こういう場合も労災と認定されるのでしょうか。当社は如何に対応したら宜しいでしょうか。
A.(1)当該従業員が労災に該当するか否かについての法的分析
『労働災害保険条例』第14条には、「出退勤の途中において、本人に主たる責任のない交通事故により傷害を受けたときは、労働災害に該当する。」と規定されています。
しかし、貴社の当該案件についての説明によれば、当該従業員は会社の食事会に出席した後、帰宅の路上で不注意から転んで怪我をしたというもので、加害者のいない状況で発生した不慮の事故であり、「交通事故」により傷害を受けたわけではないとのことでした。このため、当該従業員の受傷は労災には認定しないと認識いたします。
(2)貴社が労災認定の申し立てを行う必要があるかについて
当該従業員が傷害を受けたことは労災に該当しないものの、労働行政機関のみが権威ある最終的な判断権を持っているという点及び『労働災害保険条例』第17条「 雇用者が、事故傷害発生の日から30日以内に労働行政機関へ労働災害認定の申し立てを行わなければならない。雇用者が、労働災害認定の申し立てを行わない場合には、労働災害を受けた従業員は、事故傷害発生の日から1年以内に、雇用者所在地の労働行政機関に対し直接に労働災害認定申請を提出することができる。 雇用者が所定の期間内に労働災害認定の申し立てを行わない場合において、当該期間にこの条例の規定に適合する労働災害待遇等の関係費用が生じたときは、当該雇用者が負担する。」と規定されている点を考慮する必要があると思われます。
つまり、貴社が法定期間内に労災認定の申し立てを行わず、従業員自身が労災認定の申し立てを行い、なお且つそれが労働行政機関が労災と認定した場合、貴社には当該従業員の労災待遇を負担しなければならないという不利な結果(この場合、労災保険基金からは支給されません。)が齎されることになります。従いまして、こうした法的リスクを避けるために、貴社より当該従業員の労災認定申し立てを行うことをお勧めいたします。
労働行政機関の認定を経て、当該従業員の受傷は労災に該当しないと認定した場合、貴社は労災責任を負う必要は無くなりますが、当該従業員の受傷状況に基づいて、適切な病気休暇を与える必要があると思われます。
作成日:2012年10月26日