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武漢工商局、登記変更のミスも事件という認識を示す-当事者は国家賠償を請求の意向-

 湖北ある会社の法定代表者は、一年足らずの期間に2回も変更されていたにもかかわらず、当事者は、その事情を知らされなかったという。このニュースは、多くの人々から注目を集め、あるネットユーザーは、七部委(国家林業局・発展改革委員会・監察部・国土資源部・環境保護部・水利部・農業部の総称)から2010年には関連文書が出されていたのに、工商局が投融資担保会社を変更する際、経済情報委員会による事前審査が必要となっていたことを知らないはずはなく、故意の行為なのではないかと述べた。

 当事者に糾したところ、ミスが発覚
 8月30日晩、この問題について武漢市工商局及び江漢区工商分局の関係者からの説明があった。湖北益投融資担保有限公司(以下、益融社)の登記変更は、具体的には武漢市江漢区政務サービスセンター工商登記窓口が手続きを行った。楊軍氏は、登記窓口の責任者であり、その手続きの全過程に携わったという。

 楊軍氏によれば、2011年6月初旬、益融社の王平女史等2名が登記窓口に、法定代表者の変更申請に来たため、彼女達に法定代表者の変更についての一般的な手順及び必要書類について説明したという。「しかし、最後の書類を提出する段になって、王平女史は、当社では、郭建忠氏以外、10%の持分を所有する黄木舫氏と龔洪平氏が共に株主会の決議書に署名してないなど、この問題について株主間で、意見の一致をみていないと言い出した。」と話した。楊軍氏は、王丙女史からは、黄木舫氏が法定プロセスに基づいて法廷代表者及びその他の情報を変更するという会議議事録も提出されたという。

 2011年6月30日の「湖北益融投資担保有限公司株主会会議議事録」によれば、会議の出席者は郭建忠氏及び黄木舫氏であり、書記は王平女史、黄氏より「全てのステップが法の規定により進められているなら、私は何も意見はない。」当該議事録上には、郭氏と黄氏の2名の署名が見られる。

 しかし「湖北益融投資担保有限公司株主変更決議書」(2011年7月28日)上には、郭建忠氏1名の署名しか見られない。「郭氏は会社持分の80%を所有している。関連する法律の規定及び益融社の定款の規定によれば、確かに(郭建忠氏の所有する)3分の2の表決権があって、(この決議を)可決することができる。」楊軍氏は、このように説明した。

 楊軍氏は、登記変更にミスが生じた理由について、当時担当者の全神経が、龔洪平氏は株主会に出席できるかどうかという点にだけ注がれていたためだという。「当該業務に習熟していた訳ではなかったため、七部委からの当該文書については、すっかり見落としていた。」

 今年3月、龔洪平氏が江漢区工商分局に法定代表者の登記変更の申請書を提出したところ、経済情報委員会の審査を経ていないため、当該局は、益融社の法定代表者変更登記は法に合致していないとして却下した。楊軍氏は、「この時になって初めて、我々は、登記プロセスに漏れがあるかも知れないということを意識しました。その後、全ての書類を調べなおし、関連状況を確認し、その結果(審査を)ストップしました。我々は、この業務をキチンと処理しようとしていたのです。」と述べた。

工商局は、登記変更ミスの修正を試みた
 
では、ミスを意識しながら、なぜ半年近くの時間を経てから取消決定を出したのだろうか。楊軍氏によれば、取消決定を出すには、一定の手続きが必要であり、先ず調査を行わなければならなかったという。工商局は、先ず郭建忠氏に対して調査を行った。「我々は、益融社側も当時積極的に経済情報委員会へ審査を申し込み、事前審査プロセスを補おうとしていたことを把握していました。」楊軍氏によれば、益融社は先に当該手続きを行うと述べたため、「益融社側が経済情報委員会から許可書を取り付けるのを待っていた。」と述べた。

 今年より、投資担保公司設立のハードルが高くなり、設立に必要な登録資本がこれまでの2,000万元から1億元に引き上げられた。「益融社には、経済上の紛争も存在していたため、これ以上投資するのはリスクが高いのではないかと益融社側は考えていた。経済情報委員会が法定代表者変更の審査・認可だけ行うことは考えられなかった。」楊軍氏によれば、益融社側は、当該手続きを一時取りやめたものと考えていた。

 では、経済情報委員会の許可書が追加発行されれば、2011年9月28日の登記変更は合法に変化したのだろうか。楊軍氏によれば、「それは、当時の状況によります。当時、我々は様子を見ながら、少しずつ進んでいくしかありませんでした。我々は、先ず幾つかのプランを考え、可能な限り法に基づいて手続きすることを考えていました。益融社が経済情報委員会で手続きしている頃、我々も如何に当該登記を行うかを検討していました。」と述べた。しかし、たとえ経済情報委員会から許可書が追加発行されたとしても、登記日と許可書の日付が対応しないことを発見したという。「これも問題になるかも知れないと考え、登記取消決定を下したのです。最初は、補正を考えていました。」8月10日、武漢市工商行政管理局江漢分局は「行政許可取消決定書」(漢工商注撤決字(2012)第001号)を発行し、2011年9月28日に当該局が許可した益融社の登記変更の行政許可を取り消した。

 当事者は、国家賠償請求の意向
 「我々江漢区工商分局による登記変更手続きプロセスに手落ちが発生したことを、先ず認めなければなりません。我々の前に経済情報委員会による審査という段階があったにも関わらず、これを経ずに登記変更を行ってしまいました。でもこれはごくまれにしかない事件です。」武漢市工商局のプレスセンターの張鏑氏によれば、事後にこのような問題を発見した場合、当該局は速やかに訂正すると述べた。張鏑氏は、今後武漢工商内部でも管理を強化し、具体的な担当者に業務上の指導を行うと述べた。武漢工商局による過誤の補正が、行政許可決定の取消だけであったことについて、龔洪平氏は不満を示し、「江漢区人民法院は、既に我々からの江漢工商登記変更取消行為に対する訴訟請求を受理しました。その訴訟請求は、1.江漢工商局により法定代表人登記情報変更にかかる具体的な行政行為の違法性についての確認請求、2.法に基づく国家賠償の請求です。」とこのように述べた。

(法制ネットより)

作成日:2012年09月20日