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三大家電量販店等が「出血」値引きキャンペーン -業界関係者が家電戦争の裏事情を暴露-

注目する理由
 家電価格を巡る「戦争」がインターネット上で「真剣勝負」を繰り広げている。三大家電量販店は、あくまで値引きするという「号令」を発し続けているが、家電市場に予想された程の価格破壊は起きていない。この「戦争」は本物なのか、それともフェイクなのか。この値引きキャンペーンは、法的に問題はないのだろうか。消費者の利益は、この戦争で保障されているのだろうか。これらの問題は、こうした家電量販店が垂れ流す値引きのキャッチコピーよりも重要である。

 今年の夏も終わろうという時期になって、家電量販店間の値引きキャンペーンが再び開始された。その勢いの激しさに、人々は戸惑いを隠せない。家電量販店等が「しのぎをけずる」状態から「無暗な価格破壊」に変わった時、人々の疑問の声も高くなってきた。

値引きキャンペーン、家電市場の争奪戦
 この値引きキャンペーンは、中国国内のインターネット通販サイト大手の京東商城(北京)から始まった。劉強東最高経営責任者は、先ずミニブログ上で「15日の9時より、京東商城の全白物家電の価格を蘇寧電器、国美電器に比べて10%安くする。もし、蘇寧、国美がウチより値下げしたら、京東は、30分以内に再値下げする。」いう挑戦的な内容を発表した。家電量販店のガリバー、蘇寧のオンラインショップである蘇寧易購の李斌執行副最高経営責任者は、これに反応してミニブログ上で、このように発表した。「8月15日午前9時より、蘇寧易購の家電を含む全商品の価格を京東より安くする。もし安くなかったら2倍の価格で賠償する。」更に、もう一社の家電量販店界のガリバー、国美電器の反撃は、更に直接的だった。「明日9時から、国美電器の電子商城の全商品の価格を京東商城より5%安くする。」多くの消費者が我に返るのを待たずに、空前の値引きキャンペーンの火ぶたが切って落とされたのである。

 大型コンピュータ製造メーカー、エイサーコンピュータ(台湾)の伝強販売マネージャーは、京東が値引きキャンペーンを仕掛けたのは、白物家電のマーケットシェアを奪いたいという単純な動機だと述べた。更に劉強東最高経営責任者がミニブログに発表した内容には、「京東の家電は今後3年間純利益なし!もし今後3年間に、ウチの仕入担当者が家電に1元でも利益を上乗せしたとしたら、ただちに辞めて貰います。」というものもあったという。

 家電量販店は、傅強にとって主なクライアントである。現在の厳しい市場競争下において、コンピュータ及び消耗型電子デバイスの利益は、既に充分薄利多売状態になっており、それに比べると白物家電の利益は、まだ充分見込めるのではないかという。

 伝マネージャーはまた、「私の経験から見積もって、まだ白物家電には20%の利益が見込めると思います。蘇寧、国美に実体店舗が存続しているように、白物家電分野は依然として家電量販業界において主なマーケットシェアを占めているため、京東としても、この市場を手をこまねいて見ていたくないのです。蘇寧、国美等の伝統的な販売方法の家電量販店は、これに応戦するしかなかったのです。京東の激しい追撃により、蘇寧、国美は純利益か市場シェアかに関わらず、下落が続いています。」と話した。

家電量販業界は、いつまで消耗戦を続けるか
 今年に入り、家電量販業界は、次々と値引きキャンペーンを演じて来ており、その規模は徐々に大きくなり、驚くべきものとなってきている。今年6月18日は、京東の創業記念日であったため、これを契機に値引きキャンペーンが行われた。交戦相手は、天猫(淘宝のネットショップ)であった。双方の舌戦は、いずれもゾウの体重になぞらえられた。6月18日15時から1日足らずで、天猫は150トンを超えるチマキを販売した。これは50頭の成年象の体重に匹敵するものであった。京東側は、コピー紙の販売重量は150トンを超え、これは20頭の象の体重に匹敵すると述べた。当時「50」なのか、それとも「20」なのかについて、多くのネットユーザーから疑問が呈された。

 これに比べ、今回の値引きキャンペーンは更に激しいもので、更に多くの資金が投入された。「今回の資金は、充分であり、紅杉ファンド、老虎ファンド等の複数の主要な株主が全て今回の価格競争を支持している。」劉強東最高経営責任者は、ミニブログ上に、株主のこんな言葉さえも引用した。「金なら幾らでもある!安心して死ぬまで使い切れ!」劉氏は、京東商城の帳簿には現在87億元あり、充分値引きキャンペーンを支えることができると述べた。今回の値引きキャンペーン費用の3分の2は、サプライヤーが負担した。このため、京東商城は資金的な制約を受けていない。

 京東商城に投資リスクを全力で支えるバックがついていたとしても、蘇寧も黙って手をこまねいている会社ではなかった。蘇寧は、最近2回融資を受け、公告を発表して、第2の大株主である蘇寧電器集団は、会社の発展の見通しに強い自信があることに基づいて、今後3ヶ月の間に10億元を超えない範囲で株式買い増しを行うことを計画している用に述べった。「京東は、投資家がバックを支えているから金を湯水のように使っている。」と前述の伝マネージャーは話す。「このように金を使っているのは、マーケットシェアを得るためである。京東とその投資家は、こう考えているかも知れない。まず、お金を使ってマーケットシェアを得れば、その後でお金を儲けることができる。また、マーケットシェア獲得しさえすれば、京東が上場した際に株式を高い株価で販売することができ、会社の資本を増加できる。」

但し、国美電器の従業員(匿名希望)によれば、京東の純利は7%から8%に過ぎず、「京東の今のやり方では、たとえマーケットシェアを獲得できたとしても、大したお金儲けはできない可能性がある。なお且つ京東のマーケットシェアは、完全に値引きキャンペーンにより得られたものであり、京東が金儲けをしようとすれば、商品の価格を引き上げるしかなく、商品価格を引き上げた途端に、顧客も失ってしまうだろう。そういうジレンマに陥っている。」と述べた。「将来、京東は自ら自滅するかも知れない。」同従業員は、このように予測した。但し、目の前に京東の影響力が絶大であることも率直に認めた。「国美電器の従業員でさえ京東でネットショッピングするのが当たり前になっている。」但し、傅強は、自滅の可能性は極めて少ないと言う。最も果敢に値引きキャンペーンを展開している京東にしても、管理さえしっかりしていれば自滅には繋がらないだろうという。多くの家電量販大手は、事実上多くの投資家と深く繋がっており、「大きすぎて、死ぬに死ねない。」レベルに達しているという。

値引きキャンペーンは、消費者を振り回していないか
 更に価格関連の事情を検証するため、ある有名な家電量販サイトをクリックした。そこでは、「ゼロ元購入」イベントが展開されていた。つまりイベント参加商品を購入した場合、当該ウェブサイトが消費者へ商品と同額の対価を返金して、この家電ネットショップでほかのものを買うというものである。そのため「ゼロ元購入」と称されている。但し、数種類の「ゼロ元購入」イベント参加商品をクリックしてみたところ、殆どの商品が品切れとなっていた。今年6月の値引きキャンペーン以後、家電量販業界が消費者を「振り回している」という言い方をする者もいる。また、家電量販業界が、「先に価格を釣り上げておいて、イベント時に下げているだけ。」という猿芝居をしている疑いも持たれている。

 8月15日、価格比較ウェブサイトの一淘ネットが「価格ランキングボード」を発表した。それが発表したリアルタイム測定データによれば、14日晩の京東、蘇寧易購、国美オンラインを含む家電量販店等は、程度は異なるものの、いずれも価格を引き上げていたことを示していた。うち京東の白物家電では、50種類近くの商品がこっそりと価格を引き上げられており、その価格引き上げ幅は、30%から100%の間であったという。15日17時の時点で、一淘ネットは、当日測定した6大B2C商家ネットで購入した白物家電11.7万件余りの価格を示していた。うち5,000件余りの商品価格が若干低下していたに過ぎず、その比率も4.2%程度に過ぎなかった。値引きキャンペーンに参加した家電量販店の中で、国美電器のオフィシャルサイトの商品値引き率は16.6%に達し、最も値引き率の高い家電量販店だった。次の蘇寧易購の商品値引き率は9.5%で、京東商城の白物家電の値引き率に至っては6%に過ぎず、第三位の最下位に甘んじていた。「メーカーは、一般的に幾つかの特価商品を準備してセールスプロモーションを行う。そして、メーカーは家電量販店ごとに異なる型番のセールスプロモーション用商品を提供している。」上述の伝マネージャーによれば、これらの商品は損するが、目玉商品になると言う。

 ポータルサイトのテンセントが運営する易迅ネットも今回の値引きキャンペーンに参戦した。易迅ネットの従業員は、京東は「先に価格を釣り上げて、イベント時に下げ」、値引きの約束も果たしていないため誇大広告の疑いがあると述べた。今回の値引きキャンペーンの際、「京東は、全国で5,000名の価格スパイを募集し、各店に2名派遣しています。国美、蘇寧で白物家電を購入した者は誰でも、携帯電話を取り出して京東クライアントシステムで価格を比べて、値引きが10%以下の場合、価格スパイが現場で確認し、京東がその場で価格を下げるか、その場で引換券を発行し、10%の値引きを確保します。定年退職した者はスパイになることを歓迎します。月給は3,000元以上です。」という噂が広まった。伝マネージャーはこれについてこう感想を述べた。「たとえ誇大広告だったとしても、このキャンペーンに価値はあったと思う。今、家電量販店で値引きキャンペーンが行われていることは、誰もが知ることとなった。もし、これを広告だけでやっていたら、大変なお金がかかっただろうと思う。」

(法制ネットより)

作成日:2012年08月22日