中国の実際の退職年齢は53歳前後
人力資源社会保障部の責任者によれば、確かに国へ「定年退職年齢の延長」についての提言を行うために検討を行っているものの、政策を検討することイコール現在の定年退職年齢が間もなく変更されることではないと述べた。この発言のように、2005年にも当時の労働社会保障部が同様の検討を行ったことがあった。
現在の法定定年退職年齢は、男子従業員は満60歳、女子管理職は満55歳、女子一般従業員は満50歳と定められている。坑道、高所、高温、重度の肉体労働及びその他健康を脅かす恐れのある業務に従事する職位にある従業員の定年退職年齢は、男子従業員は満55歳、女子従業員は満45歳とされ、今後も、この基準で取り扱っていくとのことである。
この責任者によれば、世界的に見ると、一部の国では既に定年退職年齢を延長したが、これは主に人口構造の変化及び高齢化レベルの上昇に対応するためのものであるという。中国は現在、急激な高齢化という問題に直面している反面、雇用確保という大問題にも直面しているため、こうした政策については極めて慎重に取り扱う必要があるという。
現在、中国の実際の退職年齢は53歳前後であり、多くの地方では大量の早期退職者に直面している。近年、一部の地方で「ワーカー不足」という現象が現れたものの、依然として中国は世界一の労働力大国であり、労働者の総人数は10億人余りに達し、雇用情勢は今後も極めて厳しく、ヨーロッパで定年退職年齢を延長した一部の国々のように労働力不足には直面していない。従って、一部のメディアによっては「定年退職年齢は、65歳かそれ以上延長される。」と報道しているものの、近日中に延長されることはないという。
15年後又は20年後というように長期的に見るならば、定年退職年齢の延長は、大きな趨勢と言える。但し、どのように調整するか、調整幅をどうするかについては経済や社会全体の変化を考慮しなければならない。
定年退職年齢の改革は、全ての従業員の切実な利益に関わっているが、異なる職位により、その意見も一致していない。取材を通じ、定年退職年齢を間近に控えた管理職、特に職位・肩書の高い多くの者は男女を問わず、定年退職年齢の延長を考慮すべきであると考えていることを発見した。分析によれば、これは主にこの種の従業員の労働強度は高くないため、多くの者は定年退職年齢に達したとしても、職務を全うできるからだと思われる。医師や教師など、一部の特定の業種においては、「キャリアを積めば積むほど歓迎される。」という。退職が早すぎた場合には、確かに人材の浪費と言えなくもない。
しかし現場の労働者の場合、その多くが現在の定年退職年齢の規定を合理的だと認識しており、中には早期退職を望む者すらいる。なぜなら、現場の労働者の多くは、体力の消耗が激しく、在職時の収入レベルも低くなお且つ安定していないことに比べ、定年退職後は安定して養老金収入を得ることができるからである。ここ数年、国は企業従業員養老金のレベルを連続して引き上げており、一部の収入が多くない従業員にとって、早期に退職した方が、收入がより多く得られるという。
定年退職年齢の延長は、経済発展に関わるだけでなく、公平さの確保という問題にも関わってくる。例えば、65歳定年退職を認めるなど、あるグループにだけ特別な配慮をした場合、このグループは満足するかも知れないが、その他のグループの不満を招く可能性がある。このため、政策制定者は定年退職年齢の延長について異なるグループの利益を考慮し、ことなる地方の実情を考慮し、将来にわたっての持続的な発展を考慮し、科学的な論証を真摯に実行し、コンセンサスを得るなど、大局的に考慮することが求められている。
人社部の責任者も定年退職年齢の延長という改革をスタートさせる場合には、より細やかに検証を行い、なお且つ社会各界から幅広く意見を聞いて、異なるグループの公平及び公正を考慮し、コンセンサスが充分に得られてから実施するという点を明確にした。
(人民日報より)
作成日:2012年06月20日