最新法律動向

クレジットカード使用に関する新解釈

 誰の財布にも何枚かはクレジットカードが入っているものである。もし、このクレジットカードを友人や親族に貸して使用させた結果、悪質な借越問題が発生した場合、誰が責任を負うべきだろうか。

 吉林省長春市朝陽区人民検察院は、クレジットカードの普及に伴い、家族や友人でクレジットカードを共有したり、互いにクレジットカードを借用しあうケースが増加しているという調査報告書を発表した。

 報告書の統計によれば、2010年以降、朝陽区検察院は、合計28件29人が関係するクレジットカード詐欺事件を取り扱ったが、いずれも悪質な借越型犯罪であり、同期の刑事事件総数の3.4%を占めている。うち5件は合法的にクレジットカードの手続きを行った名義人と、実際の使用者が異なるケースであり、その関係は、夫婦関係、親子関係、甥・叔父関係、友人関係の4種類に及んでいる。

 このことが引き起こした刑法適用上の問題は、判決を下す際に困惑をもたらした。朝陽区検察院検察委員会包暁勇専任委員が「法制日報」記者に語ったところでは、ある地方では共謀犯罪として名義人と実際の使用者の双方を訴追するが、別の地方では名義人のみを追及し、他の地方では使用者を追及するのみにとどまっているなど各地によって処理の基準が全くバラバラとのことであった。

 2010年9月、長春市公安局は、合法的な名義人と実際の使用者が異なるケースにおけるクレジットカード詐欺事件を朝陽区検察院に送検して審査を求め、なお且つ訴訟を提起した。公安機関は、この両名にはクレジットカード詐欺を共謀して行った疑いがあるとした。

 法律の適用を巡っては、その解釈に大きな相違があったため、当該案件は、当該検察院の検察委員会に送られ審議された。検察委員会のメンバーは、委員により当該案件の認定方法に大きな相違があるものの、最終的には合法的にクレジットカードの手続きを行った名義人の刑事責任を追及するべきであるとし、公安機関は実際の使用者に対する訴訟の提起を取り下げるように提案した。

 中国の刑法第196条によれば、「クレジットカード所持者」のみがクレジットカード詐欺罪を構成すると規定している。司法の実務においては、「クレジットカード所持者」にいう言葉に対する理解は、クレジットカードの手続きを行った際に、身分情報を提供した者ということになっている。

 包暁勇氏は、「実務において、名義人と使用者が異なるケースは、大まかに述べて以下の3種類となる。①名義人が自主的にクレジットカードを他者が使用するために渡した場合。②名義人が使用者から指図され、クレジットカード発行の手続きをした後、クレジットカードを使用者に渡して使用させた場合。③使用者が無断で他者のクレジットカードを使用した場合。」と述べている。

 最後の1種は、無断で他者のクレジットカードを使用したケースであり、刑法第196条のクレジットカード詐欺犯罪として処理すべきである。しかし、①②のケースについて、誰を使用者と決定するかについての認識は統一されていない。

 先頃開催された朝陽区検察院の判例研究会において、当該案件を典型的なケースとして専門家達が討論したものの、最終的な結論は出なかった。

 ある専門家は、朝陽区検察院の決定を支持し、名義人の刑事責任を追及すべきだとした。なぜなら名義人が「クレジットカード所持者」としての主体資格に適合するばかりでなく、銀行からの何度もの督促に対しても返済を拒み、不法占有の目的を有しているからである。しかし別の専門家は、「クレジットカード所持者」を拡大解釈し、実際の使用者の責任を追及するべきだとした。さもなければ「犯した罪を自ら償う」という原則に背くからである。

 朝陽区検察院徐安懐検察長は、この問題の処理について訴訟資源の節約を追及し、法執行の社会的効果、法的効果、経済効果の有効な統一を実現しなければならず、警察・検察・司法及び銀行間で協力を強化し、協調していかなければならないとした。

 このような考慮に基づいて、朝陽区検察院は、特定テーマに対する調査研究を行った。調査研究報告は、現在の訴訟プロセスに対して調整を行い、刑事処罰権を発動する前であっても、民事訴訟プロセスを発動して救済を行うべきであるとの認識を示した。

 具体的には、この種の特殊なタイプの悪意のある借越行為に対し、銀行は先ず民事訴訟プロセスに基づいて負債の追徴をすべきである。もし名義人が依然として負債の返済を拒んだ場合、不法な占有目的があると推定され、クレジットカード詐欺罪として、その刑事責任を追及しなければならない。名義人は、民事訴訟を通じてのみ、実際の使用者に対して債務の追徴を行うことができる。

 包暁勇氏は、以下のように述べた。「国は、金融秩序の保護と国民の権利の間のバランスを保たなければならず、どちらかに偏ってはならない。名義人と銀行は平等な民事主体という関係であり、債務紛争が発生した場合、先ず民事訴訟プロセスを発動させるべきで、みだりに刑事訴追プロセスを発動させるべきではない。」

 「名義人と使用者は、債券債務関係である。」包暁勇氏は、また以下のように述べた。「クレジットカードの名義人は、現在有効な法律規定に基づいて民事訴訟を提起して、実際の使用者に対して負債を取り立てることが完全に可能である。また、実際の使用者が刑法上の主体として不適格である場合は、刑事責任を追及してはならない。」

(法制ネットより)

作成日:2011年09月27日