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改正後の個人所得税法、9月1日より施行 ―個人所得税の徴収下限を3,500元に引き上げ―

 今年6月に開催された第11回全国人民代表大会常務委員会第21回会議にて個人所得税法の改正案が可決したことを踏まえ、今年9月1日より、中国の個人所得税の賃金所得費用差引(一般的には個人所得税の徴収基準額と呼ばれている。)は、月2,000元から月3,500元に引き上げられることとなった。

 中国の所得税は1994年より施行されており、個人所得税法の規定によれば、個人の賃金所得は、その月の収入から一定の費用を差し引いた残金が税金納付所得額とされている。専門家の説明によると、賃金所得から費用を差し引く規定が設けられた目的は、国民の基本的な生活費からは納税しないという原則を反映したものである。国民の基本的な生活を維持するのに必要な費用に大幅な変化が生じた今、費用差し引き基準にも、これに伴う調整が必要となっていた。

 今回の改正以前にも、中国では法改正のプロセスに基づいて、過去にも前後2回、賃金所得から費用を差し引く基準が調整がされてきた。2006年1月1日には、それまでの月800元が1,600元に引き上げられ、2008年3月1日には、それまでの月1,600元が2,000元に引き上げられた。

 個人所得税の基準額を引き上げたほか、税収の収入に対する調整作用を有効に発揮させるため、改正後の個人所得税法では、累進課税率を9段階から7段階とし、15%と40%の税率が取り消され、5%と10%の税率の適用範囲が拡大されることとなった。第1段階の税率5%は、3%へ変更となり、これに対応する月納税所得額は、500元未満から、1,500元に拡大された。第2段階の税率10%に対応する月納税所得額は、500元以上2,000元未満から、1,500元以上4,500元未満に拡大された。これと同時に、最高税率45%がカバーする範囲を拡大し、税率40%を適用する税金納付所得額を税率45%に合併し、高所得者への調節能力を拡大した。

 今回の改正により賃金所得から費用を差し引く基準を引き上げ、賃金所得税率構成の調整を連動させる目的は、税制を簡略化し完備させる以外に、主に絶対多数の賃金所得納税者に対して費用差し引き基準の引き上げ及び税率構成の調整により二重の税制上の優遇が齎されるだけではなく、高收入者に対する税負担を適切に増額させることを促すことにあるという。

 賃金所得税率の段階距離を調整した後、生産経営にて所得を得ている個人経営者納税者及び請負賃貸経営にて所得を得ている納税者と賃金所得による納税者のバランスを取るため、改正後の法律でも現行の5段階税率は不変とし、生産経営にて所得を得ている個人経営者及び請負賃貸経営所得を税率表の段階距離に相応の調整を行い、生産経営所得税率表の第1段階の距離を年間納税所得額5,000元から15,000元に調整し、その他各段階の距離にも相応の調整を行った。

 個人所得税法では、源泉徴収義務者及び納税者が毎月納付税金の納付を申請・報告する日は、翌月7日迄と規定されていた。しかし企業が所得税、増値税、営業税等その他税金の種類の納税の申請・報告を行う日は、一般的に翌月の15日迄であった。納税申請・報告の締切が一致していないため、一部の源泉徴収義務者及び納税者が1ヶ月以内に2回の納税手続きを行わなければならず、源泉徴収義務者及び納税者の負担を増加させていた。

 源泉徴収義務者及び納税者の納税手続きの便宜を図るため、改正後の税法は、源泉徴収義務者及び納税者の納税申請・報告期限を現行の翌月7日以内から15日以内に延長し、企業所得税、増値税、営業税等の税金の種類を申請・報告する期日と一致させた。

(法制日报より)

作成日:2011年09月23日