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突然の関税大幅引上げと契約における不可抗力 -NEW-

   2025年4月11日、アメリカは中国を含む複数の国や地域に対して関税を引き上げ、中国に対する報復関税を125%まで引き上げました(この時点で、アメリカが中国製品に実際に課している総関税率は145%に達しています)。これに対し、中国もアメリカに対する追加関税を84%から125%に引き上げると発表しました。この突然の関税戦争は、中米間の貿易に大きな影響を与えています。中国の日系企業の間では、関税の急激な上昇により取引コストが大幅に増加し、契約履行の難易度が高くなるため、不可抗力を理由とした契約解除が可能かどうかに注目が集まっています。
   そこで今回は、関税の引き上げが不可抗力に該当するかどうかについて簡潔に説明します。

(1)不可抗力とは
   中国の『民法典』によると、不可抗力とは当事者の行為を超え、かつ当事者の意思に支配されず、予見できず、避けられない、および克服できない客観的な状況を指します。不可抗力によって契約当事者の一方または双方が義務を履行できない場合には、部分的または全面的に責任を免れることができます。
   不可抗力には以下の特徴があります。
①予見可能性:契約締結時に合理的に予見できないこと。
②回避可能性:合理的な措置を講じても、影響を避けたり止めたりできないこと。
③克服可能性:発生した偶発的な事象による損失を克服できないこと。
不可抗力は、自然的原因(地震や火山噴火など)と社会的原因(戦争や内乱など)に分けられます。

(2)関税引き上げは不可抗力に該当するか
   今回のトランプ大統領による突然の関税政策発表を例に、関税引き上げが契約上の不可抗力に該当するかどうかを簡単に分析します。一般的に言えば、トランプ大統領が中国に対して関税を引き上げる可能性があるという報道が、事前に国際的な世論で広く取り上げられていた場合、契約に関税の引き上げが不可抗力に該当するという特別な取り決めがない場合、中国の裁判所や仲裁機関では一般的に不可抗力に求められる「予見可能性」を備えていないと判断される可能性があります。
   もちろん、契約書に関税引き上げを不可抗力とする規定や、関税が著しく引き上げられた場合に契約解除が可能であることが明記されている場合は、当該条項に基づいて契約を解除し、違約責任を免れることができます。

◇ 日本企業へのアドバイス
   世界的な緊張が増幅し、取引履行コストが変化し続けている状況では、契約履行の不確実性が増し、その履行が自社に与える影響も大きくなっています。そのため、既存の取引契約の完全性を全面的に見直すことにより、自社を守りつつ、相手方の違約責任を効果的に追及し、潜在的な法的リスクを回避することをお勧めします。

作成日:2025年04月17日