不正競争防止法改訂案の変更点 -NEW-
2024年12月25日に公布された「中華人民共和国不正競争防止法(改訂案)」は、大きな注目を集めており、社会的議論を巻き起こしています。そこで本稿では、今回の改訂案の変更点を簡潔に説明いたします。
1.企業の知的財産と商標権の保護が強化される可能性
混同条項に新たな違法行為が5つ追加され、混同行為に関する規制が細分化されました。例としては、以下のような規制が挙げられます。
① 「新しいメディアアカウント名やアプリケーション名またはアイコン」などの新型オブジェクトに対する保護を拡大。
② キーワードを使った流入誘導を防止するため、影響力のある他者の商品名等を無断で検索キーワードとして設定する行為への規制を追加。(改訂案第7条)
これにより、日系企業にとっては、デジタルやネットワーク環境における知的財産や商標権などの権益がより包括的に保護されることになり、模倣品(山寨)対策に役立つ可能性があります。
2.贈賄行為に対する規制が追加、個人も罰則対象
本改訂案では「贈賄・受賄一括調査」の原則に基づき、経営活動における受賄行為への規制の追加と、贈賄行為に対する行政罰の強化が行われました。受賄行為に関与した企業には最高で200万元以下の罰金、受賄を行った個人には最高で50万元以下の罰金が科されます。(改訂案第8条、第23条)
これは、改訂案施行後は政府当局が「贈賄と受賄」の双方を規制することで、企業の汚職対策を強化することを意味します。特に医療や入札などの分野における組織的な汚職問題への対策が強化される見込みです。
3.企業が不正競争防止法に違反した場合、法定代表者が事情聴取を受ける可能性
今回の改定案では、行政機関による企業の法定代表者や責任者への事情聴取に関する規定が追加されています。(改訂案第18条)
これにより、企業が不正競争防止法に違反(例えば贈収賄行為や虚偽広告、不正な懸賞販売など)した場合、企業の法定代表者や責任者が不正競争防止監督検査部門から事情聴取を受ける可能性があります。ただし、法定代表者などが事情聴取を受けるかどうかは監督機関の裁量により決まるため、その点には注意が必要です。
4.海外管轄規定の追加
国際的に一般的な「属地管轄」の原則に基づき、改訂案は原則として中国国内の事業者による不正競争行為を規制することを前提としています。しかし、これは外国企業が規制対象外であることを意味するわけではありません。本改訂案では海外管轄規定が新たに追加され、中国国外で、または外国企業等により中国国内の事業者が不正競争行為により合法的権益を損なった場合にも、本法の規制が適用されます。(改訂案第8条)
◆日系企業へのアドバイス
改訂案は不正競争行為の規制を細分化し、厳格化しています。これにより、現地の日系企業に対してもより高いコンプライアンス遵守が求められます。現地の日系企業は、中国企業や政府機関との取引活動において、内部管理や監視を強化し、従業員や取引先による贈収賄行為により不必要な法的リスクをもたらさないよう注意する必要があります。
今回の改訂案では監視措置の強化と同時に罰則の厳格化も行われているため、不正競争行為が疑われる企業は、より厳しい監視と処罰に直面する可能性があります。各企業は経営戦略とコンプライアン措置を速やかに調整するために、監督管理の要件や執行機関による不正競争行為の認定基準及び罰則基準を把握しなければなりません。また、処罰のリスクを軽減または回避するためにも、抗弁規則を合理的に活用して監督機関と協議する方法を身につける必要があります
作成日:2025年02月24日