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最新の増値税法による変化のポイント -NEW-

   2026年1月1日から施行される「中華人民共和国増値税法」は、外資企業の税務計画およびコンプライアンス管理に大きな影響を与えることになると考えられます。そこで今回は、日系企業や財務会計担当者の皆様の参考となるよう、この新法による変化のポイントについて解説いたします。
1.「みなし販売」の簡略化
   新法では「みなし販売」について大幅に簡略化され、以下の3項目のみとなりました。
(1)事業者および個人商工業者が、自家生産または委託加工した商品を集団福利または個人消費に用いること。
(2)事業者および個人商工業者が、商品を無償譲渡すること。
(3)事業者および個人商工業者が、無形資産や不動産または金融商品を無償譲渡すること。(「増値税法」第5条)
   現行の規定と比較すると、新法では「国務院が定めるその他の事由」という包括条項および「無償でのサービス提供、商品の代理販売、投資または株主配当への商品の使用」等の事由が削除されています。これは、「無償でのサービス提供」(例えば、企業内部資金の借入れ、不動産の無償リース等)は販売とはみなされなくなることを意味します。
   ただし、無償でのサービス提供が販売とはみなされなくなるとはいえ、販売額が明らかに低額または高額の場合には、税務機関により査定徴税される可能性があることには、依然として注意が必要です。そのため、合理的な商業目的のない無償でのサービス提供(例えば、長期にわたり関係先の資金を無償で占用すること)には、増値税納付のリスクがある可能性があります。
2.販売額が明らかに高い場合の査定徴税条項の追加
   新法では、「販売額が明らかに高い」場合に、税務機関による査定徴税に関する条項が追加されています。(「増値税法」第20条)
   この条項は、購入者が販売価格の引上げを通じて仕入税額を増加させることで、増値税の税額を引き下げようとすることを防ぐことを主たる目的としています。ただし、具体的な査定方法については、後続の付属文書により明確になるのを待つ必要がありますが、今回の改正は、製品およびサービスの販売額が通常のビジネス基準に適合するか否かに対する税務機関の監督管理の程度を表しているといえます。
3.仕入税額の控除に関する規定の調整
   仕入税額を売上税額から控除してはならないケースについて、新法では、その事由および範囲について以下の通り調整されています。(「増値税法」第23条)
(1)「購入した貸付サービス」を控除してはならないという制限的規定の削除。
(2) 飲食サービスや住民の日常サービスおよび娯楽サービスについて、新法では「購入し、直接消費する」という範囲規定が追加されています。このことは、企業がこれらのサービスを購入し、納税目的または転売に用いる場合には、売上税額から控除してはならないという規定による制限を受けなくなることを意味します。この改正は、企業による仕入税額の控除をより合理的に計画し、税務コストの削減の一助となる可能性があります。

◆日系企業へのアドバイス
   上記の改正ポイントに加え、新法では他にも多くの面について、改正及び調整を行っています。例えば、新法では税務機関や税関等の部門は増値税の税務にかかる情報共有システムおよび業務協力システムを確立する、という条項が追加されています。これは今後、税務機関が各種の「ビッグデータ」を通じ、多くの部門と協力し、企業の税務処理を共同で監督管理する可能性があることを意味しています。
   弊所の実務経験に基づく対応テクニックおよび実務上の留意点は以下の通りです。
(1)新法の改正内容を正確に理解し、税務計画およびコンプライアンス管理の有効性を確保する。
(2)仕入税額の控除を合理的に計画し、潜在的な税務リスクを回避する。
(3)現地の弁護士および会計士と密に連絡を取り、専門的意見やアドバイスを得る。
(4)税務機関が今後公布する付属文書に注目し、現地の税務機関との交流により新法の規定を正確に理解し、実行するよう努める。

作成日:2025年02月06日