2024年・ビジネス環境改善の40措置
9月3日、ビジネス環境のさらなる最適化のため、国家市場監督管理総局は『市場監督管理部門によるビジネス環境最適化の重点措置(2024年版)』(以下「重点措置」という。)を公布しました。今回は、そのうちの主な優遇措置について、現地日系企業及び内資企業の参考となるよう簡単に解説いたします。
1.外国企業の公証認証や実名認証などの登記手続きを簡略化
外国投資企業が工商登記を行う際、外国文書及び外国投資者の身分証の中国における効力認定の問題が時折発生します。外国文書は公証認証手続きが必要となるほか、外国投資者(法定代表人や董事、監事)は自ら政府当局に出向いて実名認証を行うか、または煩雑なオンライン認証などを行わなければならない可能性があります。
そこで今回、市場監督管理総局は外国企業の登記手続きに関して、下記の最適化措置を採用しました。
①外国投資者の公証認証手続き資料の最適化
②外国投資者の実名登記の方法を現場での認証など単一で複雑な方法から複数に増加させる
③企業による政府当局での窓口手続きを避けるため、各地区の政府が外商投資企業に対する電子登記方法を模索することを奨励する(「重点措置」第28条)
上記の政策は、経済が発展した一部の都市で試行され、全国一律で開始するわけではないことに注意が必要です。
2.経営範囲外の経営活動に従事しても処罰されない可能性がある
一般的に、企業は経営範囲内で経営活動に従事する必要があります。但し、市場の経済発展を促進するため、登記した経営範囲外で無許可の経営活動を行った場合でも、経営範囲外であることのみを理由に行政罰を受けることはありません。(「重点措置」第5条)
注意すべきは、事前に認可や許可が必要な経営事項(パッケージ済み食品の販売や食品の生産など)に従事する場合は、必ず事前に許可を取得する必要があり、これに違反すると行政罰を受けるという点です。
そのほか、企業が地区を跨いで移転する際に、転出側の地方政府が税収の減少などを理由に協力を拒んだ場合、企業は転出側の地方政府の承認を必要とせず、転入側で直接登記手続きを行うことができます。(「重点措置」第5条)
3.行政罰の自由裁量権のさらなる規制
実務において、各地の市場監督管理部門が同類または類似の事項に対して行う監督管理と処罰には差異があります。市場監督管理部門の処罰の自由裁量権を規制するため、国は行政罰裁量権の基準を公布しましたが、各地での運用には未だ差異があります。
本措置では各地方の行政罰裁量権基準の改善、処罰の種類や範囲を科学的に決定すること、「過重な処罰」や「同類案件での異なる処罰」などを避けるよう指導し、同時に紛争を引き起こしやすい分野の市場監督管理領域の法執行ガイドラインを作成しました。企業はこのガイドライン及び裁量権基準を参考にすることで、受ける可能性のある処罰を合理的に予想・判断することができます。(「重点措置」第17条)
◆日系企業へのアドバイス
2024年9月3日から施行された本重点措置は、市場及びビジネス環境を一定程度最適化し、内資及び外資企業の中国における生産活動や投資に対する促進作用を果たしています。但し、本措置は原則性が強く、将来的には各地区の市場監督管理部門が詳細な措置や細則を公布する可能性があるため、日系企業は必要に応じて現地の政策を注視する必要があります。
中国政府当局は全国統一大市場の建設と全国統一の市場制度規則の構築を提唱していますが、現時点では各地方の経済発展度や法治規制及び環境などに差異があるため、各地方での実施状況や実施時期もそれぞれ異なる可能性があります。企業と密接に関係する登録登記、変更登記、閉鎖撤退、生産経営秩序及び監督管理の執行や処罰などの事項について、各日系企業は現地の地方政府当局と交渉を行い、政府当局の本重点措置に対する理解と執行状況を正確に把握する必要があります。
作成日:2024年09月05日