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中国における法規・政策の公平競争審査制度の確立

   2024年6月13日、中国国務院は『公平競争審査条例』(以下、「本条例」という)を公布しました。本条例は、中国における全国統一大市場を確立し、公平競争ができるビジネス環境を最適化するために制定され、各級、各地方立法部門が経済分野の法律、法規、規範性文書及び具体的な政策措置(以下、「法規・政策」という)を制定する際、公平競争審査制度とその規則を自主的に実行することを求めています。
   公平競争審査の事項には、「政策障壁」とも言われている外資企業などに対しての公平な扱いに伴って多く見られている問題も含まれており、外資系企業の生産経営上でも大変重要な参考意義があるため、今回は本条例の主なポイントを要約いたします。

1. 法規・政策の審査内容は?
   公平競争審査では、主に企業の公平競争に影響を与える法規・政策上の内容が審査されます。本条例は主に以下4方面における法規・政策に含むことを禁止する19項目の内容を詳しく列挙しています(第8条から第11条)。
(1)市場の参入・撤退を制限する内容(計5項目)。
(2)商品の自由な流動を制限する内容(計6項目)。
(3)法的根拠がない、または国務院の承認を得ていない、且つ生産経営コストに影響を与える内容(計4項目)。
(4)生産経営行為に影響を与える内容(計4項目)。
   例えば上記(2)においては、資質基準、監督管理法執行などの面で、地方経営者による現地投資経営に対し、差別的な要求が存在している可能性があります。そこで、政策にこうした内容を含むことを禁止するなら、外資系企業に対する監督・管理環境の一貫性も確保でき、地域差からくる不確実性の減少にも役立つことになります。

2. 公平競争審査における例外
   本条例では、法規・政策の中に企業の公平競争に影響を与える内容を含んではならないと規定されていますが、例外もあり、以下の4つのうちいずれかの状況に該当する場合、法規・政策の内容を実施することができます(第12条)。
(1)国家の安全及び発展の利益保護。
(2)科学技術の進歩促進、及び国家の自主革新力強化。
(3)省エネ、環境保護、災害救援など社会公共利益の実現。
(4)法律、行政法規が定めるその他状況。
   上記の状況に加え、法規・政策を導入するには以下の2つの条件を同時に満たす必要があることにも留意しなければなりません。
(1)公平競争への影響がより小さい代替手段がない。
(2)合理的な実施期間又は終了条件を確定することができる。

◆日系企業へのアドバイス
   公平競争審査の実施は、自主審査に加え、外部監督・管理の規定、即ち、公平競争審査の実施過程における関連経営者、業界協会・商会などの利害関係者からの意見聴取を具体的に定めていますが、経営者、業界協会・商会などがどのように参与するかについては、政府部門からの具体的な実施細則公布を待たなければなりません。 本条例の施行(2024年8月1日)後、この制度が正しくに運用されるなら、日系企業にも政策制定の一環に参与する一層多くのルートやチャンスが開かれ、自社にとって有利な公平競争条件を掴み取ることも可能です。
   各企業など経営者側から見れば、この公平競争審査の導入・実施は、行政権力による競争排除や制限を一定程度、軽減・是正してくれる制度と言えますが、特に何らかの政府税収や土地提供に関する一定の優遇政策を享受している日系企業は、その優遇政策や特別待遇が公平競争審査制度に抵触していないかどうか速やかに評価しなければなりません。将来的にそうした政府税収や優遇政策待遇などを享受できなくなる状況を避けるため、当該分野に精通した現地弁護士と共に対応策を検討することもできるでしょう。今後いかにしてコンプライアンスに基づく正当な権利・利益を守るかは、現地日系企業が積極的に考慮・検討すべき課題の一つとなっています。

作成日:2024年06月27日