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日系企業が理解しておくべき「競業避止義務」条項の正しい活用方法 -NEW-

   商業秘密や知的財産権に関わる秘密を保護するため、企業は従業員と秘密保持契約を締結する以外に、従業員と競業避止義務契約を締結する可能性があります。もし企業が競業避止義務条項を適切に約定し活用しなければ、商業秘密保護を達成できないだけでなく、支出コスト増加を招くことにもなります。そこで今回は、競業避止義務に関するいくつかの問題について解説します。

Q1 競業避止義務を約定するのはなぜか?
A 労働契約を解除または終了した従業員が、その後一定期間、同類製品を生産・経営、競合他社に就職しないこと、また同種製品の生産・経営・業務に従事するために個人事業を行わないことなどが競業避止義務を約定する主な目的です。これはすなわち、元従業員に対し、会社との同業競合を許可しないための約定であると言えます。
   競業避止義務契約は、通常会社の商業秘密を知る従業員と締結するものであり、高級管理職や高級技術者、その他秘密保持義務を負う従業員が含まれます。(『労働契約法』第24条)
   但し、商業秘密と関わりのない一般従業員に対し会社が競業避止契約を締結するなら、逆に支出コストを増すことになり、実務上においても、裁判所が、当該競業避止義務には正当性が欠けているとし、条項が無効と認定する恐れがあるため、注意が必要です。

Q2 企業はどのように「競業避止義務」条項を正しく約定し活用できるか?
A 競業避止義務の条項は適当に約定できるものではなく、以下のような一定の制限があります。
(1)競業避止義務の期間
   『労働契約法』第24条の規定によると、競業避止義務の期間は2年を超えてはならないことになっています。この2年間は従業員の離職日から起算され、これを超える避止義務期間は無効と認定される可能性があります。
(2)競業避止義務範囲と地域を合理的に約定する
   例えば、競業避止義務の地域を中国全土と直接約定することは適切とは言えず、また禁止・避止義務対象となる職種範囲も、従業員が秘密情報に接触することと関連性のある職業でなければなりません。
(3)従業員に競業避止義務の履行を要求する場合、企業は競業避止の経済補償金を支払う
   競業避止の経済補償金の具体的基準は双方が約定するもので、約定されていない場合、従業員は離職前12カ月の平均賃金の30%の支払いを要求することができます(現地最低賃金基準を下回ってはならない)。(『新労働争議解釈一』第36条)
   実務上、企業が3カ月以上経っても従業員に競業避止の補償金を支払わない場合、従業員が競業避止義務契約の解除を要求するリスクが出てきます。

Q3 競業避止義務契約を締結していなくても、会社は従業員に離職後の守秘義務を課すことができるか?
A 一般論から述べれば、会社の秘密を守ることは労働者の基本的な義務責任です。労働者は在職中だけでなく、離職後も守秘義務を履行する必要があり、離職によって守秘義務が免除されるわけではありません。守秘義務違反により企業に損害を与えた場合、会社はその従業員に対し損害賠償を求めることができます。 (『労働契約法』第23条、第90条)

◆日系企業・中国資本企業の皆様へのアドバイス
   実務上、企業による離職者の雇用状況調査には時間とコストがかかるため、企業負担を減らすためには、離職者が定期的に雇用の基本状況を会社に報告し、転職先が自社と競合関係にないかを確認するよう競業避止義務条項に約定しておくのが合理的です。企業は、競業避止に関連する支出コストと競業避止義務による効果を併せて考慮し、競業避止契約を締結すべきか、またどの従業員と締結するかなどを総合的に判断することができます。
   また、競業避止義務だけでなく、従業員との秘密保持契約や、会社定款制度の制定、また従業員の職位と職責など、会社の秘密保持制度の構築・改善も求められています。この点は、セミナーや研修の実施により、秘密保持の周知徹底を強化することもでき、また最新の法律規定と適用方法を理解するため、実務経験のある弁護士とコミュニケーションを図り、問題が発生した際、素早く現地弁護士と対策協議し、遅滞なく対応することにより、損失の拡大を回避することができるでしょう。

作成日:2024年06月13日