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あなたの保険、「休眠保険」になっていませんか? -NEW-

   皆様はご自身がいつどのような保険に加入したか覚えていらっしゃいますか?また、加入済み保険の生存給付金、保険金、キャッシュバリューなどのお受け取りのお忘れはないでしょうか?
   2023年10月以降、中国金融監督管理総局(以下、「金融監督管理局」という)は人身保険の「休眠保険」を整理するため、特別な活動を全国的に組織展開しており、中国社会全体、海外の華人及び外国籍の方から広く注目され、論議を引き起こしています。今回は「休眠保険」に関わる当該活動についてご紹介いたします。

1. 「休眠保険」とは?その整理範囲は?
   ここで言う「休眠保険」とは、保険加入者や受益者が見つからない、又は忘れられている保険のことを指します。また、「休眠保険」の範囲は主に人身保険で、財産保険は含まれていません。

2. 「休眠保険」の主な整理対象
(1)賠償保険金を受け取っていない保険。(2)満期保険金を受け取っていない保険。(3)契約効力が停止または終了している保険。
   注意すべきなのは、上述は主に2013年1月1日から2023年6月30日までの間に受け取るべき賠償金、保険金またはキャッシュバリュー(解約払戻金)が発生していても受け取っていないもの、且つ満期を迎えて1年となる保険を指すという点です。その他の期間の「休眠保険」は、今回の金融監督管理局による範囲に含まれません。

3. なぜ「休眠保険」を整理するのか?
   実務上、中国籍の方だけでなく、日本人を含む駐在員など外国籍の多くの方が人身保険に加入したものの、時間の経過とともに忘れてしまっている可能性があります。特に高齢者が家族に加入を知らせていなかったり、本人や家族の連絡先が変更になった際、保険会社に知らせていなかったことで保険料納付が中断し、保険証書が失効して「休眠保険」になっている場合があります。つまり、保険に加入していても、ご自身やご家族が「休眠保険」を保有しているかどうかの確認を怠っていると、以下のような大きなリスクや損失を引き起こす可能性があります。
(1)保険料納付中断により保険保障を失うリスク
   保険契約上の期限通りに保険料を納付していない場合、保険証券の効力が停止し、保険事故が発生した場合に保険請求ができない恐れがあります。
   注意すべき点は、実務上でも多種多様な保険証券が効力停止の状態となっており、規定の期限を2年以上経過すると、保険会社が契約を解除する権利を持つという点で、これは被保険者が保険保障を永久に失うリスクとなります。
(2)利益損失のリスク
   実務では、被保険者または保険加入者が約定上の期間内に保険賠償金、保険金または余剰キャッシュバリューを受け取っておらず、資金口座運用の規則が保険契約には約定されていない場合、規定の期限内は未請求の資金が保険会社の口座に保留されますが、保険会社が被保険者や受取人に自主的に支払うことはなく、また、時間の経過による利息発生もありません。

4. 「休眠保険」を保有するかどうかを確認する方法
   もし被保険者や保険加入者が「休眠保険」を保有しているかどうかの確認ができない場合、金融監督管理局の指導で関係機関が構築した「休眠保険」情報検索プラットフォームの「金事通」というアプリを使って照会することができます。
   但しこのアプリの使用は実名認証が必要条件で、現時点では中国籍身分証明書による実名認証のみ可能となっており、外国籍パスポートでの認証はサポートしていない点に注意が必要です。外国籍の人がどのように照会するかについては、中国政府部門による実施の改善・調整を待つ必要があります。

5. 中国籍及び外国籍の皆様へのアドバイス
   今回の特別整理期間は、2023年10月から2024年9月までとなっており、この期間を利用してご自身やご家族の「休眠保険」を適時に処理しなければ、期限切れとなり受け取れなくなる恐れがあります。また、関係機関が提供する証明書を取得できず、正当なルートで国外送金ができない可能性も出てきます。
   実務では、地域や保険会社によって「休眠保険」やその他の正常な保険証券の解約方法が異なりますが、通常、保険加入者や受益者が現場に出向いて手続きをする必要があります。そのため、保険解約、保険証券の効力回復、または保険金受け取りなどに伴い、保険会社と交渉・折衝を重ねる必要が生じることがあり、「休眠保険」処理のために中国現地に何度も出向くことが難しい在日華人や外国籍者は、中国現地弁護士への委託という選択肢を考慮することもできます。
   「休眠保険」のほかにも、中国に開設した銀行口座にも注意が必要です。銀行は、期限内に使用していない口座を「休眠口座」とする可能性があり、オンライン銀行口座の振替やATMでの現金引き出し取引などができない場合、現地の銀行カウンターで手続きをする必要があります。銀行口座及び中国における保有資産を適切に対応・処理する必要があり、また、中国の金融、法律、税務など各方面の情報や知識も絡んでくるため、中国現地の経験のある弁護士への問い合わせや相談が必要となります。

作成日:2024年06月20日