新『会社法』解説6:従業員代表董事に関わる規則の新たな変更点
新『会社法』の公布に伴い、会社に従業員代表董事を置く必要があるかどうかに関し、外資系企業の多くは少なからず疑問を持っているようです。そこで今回は、有限責任会社の従業員代表董事の設置について、新『会社法』の規定と結び付けながら簡単に紹介いたしますので、日系企業の皆様にご参考いただければと思います(今回は株式有限会社については触れていません)。
1. 従業員代表董事の設置
新『会社法』では、現行の『会社法』と比較し従業員代表董事を置く会社の範囲が広くなっています。
従業員代表董事の設置について、現行法には国有独資または国有全資の有限責任会社に対してのみ、強制的な要求がありました。しかし、新『会社法』では、法に基づいて監事会及び従業員監事の設置を規定している場合を除き、従業員数が300人以上の有限責任会社は、董事会に従業員代表董事を置かなければならないと規定しています。(第68条)
ここで注意すべきなのは、従業員数が300人未満の有限責任会社は、従業員代表董事や従業員代表監事を置かなくてもよい、という点です。
2. 董事会メンバーの構成と選出
新『会社法』では、董事会人数の上限を13人とする現行『会社法』の規定が削除されており、董事会人数は13人を超えてもよいことになっています。(第68条)
董事会決議において同票で効率的な決議ができないという状況を避けるため、董事会メンバーの人数は一般的に奇数で設定されますが、新『会社法』はこれについて特に制限していないため、董事会人数が偶数であってもよいということになります。
なお、董事は株主や株主総会によって選出されますが、従業員代表董事は、会社の従業員が従業員代表大会、従業員大会、またはその他民主的選挙という方法を通じて選出されるべきであり、株主が直接選出または任命することはできません。
◆日系企業の皆様へのアドバイス
新『会社法』における董事会・監事会の組織体制の調整に関わる規則、及び従業員の権益保護に関する規定の増加により、中国現地日系企業の経営・ガバナンスに対するコンプライアンス要件もより厳しくなっていることから、各企業は当該分野に精通した現地弁護士の協力の下、新たなコンプライアンス対応戦略を構築することが求められています。
会社の組織体制、及び従業員の管理に関わるコンプライアンス面をどのように効果的に調整するか、また、従業員代表董事が会社の株式譲渡や清算などの重大な決定事項に関する情報を従業員に漏らす事がないようにする方法などは、経営計画の実施に直接影響を及ぼすことから、各現地日系企業はこれらを検討課題の重要な一部としなければならないでしょう。
作成日:2024年03月05日