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新『会社法』解説(1)一人会社の設立規則緩和

   2023年12月29日、中国全国人民代表大会常務委員会により新たに改定された『会社法』が公布され、2024年7月1日から正式に新『会社法』が施行されることになります。
   今回の改正で新たに追加された条文は228条に達しており、そのうち112条が実質的に修正されました。新『会社法』では、現行会社法の一人有限責任会社の設立に関する章がすべて削除されており、これにより一人会社の設立に関する制限が緩和されることになるため、会社の設立・運営にも大きな影響を与えることになります。そこで今回は一人会社の設立に関する規則の変更点について、簡単に解説いたします。

1.株主の資格制限の削除
   一人有限責任会社の株主について、現行の『会社法』の第57条では自然人または法人に限ると規定されていますが、新『会社法』ではこの規定が削除されており、施行後は当該規定による制限がなくなります。
   これは個人事業主、自然人、個人独資企業、法人、パートナー企業などが全て有限責任会社の株主になることができるということを意味します。

2.再投資面での制限が撤廃される
   現行の『会社法』第58条は、1人の自然人が1つの一人有限責任会社のみを投資設立できると制限していたため、そのようにして設立された一人有限責任会社は、新たな一人有限責任会社の設立に投資することができませんでした。
   新『会社法』がこの制限を撤廃したことにより、1人の自然人が複数の一人有限責任会社を投資設立することができるようになり、またその投資によって設立された一人有限責任会社も、さらに新しい一人有限責任会社を投資設立することができるようになります。

3.株主が責任を負うリスクが更に増加する
   実務では、株主が投資して設立する一人会社の数が増えるにつれて、複数の会社が管理運営するにあたり、業務、人員、財産など多方面で混同や混用が起きやすくなります。 このような問題がある場合、会社の独立した人格が会社債権者によって否定され、会社株主や複数の関連会社が、いずれかの会社の債務に対して連帯賠償責任を負うとの主張がなされるなど、株主責任にとってのリスクが増加する可能性が高まります。

◆日系企業の皆様へのアドバイス
   新『会社法』では一人有限責任会社の設立規定に関する制限が緩和されたことにより、現地日系企業や日本の本社において、一人有限責任会社設立ルール変更を最大限に活用した、積極的な事業領域の新規拡大や、新会社設立のための投資、市場シェア・市場占有率の拡大を進めるのに良いタイミングであるといえます。
   日本の本社や現地日系企業は、経営上で株主が会社の負債に対する連帯責任を負うことがないよう、書面で株主による意思決定を行うことや、財務コンプライアンスへの十分な留意、及び毎年定期的に財務鑑査を行うなど、会社人格の独立性を保持するための措置を講じることが求められています。
   新『会社法』の改正背景とその趣旨についてどのように理解し、またどのように効果的に対応していくかは、今後日系企業にとって重要な実務上の論点の一つとなることでしょう。

作成日:2024年01月19日