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新『会社法』解説(2):株主の出資期限に関する重大な変化

   新たに改定された『会社法』(2024年7月1日発効)の改正内容は多岐に渡っており、日本各社の本社や現地の日系企業における経営管理に大きな影響を与えるものとなっています。新『会社法』解説(1)では、一人会社設立に関する新規則を解説しましたが、今回は多くの日本各社の本社や日系企業の皆様が特に注目している株主による登録資本出資額の払込み期限や期限通りに払い込まなかった場合の責任について、簡単に解説いたします。

1.出資額の払込み期限に関わる変化
   現行の『会社法』でも、有限責任会社は登録資本出資額の払込制度を採用していましたが、登録時に直接出資額を払い込むよう企業に強制してはおらず、一定の払込み期限を与えてはいたものの、いつまでに出資を払込むかを限定していませんでした。
   今回改正された新『会社法』では、有限責任会社の株主出資払込み期限が最長5年と限定されました。つまりこれは、会社設立日から5年以内に、株主全員が出資額の満額を実際に払込まなければならないということを意味しています。(第47条)
   なお、ここで示す5年間は会社が設立された日から起算されるものであり、会社が設立された日とは実務上では一般的に営業許可証に記載されている日付に準じているという点にもご注意ください。

2.期限通りに出資を払い込まない場合、株主にはどのような責任があるか
   新『会社法』では株主の出資責任を強化しましたが、実際に株主が期日どおりに満額で出資を払い込まなかった場合、または5年以内に満額で出資を払い込まなかった場合、どのような責任やリスクを負う可能性があるのでしょうか。
(1)会社に与えた損失に対し賠償責任を負う (第49条)
(2)払い込んでいない部分の出資持分を失う (督促後もなお払い込まない場合、会社の董事会決議を経て株主に失権通知を出す)(第52条)
(3)利潤分配が制限される(第210条)
(4)持分譲渡時、譲渡人と譲受人が出資不足の範囲内で連帯責任を負う(第88条)
(5)株主又は個人が罰金など以下のような行政処罰を受ける
① 会社登記機関より是正を命じられ、5万元以上20万元以下の罰金が科される。
② 情状が重大である場合、未出資金額の100分の5以上100分の15以下の罰金が科される。また、直接、責任を負う主管者その他直接責任者に対して、1人あたり1万元以上10万元以下の罰金が科される。(第252条)

◆日系企業の皆様へのアドバイス
   新『会社法』では、有限会社の最長出資期限を定めることにより、株主の出資責任を強化していることから、有限会社においては、自己の投資能力を一層合理的に評価し、払込み出資額を慎重に確定する必要があるといえます。
   現時点で、新『会社法』の施行までには半年近くの時間が残されていますので、日本の各本社及び現地日系企業は、この期間に現地弁護士とタイムリーにコミュニケーションをしっかりと進め、新たに改正された条項に沿った会社定款の調整、及び出資期限の新規則に関連した対応の検討を、今後の重点的な課題の一つに含めることができるでしょう。

作成日:2024年01月23日