11月7日より日中間で公文書の領事認証が不要に
10月24日、駐日本中国大使館は、「中国の『外国公文書の認証を不要とする条約』の締約に伴い大使館での領事認証業務停止に関するお知らせ」(以下「本通知」と略)を発表しました。本通知によると、日本が発行した『条約』範囲内の公文書は、日本で付加証明書(Apostille)(以下「アポスティーユ」)を手続き取得するだけで、領事認証を行うことなく中国本土(香港とマカオを含む)で使用することができるようになります。今回は日系企業の皆様にご参考いただくため、以下、簡単にご紹介いたします。
1.領事認証を免除される文書の適用範囲
この条約の規定では、以下に挙げる「公文書」がアポスティーユの対象となり、これらに対する領事認証が不要となります。
①判決や裁定など、その国の裁判所や法廷に関係する機関や職員が発行した文書。
②「犯罪経歴証明書」、「婚姻届証明書」、「出生証明書」、「健康診断書」、「運転免許証明書」、「学位証明書」、「戸籍証明書」、及び会社の営業許可証などの行政文書。
③公証文書、例えば公証役場が発行した文書。
④私的な立場で署名した書類の公的証明書、例えば、工商検査文書など。
会社や個人が発行した授権委託書などの資料については、それ自体は「公文書」に属さないものの、公証を完了した後であれば、アポスティーユで代替することにより領事認証を免除することができるようになり、この方法で海外の不動産売買、相続などの手続きに適用できることは留意すべきポイントであるといえます。
2.日中両国のアポスティーユを行う機関について
本通知によると、日本が発行した文書を中国本土(香港、マカオを含む)で使用する場合、東京都千代田区にある外務省にアポスティーユを申請することができます。また、中国が発行した文書を日本で使用する場合は、中国の外交部、及び31の省級人民政府外事弁公室にアポスティーユの発行を申請することができます。(第2条)
該当する文書作成が完了した後、アポスティーユの手続きの際、必ず受理されるとは限らないということに注意しなければなりません。文書の内容、書式、期限、翻訳などの要求については、各機関(裁判所、工商局、税務局、不動産などの部門)ごとに異なっているため、前もって現地の政府当局や部門担当とコミュニケーションを図り確認しておくことで、文書を作成した後、実際には使用することができないといった事態を避けることができるでしょう。
◆日系企業及び駐在員の皆様へのアドバイス
企業または個人にとって、アポスティーユの領事認証手続きが免除されたことにより、クロスボーダー取引、留学、不動産の売買、相続などを行う際の手続きがかなり簡便になりました。 しかし、これは公文書と企業、個人が発行した授権委託書、契約書などの文書に対する公証認証手続きを行う必要が全くないという意味ではありません。これまで同様、自国の公証役場、法務部門、外事部門などで公証または認証手続きを行うことは依然として必要です。
各企業または駐在員の皆様が、日本への投資(住宅購入など)または中国への投資、若しくはクロスボーダー取引業務などを行う際は、これらの業務について現地の弁護士と適時コミュニケーションをとる必要があります。また、公証や認証が必要な場合、いくつかの企業様や駐在員様の公証認証経験を持つ弊所にご相談いただければ、お客様と共に検討・分析し、対応策をご提案いたします。
作成日:2023年11月02日