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増値税法(草案)の新たな変更ポイント

   2022年12月27日、第13期全国人民代表大会常務委員会(以下「人民代表大会常務委員会」という)第38回会議は『中華人民共和国増値税法(草案)』(以下『草案』という)について初めての審議を行いました。また、12月30日、人民代表大会常務委員会は審議された『草案』に対しパブリックコメントを募集しました。
   増値税は、企業経営における納税比率が高い税種であり、その改正は企業が納める増値税に重大な影響を与えます。今回は、この『草案』の主な変化について、以下に簡単に説明し、各日系企業及びその財務会計の参考に供したいと思います。

◆主な変更ポイント
1.貨物、無形資産などの対外贈与には増値税納付が必要

   どの種の取引行為に増値税を納める必要があるかという点は、中国に拠点を持つ各企業にとって非常に関心の高い問題です。この『草案』では、『増値税暫定条例』及びその他の法規内容に合わせて、増値税の徴収範囲を規定しました。規定によると、「中華人民共和国国内で貨物、サービス、無形資産、不動産及び輸入貨物を販売する事業単位や個人事業主は、増値税法に従って増値税を納付しなければならない」とされています。 (『草案』第1条)
   また、この『草案』では、「販売」は全て「有償」であると解釈されており、無償で商品やサービスなどを他人に提供した場合は増値税を徴収しないという意味ではなく、事業単位や個人事業主が商品、無形資産、不動産や金融商品を贈与した場合も、「販売」と同等と見なされ、増値税を納付することが定められています。 (『草案』第4条)

2.仕入税額控除できない項目に関する重大な調整
   今回の『草案』に基づく規定により、以下の仕入税額は販売税額から控除できないことになります。
(1)簡易税金計算方法を適用した税金計算項目に対応する仕入税額
(2)増値税免除項目に対応する仕入税額
(3)異常損失項目に対応する仕入税額
(4)集団福祉又は個人消費のために購入し、使用する貨物、サービス、無形資産、不動産に対応する仕入税額
(5)購入し直接消費に使用する飲食サービス、住民の日常サービスと娯楽サービスに対応する仕入税額
(6)国務院財政、税務主管部門が規定するその他の仕入税額。(『草案』第17条)
上記(5)では、購入した飲食サービス、住民の日常サービス、娯楽サービスを「直接消費に使用する」と限定されており、これは企業が購入した前述(5)のサービスが転売またはその他の目的に使用されるなら、仕入税額を控除できることを意味しています。

3.増値税の課税起算点は国務院の規定による
   売上高は国務院が規定する増値税の課税起算点に達していない場合は、増値税は免除されます。(『草案』第21条)
   これまでの「増値税暫定条例」によると、増値税の課税起算点は国務院財政、税務主管部門が規定していましたが、この『草案』により国務院が規定することとなりました。これは、増値税の課税起算点の確定手続きが一定程度厳格になることを意味します。

◆日系企業の皆さまへのアドバイス
   増値税は中国の一大税種の一つとされており、中国政府は増値税の徴収と管理を絶えず強化しています。例えば、この『草案』で、デジタル版インボイス(電子発票)を積極的に推進し、税務部門と工業と情報化、公安、税関、市場監督管理、人民銀行、金融監督管理など6つの部門が情報共有メカニズムを構築されることにより、企業の納税はより厳密な監督管理を受けるようになったと言えます。
   同時に、この『草案』の内容の一部は原則性が強く、国務院などの部門による具体的な実施条例や細則の公布を待つ必要があります。例えば、増値税の課税起算点はいくらか、また国内企業の寄付が免税項目に属しているかなどについてです。このため、各日系企業が適時に『増値税法』の立法の動き及び現地税務機関の法律執行動向を注視し、現地弁護士或いは現地税務部門とのコミュニケーションをとり、税務担当者の税収政策に対する正しい理解と実際の執行状況を把握しておくことが大切です。そのようにして、関連するビジネス行為、会計帳簿及び納税業務をふさわしく調整することができるでしょう。

作成日:2023年04月10日