最新法律動向

違法行為となる社会保険料の代理納付

   社会保険料の代理納付は、各地に事務所を設置して連絡や製品販売のサポート等の業務のみに従事する現地会社でよく行われており、例えば、上海に本部がある会社で、北京、広州の現地従業員の社会保険料をそれぞれ現地の人材会社を通じて納付しているといった状況となります。
   2021年9月から、杭州等一部の都市において、杭州市に会社又は支社を設立することなく、代理業者により社会保険料を納付する行為に対する規制が開始されており、このことは全国各地で代理業者を通じて事務所員の社会保険料を納付する現地企業に大いに注目されています。

   「社会保険料の代理納付」は、企業又は個人が、実質的な労働関係は持たない会社に委託して社会保険料の代理納付会社という名義で代理納付してもらう行為です。このような代理業者から社会保険料を納付すれば違法行為の構成を疑われ、重大な法的責任が発生するおそれもあります。
(1)社会保険料の追納及び延滞金、さらには罰金が科されるリスク
   『社会保険法』第86条の規定により、期限通りに全額で社会保険料を支払わないものは、保険料の追納と1日につき1万分の5に相当する延滞金の支払いを命じられ、期限を過ぎた者には未納金額の1倍以上3倍以下の罰金を科すことができるとされています。
(2)信義誠実档案への記録と罰金のリスク
   広東省を例にとると、「労働関係の虚構」は「保険待遇の詐取」を認定される可能性があり、対象金額によっては信用档案に記録されるか、罰金を科されるリスクがあります。
(3)詐欺罪を認定されるリスク
   「保険待遇詐取」の行為は、法定金額に達すれば詐欺罪を構成し、刑事責任を負うこととなります。2020年7月、北京市で社会保険料代理納付の疑いで刑事責任を問われた事案が公表されました。

◇ 日系企業へのアドバイス
   各地に事務所を置く現地企業で、第三者企業に委託してその名義で従業員の社会保険料納付を委託していると、従業員から賠償請求を受け、労働・社会保険行政機関により行政罰を受けたり、刑事犯罪に抵触する等さまざまなコンプライアンス上の問題を引き起こしかねません。対応策として、分支機構(支社)の設立や一部の業務について労務アウトソーシングを利用する等の方式で対応した実例もあります。ただそのような対応の過程では留意事項が多く、政府機関との交渉にはテクニックを要します。類似の問題を抱えている方には、是非弊所にご相談いただければ、全力でサポート対応させていただきます。

作成日:2021年10月18日