『民法典』下における不動産賃借について
日系企業の駐在員が中国で不動産物件を借りて住む場合、賃貸期間中に大家が物件を自分の親戚に売ってしまったり、賃借している物件が裁判所に差し押さえられたり、第三者から物件の権利を主張されるといった問題が生じることがあります。このほかにも、企業が工場を賃借する場合に類似の問題に巻き込まれることがあり、企業と駐在員の悩みの種となっています。
今年1月1日から『民法典』が正式に施行されたと同時に『契約法』が廃止され、不動産賃貸借に関する規定について少なからず重大な変更があったため、今回は以下のことについてご紹介いたします。
◆ 駐在員が部屋を借りる際の留意点
1.居住権の設定された物件は賃貸不可
『民法典』の施行後、物件に居住権を設定することが可能とされていますが、『民法典』の規定では、原則として居住権を設定した物件は賃貸してはならないとされています。このため、駐在員は居住権の設定された物件を借りないようにし、借りる前には物件について確認したうえ、賃貸借契約中でもこの点について約定しておく必要があります。賃借物件の調査確認、関連賃貸借契約の作成は弁護士に委託することが可能です。
2.転貸物件は借りないようにする
実態として、「二房東」と呼ばれる転借人が賃貸物件を転貸しているケースが少なくありません。『民法典』の規定により、賃貸人の同意なく転貸された場合、賃貸人は転貸契約を解除することができるとされています。このため、駐在員が部屋を借りる前に、賃借物件が賃貸人のものかどうかを確認しておかないと、所有者から賃貸借契約の解除を要求されるリスクがあります。
3.物件の所有権について争いのある又は差押え対象となっている物件は借りない
駐在員が部屋を借りた後で、その部屋について第三者が権利を主張したり、裁判所の差押えが入り、賃借人に当該物件からの移転が求められれば、駐在員の生活に深刻な影響が及ぶことになります。このため、駐在員は所有権帰属について争いのある物件(共有の物件で賃貸には所有者のうち1名しか同意していない等)や差押えの対象物となる物件を借りないよう注意する必要があります。
◆ 日系企業や駐在員へのアドバイス
『民法典』の施行後、不動産賃貸に関する規定に数多くの変更があり、例えば、借りている部屋に所有権帰属についての争いがあるか差押えにあった場合、賃借人は賃借の取消しを選択できるとされています。駐在員が借りた部屋にこのような問題が生じた場合、適時証拠を残して賃貸人に契約解除を通知することができます。また、上記の留意点及び対応措置は、日系企業が賃借契約を結んだ工場にも適用が可能です。賃貸借契約の内容確認や証拠の収集、保管には一定の専門知識やテクニックを要するため、対応の際は弊所の経験ある弁護士にご相談ください。
作成日:2021年07月22日