民法典:従業員に職務履行上の権利侵害があった場合、 会社が責任を負担した後の対応は
従業員が職務の履行過程において他人の人身又は財産に損害を与えってしまったというケースは少なくありません。従業員の権利侵害による損害の結果をどのように処理すべきかは『権利侵害責任法』で明確に規定され、従業員が業務上の任務の履行のために他人に損害を与えた場合は、使用者が権利侵害責任を負うものとされています。それでは、その損害について重大な責任が従業員にある場合、会社はどのように求償すればよいでしょうか。
◆2020年12月31日までは、双方に特別な約定がある場合に限り会社から求償することができる
『賃金支給暫定施行規定』第16条では、労働者本人の原因により使用者に経済的損失をもたらした場合、使用者は労働契約の約定に基づき経済的損失の賠償を要求することができることが明確に規定されています。これにより、現行の規定のもとで、従業員が企業に経済的損失をもたらした場合、双方で労働契約に特別な約定を設けているのであれば、企業は約定に従って求償することができるとされてきました。
◆2021年1月1日からは、会社は対外的に賠償責任を負担した後、直接求償することができる
『民法典』第1191条では、「使用者の従業員が業務上の任務の執行により他人に損害をもたらした場合、使用者が権利侵害責任を負う。使用者は、権利侵害責任を負った後で、故意又は重大な過失のある従業員に対して求償することができる。」と規定されています。『民法典』の施行後においては、従業員が職務の履行中に故意又は重大な過失により会社に損失をもたらした場合、企業は対外的に賠償責任を負担した後に従業員に対して直接求償することが法により可能となります。
◆留意点
企業では、『民法典』の施行開始を踏まえ、企業の就業規則を相応に修正するとともに、労働契約又は職務職責において、従業員の業務フロー及び責任、故意又は重大な過失のあった従業員には相応の損失を負担させることを明確に記載し、また従業員向け研修を行うこと等をお勧めいたします。
従業員が権利侵害行為を実施し、会社の規則制度への重大な違反があった場合、会社は労働契約を解除して求償することができます。労働関係を解除した場合にも、企業は権利侵害をした従業員から毎月賃金に対する一定比率を控除する方式により求償する必要はなく、離職手続きの際に当該従業員に対し賠償金額を一括で支払うよう求め、問題をより迅速に解決することができます。
『民法典』の施行に伴う制度変更は、従業員にとっては、勤務においてより慎重であること、規定マニュアルを厳守して職務を履行することへの注意喚起となる一方で、企業にとっては、以後従業員に対する求償及び労働契約を解除する際の法的根拠を提供するものとなります。
作成日:2020年12月31日