最新法律動向

北京、青島等で企業社会保険料の徴収を税務機関に移管

◆背景◆
   2018年7月、中央共産党中央弁公庁、国務院弁公庁より『国税・地方税徴収管理体制改革案』が公布され、2019年1月1日より、基本養老保険料、基本医療保険料、失業保険料、労災保険料、出産保険料の社会保険料は、統一的に税務機関により徴収されることとなりました。
   その後、一部地方では企業で過去に未納があった保険料の追徴が行われ、社会の注目を集めました。2018年9月6日に招集された国務院常務会議では、社会保険料の徴収機関改革が完了されるまで、各地における従来の徴収体制は一律不変を維持することが提起されたことにより、社会保険料徴収の税務機関への移管は当面見合わせられていました。

◆変化◆
   最近になり、中国の複数の地域で独自に公告が行われ、2020年11月より企業従業員の各社会保険料について、税務機関による統一徴収に移行されることとなりました。11月から社会保険料の徴収が税務機関に移管される地域には、北京、上海、天津、山東、山西、湖南、吉林、広西、貴州、四川、新疆、チベット、深セン等が含まれるようです。
   従前は人力資源社会保障機関となっていた社会保険料の徴収機関が税務機関に変わった後、具体的な徴収がどのように行われるのかについては、以下2通りのモデルがあります。
1.全責任徴収モデル:税務機関が査定し、徴収する。
2.代理徴収モデル:社会保険機関が査定し、税務機関が徴収する。現在、複数の地方でこの方式が採用されており、税務機関は徴収のみを担当する。

◆影響◆
   かつて、企業では人件費を節約するために、社会保険料の下限により納付基数を選択することで、社会保険料をより少なく納付することが可能でした。今回の変化により、社会保険料の納付漏れ、過少納付はより見つかりやすくなったと言えます。特に、税務機関による全責任徴収モデルが採用される場合には、税務機関は企業所得税、個人所得税等の多くの税目の申告を受理する機関として、企業の賃金収入データを含む、より全面的な財務情報を把握するようになります。企業の従業員数、従業員賃金、社会保険料基数が税務機関によって認定され、保険料の徴収も税務機関により行われることで、社会保険の納付基数の賃金との一致が、従来に比べて容易に審査・確認されるようになります。

◆対応◆
   現在の政策では、企業の以前からの社会保険料納付方式について、徴収機関が変更されるとただちに処罰を受けることになるとは限らず、また法執行機関が過去の未納保険料について追徴を行うかどうかも確定はできません。しかしながら長期的には、企業が経営過程において正しい社会保険コンプライアンスを全うしているべきことは言うまでもありません。
   社会保険コンプライアンスにおいては、正しい金額で保険料を納付するほかにも、企業の実情に合わせ、今後従業員使用の構造と方式を改善し続けていくことで社会保険料の負担軽減を図ることをお勧めいたします。従業員使用の構造や方式の調整についてお悩みがある方には、各企業の実情に合わせた調整案制定を弊所よりサポートさせていただきます。

作成日:2020年12月02日