最新法律動向

日系企業にも関係する輸出規制法

   10月17日に第13期全国人民代表大会常務委員会第22回会議で可決された『輸出規制法』が、今年12月1日より施行されます。『輸出規制法』は全5章49条からなり、中国の現行の輸出規制制度に対する一連の調整を行ったもので、中国で貿易業務に従事する中国企業、外資系企業に重要な影響をもたらすものとなります。
   以下にて『輸出規制法』の主な内容をご紹介いたしますのでご参考ください。

◆主な内容◆
(1)通常の「輸出」行為のほか、本法では「輸出とみなされる」行為、「再輸出」行為も規制対象の範囲に含められる。
① 「輸出とみなされる」行為。中国にある企業が中国国内から外国の企業、個人に規制品目を提供することについても、『輸出規制法』の規制を受けます。
② 「再輸出」行為。「再輸出」行為については、同法では原則的に保留するのみで、「再輸出」行為の含意を明確に提示してはいません。「再輸出」行為は、中国国内から貨物や技術を国外に輸出した後、外国企業によりさらにそれをその他の国家、地域に輸出することと理解することが可能と思われます。「再輸出」の行為の定義、実施については国から公布される実施条例等の関連法規による明確化が待たれます。

(2)新たに「臨時規制」措置が設けられ、リスト外の品目についても規制を受ける可能性がある。
   規制品目に対し、国により輸出規制リストが制定、公布されることにはなっているものの、輸出規制リストに含められていない貨物や技術についても、規制対象とならないとは限りません。
   「米中貿易摩擦」及び米国が取る輸出制限の影響により、軍用・民用に両用される貨物や技術のほか、中国のクラウドコンピューティング、ビッグデータ、5G通信等のハイテク技術や冶金、化学等の関連産業の貨物、技術についても、臨時に規制品目リストに含められる可能性があります。関連する日系企業では臨時規制品目に十分注目し、相応の対応策を講じることが必要となります。

(3)輸出企業の規制品目輸出許可の申請難度が増し、管理名簿に登録された実体との取引が禁止される。
① 同法により、輸出企業が国家輸出規制機関に規制品目の輸出許可証を申請する際、エンドユーザー又はその所在国家・地域の政府機関より発行された最終用途等の証明文書を提出するよう求められ、かつエンドユーザーは無断で規制品目の用途を変更したり、第三者に譲渡したりしないことを誓約する必要があります。
   中国に所在する外資系企業では、本社を通じて貨物又は技術をエンドユーザーに提供する可能性がありますが、そのような商流である場合、輸出規制品目を輸出することの難度が一定程度上がることとなります。
② 国が制定する外国輸入業者やエンドユーザーの管理名簿に対し、原則として輸出企業は管理名簿上の企業と取引してはならないとされます。これに違反した場合、操業停止・整理を命じられ、関連規制品目の輸出経営資格を取り上げられる等の行政罰を受ける可能性があります。日系企業においても、中国国外の顧客に対しリスクの事前判断を行い、必要に応じて国家輸出規制機関もしくは弁護士等の専門家に確認することをお勧めいたします。

(4)規制品目の輸出代理、貨物輸送、通関等の仲介業者の責任やコンプライアンス義務を追加。
   輸出規制にかかるコンプライアンスは、輸出企業、輸入業者、エンドユーザーのみに関わるのではなく、規制品目の輸出に従事する代理通関、貨物輸送等でも、相応の審査確認義務の履行が求められ、違反すれば50万元の罰金を科されることになります。

(5)輸出経営者及び企業責任者の刑事責任を追加。
   同法では、輸出企業及び責任者の刑事責任について明確に規定しています。『輸出規制法』の規定に違反して処罰を受けた場合、企業は5年間にわたり関連の輸出業務に従事できず、企業責任者は5年間または終身にわたり関連の輸出経営活動に従事できなくなる可能性があります。行政罰や刑事罰を受けることのないよう、この点には日系企業及び高級管理職に十分留意いただくようお勧めいたします。

◆日系企業へのアドバイス◆
   『輸出規制法』は、輸出規制に関する制度を規定したものでありながら、内容の一部には実行性に欠けるものもあります。それらについては今後、国の関係機関により引き続いて関連実施条例や関連法規が制定される可能性があります。関連する日系企業では法整備の動きに十分注目いただくことをお勧めし、弊所からも随時情報を皆様と共有させていただきます。
   このほか、関連する日系企業では弁護士のサポートのもとで、自社の製品や技術の輸出規制確認、リスク評価の体系を確立し、中国国外の顧客に対するリスク評価や警戒を強化し、実行的な対応案、対策を制定されることをお勧めいたします。輸出規制管理機関や税関による処罰を受けて経済的損失を被ったり信用を損なう事態となり、ひいては企業の長期的発展に影響が及ぶことのないよう心掛けたいものです。

作成日:2020年11月11日