会社は従業員の業務メールを閲覧できるか
業務管理の必要から、従業員にPCや電子メールボックスを支給している企業は少なくありません。企業によっては、それらに対する監視を行っているところもあります。実務においては従業員がPCやメールボックスが会社に監視されたとして裁判所に訴えた事例もあります。会社には従業員のPCやメールボックスを監視する権利があるのでしょうか。
会社が従業員に支給するPC又は業務用メールボックス(通常統一のドメイン名)は、会社がその所有権を有する会社の財産であり、それらを使用して従事する業務関連行為に対し、原則として会社は監視、閲覧する権利を持つものとされています。
『ネットワーク安全法』、『民法典』等の法律・法規により、ネットワークサービスのプロバイダ、企業、事業組織等が業務活動の中で公民のデータを収集、使用する場合は、合法性、正当性、必要性の原則を遵守すべきであり、収集、使用の目的、方式、範囲を明示・告知し、データ収集対象者の同意を得る必要があるとされています。
このため、会社は規則制度や労働契約の中で約定し、明示・告知していれば、従業員の業務用メールボックスを閲覧することができます。例えば、「業務用PC、業務用メールボックスは会社の財産であり、業務の必要によってのみ使用することができ、会社は経営管理の必要により、従業員に支給するPC又は業務用メールボックスの内容を監視又は閲覧し、内容を取得・使用等することができる」などと約定します。
従業員が離職する際には、会社はまずその従業員の業務用メールボックスの内容のバックアップを取り分類処理することができ、業務外の個人メールについては従業員に引き渡すか同意を取得したうえで削除、廃棄処分するようにし、個人情報の漏えいにより会社が従業員より賠償請求を受ける事態を回避します。
従業員の個人情報やプライバシーの認定、処理がかなり複雑となっているため、2020年中に『個人情報保護法』についての審議が行われることになっています。このため、企業で従業員の業務用メールボックスを閲覧したり、その他の従業員個人の情報を処理する際には、企業の自主管理権を慎重に行使するようにし、事前に弁護士に相談することで、従業員によりプライバシー権、個人情報権の侵害を主張され、会社の名誉や利益が損なわれるのを防ぐことができます。
作成日:2020年09月16日