法律相談Q&A

コロナ新時代の信用調査

Q: 中国では新型コロナウイルスが次第に抑制されつつあり、当社でも積極的に外部向け業務を進めています。新規顧客を開拓し、提携を始める前に、相手方の信用状態を調査したいと考えていますが、良いアドバイスはありませんか。

A: 中国で初めての「法典」となる『民法典』が公布され、企業の営業秘密及び個人情報の保護がさらに強化されるようになりました。また、感染流行後期において、多くの企業では以前に比べて大きな変化が生じており、今後の取引方式、信用状態等の全てにおいて多くの変化が発生する可能性があります。このような社会的環境のもとでは、新規顧客や既存の顧客への信用調査はより重視されるべきものとなっています。法律で情報保護が強化されている中で、適法かつ有効に新規/既存顧客の信用状態を調査するにはどうすればよいか、以下にご紹介します。

◇直接顧客に対して情報の提供を求める
(1)双方で初めての提携を行う場合、相手方に対して企業の基本情報である営業許可証、生産・経営許可証書(ある場合)、企業規模、製品規格、標準、資産・信用状態等の提供を求めることは、実務としてかなりよく行われています。また、提携の誠意を示すために、相手方も提供に協力的であるのが一般的です。当然、相手方に対して提携に必要な上記以外のその他の情報を提供するよう求めるには、双方の提携交渉の進度、双方の意向、具体的な提携プロジェクト等を踏まえて個別に分析する必要があります。
(2)秘密保持義務に注意するようにし、特に相手方の業務に関する秘密情報については、双方間の提携が成立するか否かにかかわらず、秘密保持義務を履行しなければならず、このことは『民法典』第501条にも明確に規定された義務でもあります。相応の義務を履行せず、相手方の営業秘密を漏えいしたり、不当に使用した場合、賠償責任を負うことになります。

◇弁護士に専門的なビッグデータを利用した調査を依頼する
(1)双方の提携が法的リスク又は業界リスク等に関わる可能性があるという場合、直接相手方に確認することによっては情報を取得できない可能性があります。そのような場合、専門の弁護士に委託して十分な調査と分析を行うことが必要となります。弁護士による専門的な調査と分析を行い、体系的かつ正式な法律意見が出されると、企業ではこれを、相手方との提携を継続すべきか、提携にどのようなモデルを採用すべきかを判断する際の重要な参考情報とすることができます。
(2)ネットワーク技術の飛躍的な発展に伴い、ビッグデータが各業界で広範に用いられるようになりました。弁護士は政府機関により公開されているビッグデータ情報及び専門的な法律ビッグデータソフトを活用して、より全面的で専門的な調査と分析を行うことが可能です。

◇正規のコンサルティング会社に調査を委託するか、弁護士と検討・確認する
(1)実務において、専門のコンサルティング会社を利用することにより、企業に関連するその他の企業(経営の実力、財務の実力、将来的な経営予測、全体の信用評価、提携リスク、事前の警告等)に関する調査、コンサルティングサービスの提供を受けたり、上述した2通りの方式のほかに、さらに踏み込んだ情報を提供してもらえる可能性もあります。ただ、これらのコンサルティング会社やその情報の取得方式が正規のものかどうかを検証する必要があります。
(2)最近数年で、中国政府は個人のプライバシー、ビジネス情報の保護を強化し続けています。この度公布された『民法典』では個人情報の法的な保護について明確に規定され、個人情報の収集、使用、提供、公開等については「適法性、正当性、必要性」の原則を遵守すべきであるとされています。『民法典』では企業の情報の収集、提供等に関する規定は設けられていませんが、企業が対外的に公開する情報の収集、提供等についても「適法性、正当性、必要性」の原則が守られるべきだと思われます。このため、コンサルティング会社に委託するか否かや委託調査の範囲について、弁護士に確認する必要性は非常に高いものとなります。

◇日系企業へのアドバイス
   今回は、実際に比較的よく行われている、初回提携相手の情報を入手するルートについて簡単にご紹介いたしました。実務において、新規又は既存の顧客に対する信用調査は非常に重要であり、具体的な業種、提携相手、提携プロジェクト等により、初回提携時に事前に知り把握しておくべき必要な情報も異なり、非常に複雑であるため、専門の弁護士により提携相手がサプライヤーなのか顧客なのかや、個々の提携プロジェクト等の状況を踏まえて具体的に分析、判断することが必要となります。
   また、『民法典』の公布と実施に伴い、民商事活動に関する規則も相応に調整されており、『民法典』や『会社法』の適用から、営業秘密の保護義務、個人情報の法律による保護等の具体的なレベルに至るまで、ビジネス活動にも相応の影響を受けるため、特に留意し注目いただくことが必要となっています。

作成日:2020年08月27日