最新法律動向

土壌汚染等の検査

   コロナ禍が、依然として皆様の関心事となっている昨今、2020年6月に青島市から、土壌汚染について重点的に監督管理を受ける企業131社の名簿が公布されました。この中には、中国の国営企業だけではなく、日本・韓国・ドイツ等の外資系企業も含まれています。

◇近年の立法動向
①2016年に国務院より『土壌汚染防止行動計画の公布に関する通知』が公布されてから、中国政府は徐々に土壌汚染の防止業務を重視するようになり、2018年には『土壌汚染防止法』が公布され、土壌汚染防止がこれまでにないほど注目されるようになった。
②中国の各地域でも、続々と関連法や規則制度が公布されており、例えば『北京市土壌汚染防止業務案』や『山東省土壌汚染防止条例』等がある。
③『民法典』第七編「権利侵害責任」第七章には、生態環境への損害に対する懲罰的な賠償制度が追加され、生態環境への損害に対する修復と賠償の規則が明確に規定された。
④『民法典』第1235条では、生態環境に損害をもたらした場合、下記に掲げる損失と費用を賠償しなければならないと規定している。
・生態環境の修複期間中、生態環境がサービス機能を喪失したことによる損失
・生態環境機能への永久的損害をもたらしたことによる損失
・生態環境の損害に関する調査、鑑定評価等にかかる費用
・汚染の除去、生態環境の修復にかかる費用
・損害の発生と拡大防止のために支出する合理的な費用

◇土壌汚染に関するビッグデータ
①裁判所の判決書ビッグデータを「土壌汚染」というキーワードで検索いたしましたところ、民事判例が595件、刑事判例が224件、行政判例が63件見つかりました。
②行政処分のビッグデータを「土壌汚染」というキーワードで検索いたしましたところ、関連する行政処分决定書が98件見つかりました。
③2002年1月から現在まで、青島市の環境保護機関は、大気汚染・固形廃棄物・土壌汚染等の環境保護問題で、行政処分決定書を600件近く発行しています。

◇日系企業が土壌汚染に関し特に注意すべき点
①土壌汚染をもたらす可能性のある建設工事を新築・改築・増築する場合には、環境アセスメント報告書を作成し、土壌や地下水にもたらす可能性のある悪影響と、それに関連する予防措置を明確にする必要がある。
②企業が土地を購入して工場建設を行う際には、事前に土壌や地下水について調査を行い、状況を把握し、購入後に修復責任を負わされる事態を回避する。
③企業の清算や持分譲渡において、土地の譲渡も発生する場合には、譲受側に土地や地下水の状況を明確に知らせ、将来、譲受側から「詐欺」や「重大な誤解があった」という理由で賠償責任を求められたり、譲渡契約を取り消されることを回避する。
④企業は、日常的な生産経営の過程において、土壌に汚染を生じる潜在的な可能性のある製造プロセスや加工技術に対し、生産開始前の予防・生産経営中の監督管理・生産終了後の処理に注意し、必要な場合には第三者機関へ調査や処理を委託する。
⑤土壌汚染の重点企業は、必ず汚染の潜在的可能性についての調査制度と自主監査測定(または第三者機関に検査測定を委託)制度を設ける。そのうえで、土壌に対しては年に1回、地下水に対しては年に2回、環境監査測定を行うようにする。

◇日系企業の環境保護問題への対応(解決)プラン
①所属する地域や所属する業界の環境保護に関する法律や業界基準を把握・理解しておく。
②企業の環境面における現状を把握する。
→法律と技術を組み合わせた調査が必要となるため、外部の弁護士や専門機関との共同調査を推奨します。
③企業で環境保護緊急救援システムを構築・整備し、突発的な汚染事故に対応できるようにしておく。
④弁護士や環境保護専門機関の力を借り、企業内で定期的に環境保護に関するセミナーや研修を実施し、関連する職務に就く従業員の法令やリスクに対する理解及び環境保護への意識を高める。
⑤環境保護問題が起きてしまった場合には、弁護士や環境保護専門機関の力を借り、速やかに政府との交渉を行い、話し合いに努め、環境保護問題により企業にもたらされる経済的な負担を最小化し、刑事責任や行政責任を負うことを回避する。

作成日:2020年08月27日