『民法典』と商業秘密
商業秘密は非常に重視されており、実務においても、多くの企業において、どう保護すべきかの検討は度々行われており、企業ごとに厳格な措置が講じられていますが、「商業秘密とは」について改めてご注目いただきたく、ここ数年の間に、中国で公布・改訂された商業秘密に関連する新たな法律法規及びそれによりご留意いただきたい点について、紹介いたします。
◇商業秘密の保護に関する最新の立法動向
①『民法典』
今年5月28日に可決された『民法典』第123条では、商業秘密を特許・商標・作品と同様に、知的財産権における権利客体の1つとすることを規定しています。
②『不正競争防止法(2019年改訂)』
中国においては、『民法典』が施行されるまでは『不正競争防止法』が商業秘密に関し最も重要な法律であると言えます。『不正競争防止法』は米中間での知的財産権交渉の影響を受け、2019年4月に改訂され、改訂内容は全て商業秘密に関する条項に集中しており、商業秘密の保護範囲を拡大し、商業秘密への権利侵害行為に対する懲罰を強化しています。
③民事権利侵害に関する司法解釈への意見聴取稿の公布
2020年6月10日、最高裁判所は『商業秘密の侵害にかかる民事案件への法律の運用に関する若干の問題に対する解釈(意見聴取稿)』(以下「意見聴取稿」という)を公布し、社会に向けて公開でパブリックコメントを求めました。「意見聴取稿」では、商業秘密に関わる民事権利侵害案件で多く見られる実務的な問題に対する解釈を行っています。
◇商業秘密として認定されるために必要な条件
多くの企業では、企業の顧客情報は全て商業秘密であると見做しがちです。しかし、一部の顧客情報については、裁判所により必ずしも商業秘密であるとは認定されず、認定されるには一定の特性が備わってる必要があります。この特性について、現行の法律及び「意見聴取稿」に関連する明確な規定が設けられています。
①秘密性:一般大衆が知り得るものでなく、公開情報とは区別される特殊な顧客情報。
②価値性:現実的もしくは潜在的な市場価値が備わっており、競争上のメリットをもたらす顧客情報。
③守秘性:知り得る人員の範囲を限定する、守秘情報であることを表示する等の守秘措置が講じられた顧客情報。
よって、契約書や領収書のみを証拠として提供しても、当該書類に記載された顧客情報に上記の特性が見られない場合、必ずしも商業秘密であるとは認定されません。
◇日系企業へのアドバイス
日本と中国では、商業秘密の概念にも差異があるかと思います。その違いを理解し、中国においては、どのような情報が商業秘密と見做され、どのような情報は一般情報に分類されるのかを把握することで、より的確かつ有効な商業秘密の保護措置が取れるものと存じます。
作成日:2020年08月27日