自社工場を適法に譲渡するには
Q: 当社は日系化学品メーカーですが、現有の土地と工場について、当時50年の使用権を付与された国有地使用権証書及び不動産権利証書を取得していました。会社を移転するにあたり、これらの工場と土地を処分する場合、どうすれば適法に利益の最大化を実現できるでしょうか。
A: 企業が移転する場合に、適法かつスムーズに工場を処分することは、従業員の処遇、川上・川下のサプライチェーンとの連携維持とともに3大重要事項の1つに数えられており、工場処分をスムーズに済ませられるかどうかが、企業のスムーズな移転、移転の進捗及びそのコストを直接決定することになります。反対に、工場処分の対応が不適切な場合、移転全体の業務に大きなマイナス影響を及ぼすこととなります。
◇譲渡前の調査と分析
(1)「土地使用権払下げ契約」中に土地の譲渡に関する特約がないことを確認する。
(2)現地政府と締結された投資協議等の文書がないことを確認する。このような文書があると、土地使用権の譲渡の制限が規定されている場合がある。
(3)現地政府からの強制的買上げの要求がないか、調査する。
(4)土壌や地下水の汚染等が考えられる場合、修復の要否を確認する。
(5)工場内に未認可の建築物(違法建築)がないかを確認する。
(6)工場が、環境アセスメントもしくは消防検収を未通過となっていないか確認する。
上記の要素は工場全体の譲渡及び譲渡価格に重大な影響を与える可能性があるため、弁護士に委託して十分な調査と評価を行い、実行可能性に関する法律意見書の提供を受けるようお勧めいたします。
◇譲渡の主な方式
(1)入応札・競売・公開取引の方式による売却。
(2)新聞、自社メディア等において売却公告を掲出し、譲受意向者を募集する方式。
◇留意点
(1)入応札・競売・公開取引の方式により譲渡する場合、合理的に競売条項を設定し、競売の最低価格を確定し、競売で成約できなかった場合の予備案も事前に設定しておくようにする。
(2)意向者に対する信用調査を注意して行う。
(3)土地や工場の瑕疵について、会社がいつ、どの程度まで開示するかを慎重に検討する。
◇日系企業へのアドバイス
ビッグデータを用い、「移転+外資系企業」をキーワードに検索すると、約400件あまりの訴訟案件がヒットし、中でも広東省、山東省、江蘇省、福建省、北京市の例が多く見られます。企業ではリスクを未然に防止し、訴訟トラブルを回避する必要があります。
譲渡前の調査段階及び譲渡案の設計、実施等の全過程において、弁護士、会計士等の第三者専門機関を活用することにより、リスクを極力抑えるとともに、スムーズな譲渡と利益の最大化をより実現しやすくなります。
作成日:2020年08月27日