最新法律動向

代金の支払いを60日以内に限定

   企業の日常経営においては、さまざまな経済紛争が発生するものであり、最も多いのは債権・債務をめぐる紛争です。未払金の支払いを催促することは、企業の資金回収において重要な意味を持ちます。中国では最近、民間企業の適法な利益を保障するためのさまざまな政策が公布されており、また実務において、企業が未払金を回収するための方法は複数あります。以下にて2通りの方法をご紹介しますので、ご参考いただければと存じます。

1.代金の支払いに関する新規定
   情報化・工業部で2019年9月4日に起草された『中小企業への速やかな費用支払いに関する管理弁法(意見聴取稿)』の中で、次のように規定されています:国家機関、政府系事業組織、大型企業による中小企業への支払いは最長でも60日を超えてはならず、契約で別途約定している場合もこの通りとする。契約に、検査又は検収を支払いの条件とすることを約定している場合は、最長30日の延長を可能とする。一般に、支払期限は商品、工事、サービスの引渡し日から起算されます。
   このため、日系の中小企業が国家機関、政府系事業組織、大型企業に商品を供給し、サービスを提供する場合、その支払期限は最長でも60日を超えないものとなります。大型企業又は国家機関、政府系事業組織が期限を過ぎてもなお支払わない場合は、契約で約定されていなくても、企業は中国人民銀行の同時期の貸付利率の1.5倍で相手方に期限超過の利息を主張することができるとされ、このことは中小企業にとり大きな保障となります。

2.未払金について強制執行が可能
   企業・組織や個人の未払金が支払期限が到来してもなお支払われない場合、企業は弁護士に訴訟提起や未払金の催促を委託することができます。このほか、催促状や弁護士レターの送付、交渉等の各種の方法により債権を回収することも可能です。
   裁判所により確定されている弁済義務が、期限が到来したにもかかわらず履行されない場合、企業より相手先を信用失墜企業の「ブラックリスト」に登録するよう裁判所に申請することができ、リストに登録された対象は、出国や高額消費が制限され、企業の法定代表者、董事、監事、高級管理職等の役職に就くことが禁止されるため、弁済を促すことができます。また、裁判所では預金残高、車両、不動産のほかにも、一定の条件を満たしていれば、養老金、相手が唯一保有する居住物件、配偶者の財産に対する強制執行や、Alipay、WeChatの決済機能の使用等を制限することもでき、さらに重大な場合には刑事責任を追及することも可能とされています。

◆日系企業へのアドバイス
   インターネット・ビッグデータ時代の到来に伴い、現在裁判所では被執行者の財産状況についてリアルタイムの監視管理ができるようになっており、口座財産を離れた地方から引き落とすことも可能となっています。
   日系企業各社で取引を行うにあたっては、事前に弁護士に依頼して取引先の信用調査、取引契約のレビューを行うほか、弁護士の立場から交渉、談判を行うことで、後の債権回収において会社の労力、コスト、時間が無駄に費やされることを回避することができます。

作成日:2020年06月15日