肺炎拡大時における日系企業の対応について大地からの緊急速報
はじめに
2019年の年末から、湖北省武漢市を発端とした新型コロナウイルスへの感染による肺炎が春節休暇の期間中、迅速に中国各地を席巻しています。中国国家衛生健康委員会のオフィシャルサイトが公表した情報によれば、2020年2月3日24時迄の時点で、感染者数は累計20,438名、うち死者は425名、感染が疑われる者は23,214名となり、いずれの数値も増加し続けています。
2020年1月30日、WHO世界保健機関は、新型肺炎に対して「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。2020年1月31日までの時点で、62ヶ国が中国新型肺炎に対して入国制限措置を講じました。
中国国務院及び各地の地方政府は、新型肺炎の拡大に伴い、『感染症防止法』等の法律に基づいて春節休暇期間の延長や職場への復帰日の延期を含む多くの新型肺炎拡大の防止・抑制のための緊急対応政策を打ち出しています。
最近、クライアントの皆様から続々と弊所に企業の職場への復帰、新型肺炎期間中の賃金の支給方法や在宅勤務等についての問い合わせが寄せられています。弊所は、関連する法律の規定に基づいて、最近の実務における日系企業の重要な利益に関わってくる法的な問題や回答をまとめました。クライアントの皆様の方針決定の参考としていただければ幸いです。新型肺炎の拡大の状況によって、関連する政策も引き続き変化してまいりますので、人力資源社会保障局等の政府機関が関連する解釈や意見を出してきた場合には、それを基準としていただければ幸いです。
【1】新型肺炎拡大の防止・抑制のため法律が相次いで公布されました
(一)国家レベルの通知
1月26日、国務院弁公庁は『2020年春節休暇期間の延長に関する通知』を公布し、2020年の春節休暇期間を2月2日(旧暦の1月9日、日曜日)迄延長し、2月3日(月曜日)から正常に出勤するよう規定しました。
(二)地方レベルの通知
肺炎の更なる拡大を抑制するため、1月27日より、一部の省と市で、企業従業員の職場への復帰を延長する旨の通知が相次いで公布されました。
(1)1月27日、上海市政府は、『上海市の企業の職場への復帰と学校始業日延期に関する通知』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、上海市区の各種企業は、2月9日24時以降に従業員を職場へ復帰させるよう求めました。
(2)1月27日、浙江省政府弁公庁も『企業の職場への復帰と学校の始業日延期に関する通知』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、省内の各種企業は、2月9日24時以降に従業員を職場へ復帰させるよう求めました。
(3)1月28日、江蘇省政府弁公庁は、『企業の職場への復帰延期に関する通知』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、省内の各種企業は、2月9日24時以降に従業員を職場へ復帰させるよう求めました。
(4)1月28日、広東省政府は、『企業の職場への復帰と学校始業日の延期に関する通知』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、本行政区域内の各種企業の従業員の職場への復帰日を2月9日24時以降に従業員を職場へ復帰させるよう求めました。
(5)1月28日、重慶市新型コロナウイルスに感染した肺炎の拡大防止・抑制業務指導チーム総合事務室は、『重慶市の企業職場への復帰・生産復帰関連業務の通知』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、省内の各種企業の職場への復帰、生産復帰日を2020年2月9日24時以降にするよう求めました。
(6)1月28日、雲南省省委員会省政府の新型コロナウイルスに感染した肺炎の拡大対応業務指導チーム指揮部は、『企業の職場への復帰と学校の始業延期に関する通告』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、省内の各種企業及び建設工事プロジェクトでは、2月9日24時以降に従業員を職場へ復帰させるよう求めました。
(7)1月29日、安徽省人民政府弁公庁は、『企業職場への復帰と学校始業日の延期に関する通知』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、省内の各種企業は、2月9日24時以降に従業員を職場へ復帰させるよう規定しました。
(8)1月29日、山東省人力資源社会保障庁は、『省内企業の職場への復帰延期に関する緊急通知』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、省内各種企業が2月9日24時以降に従業員を職場へ復帰させるよう規定しました。
(9)1月29日、福建省人民政府弁公庁は、『省内企業の職場への復帰延期に関する通知』を公布し、公共事業に関係する企業を除き、その他の企業は、自らの状況に基づいて2月9日(旧暦の1月16日、日曜日)24時以降に従業員を職場へ復帰させるよう規定しました。
(10)1月29日、湖北省防疫指揮部は、検討の結果、公共事業に関係する企業を除き、全省の各種企業の職場への復帰日は、2月13日24時以降とするよう決定しました。
(11)1月31日、北京市人民政府は、『新型コロナウイルス感染による肺炎の拡大の防止・抑制期間における北京市企業の柔軟な業務の手配に関する通知』を公布し、2月9日24時以降、公共事業に関係する企業を除き、その他の企業が条件を備えている場合、従業員に電話やインターネット等の柔軟な方式を通じて在宅勤務で相応の業務を完了するよう手配しなければならないと規定しました。従業員に在宅勤務を手配する条件を備えていない企業は、従業員への勤務の手配では時差出勤や弾力的な出勤等の柔軟な勤務時間計算方法を採用し、人員の密集や集中を避けなければならないとしました。
【2】新型肺炎~企業が最も注目する13のキーワード
キーワード1:必要な予防措置
Q1:職場への復帰延期期間中、企業は、どのような対応措置を講じるべきでしょうか。
A:
(1)企業内に新型肺炎の拡大に対応するチームを設立させます。企業の従業員と業務の具体的な状況を踏まえ、緊急対応プランと分担案を制定します。
(2)職場への復帰前に一人一人の従業員と連絡を取ります。そして従業員の健康状態、春節期間中の日程、新型肺炎の拡大が著しい地域から来た人との接触の有無、発症したと診断された者・発症の疑いのある者・隔離された濃厚接触者との接触の有無を把握します。
(3)職場への復帰前に充分な消毒用品や体温測定用品を購入し、職場への復帰後の職場エリアでの衛生面の安全を保証します。
Q2:職場への復帰後、企業は、どのような予防措置を取るべきでしょうか。
A:
(1)会社に来る従業員と来訪者に対して充分な体温の検査測定を行います。
(2)積極的に従業員と来訪者にマスクをつけ、手洗いを励行するよう求め、キチンとできているかどうか監督します。
(3)機械設備・事務用品・食堂の食器・会社に来た車両等に対して消毒を行います。
Q3:従業員が発熱していた場合、どのように扱うべきでしょうか。
A:
(1)適時病院へ連れていき診察を受けさせ、医師の診断に基づいて隔離するか自宅で休養させます。
(2)適時所属の街道弁事処へ報告を行い、その意見を聞きます。
キーワード2:現地法人と本社、従業員との情報や意思疎通
Q4:非常時において、現地法人は、どのように本社との情報や意思疎通を維持すれば良いでしょうか。
A:
(1)現地法人は、適時本社へ現地の新型肺炎の拡大状况、趨勢及び現地政府が採用している管理措置を報告します。
(2)本社が適時正確に判断を下し、対策を取れるよう、現地法人が新型肺炎の拡大により取引先の発注、業績や利益にもたらす可能性のある影響について適時分析を行い、これを本社に報告します。
(3)一旦現地法人で発症の診断や発症の疑いのある者が発見された場合、適時本社へ報告し、対策を検討して、正確に対応する必要があります。そして集団的な事件やニュースとなる事件が起きることを回避します。
Q5:非常時、現地法人は、どのように従業員との良好な意思疎通を維持すれば良いでしょうか。
A:
(1)現地法人は、従業員に人間的な関心を持ち、そのメンタル面の健康に配慮する必要があります。
(2)特殊な時期に企業が遭遇する困難と、これによって行う交代制出勤・休暇の交代や報酬の調整等の手配に対して、現地法人は従業員との意思疎通を強化し、従業員から理解を得る必要があります。これにより労働紛争の発生を避けます。
(3)労働組合との意思疎通を維持し、労働組合の役割を発揮させます。
キーワード3:休暇期間延長中の賃金についての正確な理解
Q6:国務院が公布した通知により春節休暇期間が2月2日迄延長されましたが、春節休暇の延長期間中は、「法定の祝祭日」ということになるのでしょうか。
A:春節休暇の延長期間中は、「法定の祝祭日」ではありません。 春節休暇の延長期間は、1月31日・2月1日・2月2日で、この3日間は、「休日」扱いとなります。
Q7:標準労働時間制の従業員について、春節休暇の延長期間中に休暇を取った場合、賃金を支給する必要はあるでしょうか。また休暇を取った従業員は、事後、振替出勤する必要があるでしょうか。
A:標準労働時間制の従業員にとって、この3日間は「休日」扱いとなりますので、賃金は支払われず、企業も休暇を取った従業員に対して事後に振替出勤を求めることはできません。
Q8:春節休暇の延長期間中に新型肺炎の拡大という事態のため出勤する必要のある従業員に対しては、どのように賃金を支給すべきでしょうか。
A:企業は、事後、これらの従業員に代休を手配することができます。代休を手配できない場合、企業は、休日における時間外勤務賃金の基準で2倍の賃金を支給する必要があります。
Q9:不定時労働時間制や総合労働時間制の従業員による春節休暇の延長期間中の業務に対しては、時間外勤務賃金を支給する必要があるでしょうか。
A:不定時労働時間制の従業員が春節休暇を延長した期間中に業務を行った場合、企業は時間外勤務賃金を支給する必要がありません。
総合労働時間制の従業員について、賃金の支給周期からこの3日間を控除した後、承認された勤務時間を超えた部分に対しては、1.5倍の基準で時間外勤務賃金を計算する必要があります。
Q10:新型コロナウイルス肺炎が発症したか、発症の疑いのある症状で隔離された従業員に対して、賃金の支給を停止することはできるでしょうか。
A:できません。企業は、従業員が正常に出勤した状況で取得できる賃金を支給する必要があります。従業員か、その家族に発症診断書か隔離証明書の提出を求めることができます。
Q11:新型肺炎の拡散を防止・抑制するため、上海市・広東省・山東省等の地方政府は、相次いで更に職場への復帰を延期する通知を公布しています。大多数の地方政府は、公共事業に関係する企業を除き、管轄区内の企業が2月9日24時以降に職場へ復帰するよう求めています。2月3日から2月9日の職場への復帰延期期間中の従業員の賃金は、どのような基準で支給すれば良いでしょうか。
A:地方によって職場への復帰延期政策には、大きな違いが存在しています。なお且つ、職場への復帰延期期間中の賃金にも、統一で明確な規定はありません。各地方の企業におかれましては、現地政府の通知や関連政策に注目していただくことを、お勧めいたします。
青島市を例にとりますと、現在青島市人力資源社会保障局が行っている説明では、2月3日から2月9日の職場への復帰延期期間中については、次の区分に分けて行なっているとのことでした。また今後、新たな関連規定が公布されれば、その新たな規定により取り扱うとのことでした。
(1)職場への復帰を延期した企業は、従業員に対して、労働契約で約定した賃金を支給する必要があります。
(2)規定により職場への復帰延期制限を受けない企業の従業員が2月3日から2月7日(月曜から金曜)に労働を提供した場合、企業は、正常な賃金基準で賃金を支給します。従業員が2月8日と2月9日(土日)に労働を提供した場合、この期間は休日であるため、企業は事後、従業員に代休を手配することができ、代休を手配できない場合、正常な賃金の200%の基準で休日の時間外勤務賃金を支給します。
キーワード4:大型イベントや出張
Q12:この期間中、セミナー・研修・会議・商談会等の大型イベントは、影響を受けるでしょうか。
A:この期間中は、新型肺炎の拡大防止・抑制の重要な時期となります。人が集まるイベントは、政府の許可が得られない状況では、開催を延期するか、テレビ電話や電話等の非接触な方法で行うことを、お勧めいたします。
Q13:従業員が職場へ復帰してから、出張を手配しても良いでしょうか。
A:新型肝炎拡大の状況を見ながら、従業員の健康に配慮して、その出張は、慎重に手配されることを、お勧めいたします。出張が必須でない場合は、電子メール・テレビ会議・電話会議を通じて業務連絡を行うことができます。
キーワード5:どのように年次有給休暇を使用するか
Q14:職場への復帰を延期している期間中、従業員へ年次有給休暇を優先的に使用するよう手配することはできるでしょうか。
A:原則として、弊所では従業員へ優先的に年次有給休暇の使用を手配することができると考えています。企業が従業員へ送付した年次有給休暇手配の通知に留意し、証拠として保管しておく必要があります。具体的には、現地政府の職場への復帰延期政策と齟齬が生じないかどうか、再確認されることを、お勧めいたします。
キーワード6:交代制出勤 配置転換 賃金の調整 自宅待機
Q15:新型肺炎拡大の影響を受け、企業が従業員を職場へ復帰させた後、発注が減り、業務量が減少した場合、企業は従業員を交代制で出勤するよう手配することができるとでしょうか。
A:労働組合や従業員と協議を行い交代制出勤方式を採用することができます。出来る限り全従業員の雇用を保障することも、ある程度、企業の負担軽減につながります。交代制出勤の具体的な方法には、交代制出勤期間・交代制出勤者・交代制出勤期間中の待遇が含まれ、具体的な状況は、具体的に分析する必要があるかと存じますので、必要であれば、いつでも弊所にご相談ください。
Q16:新型肺炎拡大の影響を受け、企業が従業員を職場へ復帰させた後、一部の生産現場で業務が無い場合、企業は当該生産現場の従業員を、その他の生産現場に配置転換して勤務させることはできるでしょうか。
A:企業は、従業員と協議を行い臨時に他の職位へ異動して勤務させることができます。ただ配置転換の合理性には、留意が必要となります。必要な場合には、新たな職位に就く前の研修を行います。配置転換は、容易に紛争が生じます。具体的な状況は、具体的に分析する必要があるかと存じますので、必要であれば、いつでも弊所にご相談ください。
Q17:企業が交代制出勤や配置転換措置を講じる場合、従業員の賃金を調整しても良いでしょうか。
A:集中的な配置転換や集中的な休暇を採用する際には、勤務時間が減少するので、労働組合や従業員と協議を行い、相応に賃金を引き下げることができます。配置転換措置を講じた場合、従業員と協議を行い、調整後の職位の待遇で取り扱うことができます。この協議の結果に基づいて従業員と合意書を締結しておくことを、お勧めいたします。具体的な状況は、具体的に分析する必要があるかと存じますので、必要であれば、いつでも弊所にご相談ください。
Q18:新型肺炎の拡大の影響を受けた企業の生産経営が著しい困難に陥った場合、従業員に自宅待機させることができるでしょうか。自宅待機期間中も賃金を支給する必要があるでしょうか。
A:特殊な時期に、企業の生産経営が著しく困難な場合、従業員に自宅待機を手配することができます。自宅待機期間中の賃金待遇については、全国各地で規定が異なっておりますので、企業所在地の規定で取り扱うことを、お勧めいたします。通常は、自宅待機期間中の最初の賃金支給周期中は、正常な賃金を支給する必要があります。最初の賃金支給周期以降、従業員と協議を行い最低賃金か現地政府規定の下限で賃金を支給することができます。集団的な紛争が起きることを避けるため、労働組合・従業員・現地政府との意思疎通にご留意願います。具体的な状況は、具体的に分析する必要があるかと存じますので、必要であれば、いつでも弊所にご相談ください。
キーワード7:労働契約の解除や延長
Q19:隔離治療期間中や医学的観察期間中の新型コロナウイルスに感染した肺炎発症者・発症の疑いのある者・濃厚接触者など、正常な労働を提供できない従業員に対して、企業は労働契約を解除することができるでしょうか。
A:企業は、『労働契約法』第40条、第41条に基づいて従業員との労働契約を一方的に解除することはできません。もし企業が生産経営が困難等の理由で労働契約の解除を望む場合には、従業員と協議を行い、労働契約を解除することを考慮することができます。
Q20:隔離治療期間中や医学的観察期間中に新型コロナウイルスに感染した肺炎発症者・発症の疑いのある者・濃厚接触者に該当する従業員が、隔離治療期間中に労働契約の期間が満了した場合、どのように処理すべきでしょうか。
A:労働契約の期間は、その従業員の隔離や治療が終了する迄、自動的に延長されます。延長期間が満了してから労働契約を終了できるかどうかについては、労働契約を締結した回数や労使双方の契約更新の意向等を勘案する必要があります。隔離や治療中の従業員や、その家族と密接にウィチャットや電話での連絡を取ることを、お勧めいたします。
キーワード8:企業は、人員削減の減少に努める
Q21:今回の新型肺炎拡大の影響を受けて企業の生産経営が困難な状況にある場合、人員削減を実施することができるでしょうか。
A:今回の新型肺炎の拡大は、確かに多くの企業へ多大な損失をもたらしています。しかし、この特殊な時期に、企業が人員削減を実施すれば大人数の従業員に失業をもたらし、より多くの社会的な不安定要素をもたらすことが懸念されます。このため、企業は、この時期に出来る限り人員削減をしないか、少人数の人員削減に留めることが宜しいかと存じます。これも企業の社会的な責任を示し、従業員の団結力を高める絶好の機会かと思われます。
1.柔軟な労務方式の活用
人員削減を行わない状況において、企業は優先的に労働組合や従業員と協議を行い次の措置を講じて、危機を乗り切ることができます。
(1)在宅勤務の条件が備わっている企業は、従業員がインターネットや電話等の柔軟な方法を通じて在宅勤務するよう手配します。
(2)在宅勤務の条件が備わっていない企業は、手配従業員に時差出勤や弾力的な出勤等、柔軟な勤務時間計算方法を採用することができます。
(3)企業の生産経営の具体的な状況に基づいて、交代制出勤の手配、休暇の手配、配置転換、賃金の調整、自宅待機等の方法を採用します。
2.その他の措置の利用
(1)今回の新型肺炎の拡大に対し、政府は今後、若干の税金・費用、社会保険料等の減免措置を打ち出す可能性があるため、企業として関連動向に注目されることを、お勧めいたします。
(2)取引先・仕入業者・大家と協議を行い、特殊な時期の損失を共同で分担します。
3.人員削減の減少に努める
上記の措置を採用しても、生産経営を維持できない場合でも、できるだけ少人数の人員削減を行い、大規模な人員削減を避けることを、お勧めいたします。こうすれば従業員と政府から理解と支持を得て、紛争と混乱の発生を避けることが更に容易になるかと存じます。
キーワード9:会社就業規則の再審査(非常時の待遇)
Q22:こうした非常時に企業が柔軟な労務方式をとりたくても、特殊な時期なため労働組合や従業員と具体的な事項について協議を行うことが難しい場合には、どうすれば良いでしょうか。
A:確かに、こういう問題が存在いたします。一部の企業では、就業規則の中に非常時の処理について専門の規定を設けています。これらの企業は、直接就業規則の規定に基づいて処理を行うことができます。非常時に関する規定がない場合、今後就業規則に完備することを、お勧めいたします。今回の緊急対応では、企業のメールアドレス・インターネット・ウィチャット等を通じて柔軟な方法を通じて従業員から意見を募ることを、お勧めいたします。
Q23:新型肺炎の拡大が短期間で収束しなかった場合、新型肺炎の拡大防止・抑制期間中の待遇は、どのような基準で支給すべきでしょうか。
A:こうした非常時の賃金待遇について、法律にはシステマチックで明確な規定はありません。企業は、自らの就業規則の中のこうした非常時の賃金待遇について、規定があるかどうかを確認してください。規定があれば、就業規則の規定を適用することができます。規定がなければ、企業は従業員と協議を行い、各地方の操業停止期間中の賃金基準を参照して支給する必要があります。
キーワード10:従業員のメンタル面の健康について配慮する
Q24:新型肺炎の拡大防止・抑制の過程で従業員にパニックが起きた場合、企業として何ができるでしょうか。
A:従業員のメンタル面での健康に関心を持つことは大変重要です。一般従業員に対し、企業は新型肺炎の拡大防止・抑制の正しい情報の宣伝を強化し、デマの拡散を防ぐことができます。新型コロナウイルス肺炎発症者や隔離された従業員に対し、企業はウィチャット・電話を通じて従業員自身や家族への慰問を行い、配慮することができます。特に隔離されたか治療を経て回復した後、職場に復帰する従業員に対し、企業は従業員自身のメンタルに配慮し、その従業員が差別を受けないように配慮します。
キーワード11:在宅勤務
Q25:新型肺炎の拡大防止・抑制の必要性から、在宅勤務を行った期間の賃金の計算・支給問題について教えてください。
A:使用者と労働者は、協議を行い労働契約の履行方法を変更することができます。企業が労働者に在宅勤務を手配する場合、従業員から書面で同意を取り、労使双方で勤務時間や賃金報酬等について更に約定することができますが、法律違反の規定はできません。使用者が労働者に在宅勤務を手配する場合、弊所として、次の提案をさせていただきます。
(1)労働者から書面で確認を取る際、ペーパーで確認することができない場合、電子メールやウィチャット等の方法で確認し、職場へ復帰した後で別途追完確認することができます。
(2)在宅勤務時の賃金計算方法を明確にするため、業務量を賃金の計算・支給の根拠とすることを、お勧めいたします。
(3)在宅勤務で形成された業務の成果について、適時まとめてバックアップを取っておきます。
Q26:在宅勤務期間中の労働災害は、どのように認定すべきか。
A:新型肺炎の拡大防止・抑制期間中、企業が在宅勤務を手配した従業員の『労働災害保険条例』の中の「勤務場所」とは、従業員の家にも延長されるものと思料いたします。従業員が受けた傷害が確かに宅勤務の過程で起きたもので、なお且つ上記の労働災害認定の事由に適合する場合、労働災害と認定しなければなりませんが、関係する証拠を提出して証明しなければなりません。
Q27:在宅勤務では、企業の営業上の秘密の保持に注意する必要があります。
A:営業上の秘密の保持について、多くの使用者はコンピュータ・USBメモリ・インターネット等が勤務場所でしか使用できないように設定する等、既に秘密保持措置を講じています。このため従業員が在宅かその他、元の勤務場所以外の場所で勤務する必要がある場合、使用者は、営業上の秘密保持措置の変更を考慮し、勤務場所の変更が営業上の秘密の漏洩につながらないよう保証する必要があります。
キーワード12:不可抗力の免責条項の援用
Q28:今回の新型肺炎の拡大は、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(以下「PHEIC」という。)ですが、不可抗力に該当するでしょうか。
A:不可抗力とは、予測不能で、回避不能で、なお且つ克服不能な客観的な状況を指します。しかし司法の実務においては、今回の新型肺炎の拡大が不可抗力に該当するかどうかに定説はありません。具体的には、今回の新型肺炎の拡大を踏まえ政府が関連措置を講じた具体的な日時、地域の範囲及び具体的な契約履行の詳細により上記の不可抗力の要件を構成するかどうかを具体的に判断する必要があります。また、双方が契約した不可抗力に関する条項の約定や準拠法の関連規定等の具体的な状況を見て、分析を行う必要があります。
Q29:企業が対外的に締結した業務契約が、今回の新型肺炎のパンデミックや関連する政府の措置により履行できない場合、不可抗力の免責条項を援用できるでしょうか。
A:先ず、契約の具体的な約定と履行の詳しい状況に基づいて不可抗力条項を援用できるかどうか判断する必要があります。次に、たとえ不可抗力条項を援用できたとしても、不可抗力が契約履行にもたらす実際の影響に基づいて一部又は全てを免責することができるかどうかを判断する必要があり、一概に全て免責される訳ではありません。
Q30:企業が正常に契約を履行できないのですが、どうすれば良いでしょうか。
A:不可抗力を受けた側の企業は、速やかに相手側へ不可抗力の事実を通知し、取引相手と契約履行の延期や契約の解除について協議を行う必要があります。協議が成立しなかった場合、将来的に契約紛争を引き起こす可能性があります。 政府が公布した職場への復帰延期に関する文書及び取引相手への通知・協議に関する証拠を保管しておくことを、お勧めいたします。また、協議が成功するかどうかに関係なく、企業には、「不可抗力」によって相手側にもたらされる損失の更なる拡大の回避に努める義務があります。
キーワード13:WHOの宣言したPHEICについて
Q31:1月30日にWHOは、今回の2019年の新型コロナウイルスの拡大を「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)と宣言しましたが、これは、何を意味しているのでしょうか。
A: PHEICとは、『国際衛生条例』の規定に基づいて決定される以下の緊急事態を指しています。
(1)疾病を通じて世界的に伝染する、その他の国への公衆衛生上のリスク。
(2)世界が協力して対応する必要のある措置。
国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態が起きたと確定した場合、WHOの事務局長は、手順を踏んで緊急提案を宣言しなければなりません。
Q32:WHOの事務局長は、どのような緊急提案を行ったのでしょうか。
A:WHOの事務局長は、中国に対して渡航や貿易の制限を行うことを推奨しないと特に強調しました。WHOの声明によれば、今回のPHEICの提案は、WHOに対する提案・中国に対する提案・全ての国に対する提案・国際社会に対する提案に分かれているとのことでした。
Q33:WHOは、今回の2019年の新型コロナウイルスの拡大をPHEICと宣言したそうですが、その有効期間は何時迄でしょうか。
A:PHEIC宣言の有効期間は3ヶ月で、これを過ぎると自動的に失効します。新型肺炎拡大の趨勢に基づいて、PHEIC宣言後も、随時撤回や修正を行うことができます。もし延長が必要な場合、WHOは会議を開催して評価を行ってから決定する必要があり、同時に新たなサポートの提案が行われます。
WHOが1月30日に宣言を行った際、新型コロナウイルスがPHEICを構成していることについて、事務局長は、事情を斟酌して3ヶ月後(場合によっては、より早く)に再度緊急事態委員会を招集することを決定したと述べました。
Q34:WHOが今回の2019年の新型コロナウイルスの拡大をPHEICと宣言したことは、中国企業と貿易取引のある日本企業の契約履行に、どのような影響を及ぼすでしょうか。
A:一部の周辺国や企業が国境での検疫、ビザ、国際航路等に緊急措置を講じたため、一部の中国の商社による正常な運営は、すでにある程度の影響を受けています。日本企業は、中国企業と適時インターネット・テレビ電話・電話を通じて連絡を取り、共同で友好的な協議を行い、契約の延期履行期間を延長されるか、契約を解除し、経済的な損失を最低限にする様に努めることを、お勧めいたします。具体的な状況は、具体的に分析する必要があるかと存じますので、必要であれば、いつでも弊所にご相談ください。
作成日:2020年02月04日