月末に入社した従業員について、 使用者はその月の社会保険料を納付する必要があるか
Q:日系企業の当社で新たに従業員を1名採用することになり、今月末に入社させる予定です。当該従業員について、社会保険料の納付を翌月開始とするとリスクがあるでしょうか。
A:
1.法律規定
労働者との労働関係は、使用者が当人を使用し始めた日から生じるものとなります。法律上、厳密に言えば、当月のどの時点で労働者が入社しても、使用者と労働者が雇用関係を結ぶのであれば、法により当月分の社会保険料を納付しなければならないとされています。
また、『労働契約法』第38条等の関連規定により、使用者が法定の社会保険料納付を履行しない場合には、労働者は労働契約を解除し、使用者に経済補償金の支払いを求めることができるとされています。
2.実務上の手続き
実務では、月末に新規入社した従業員についての社会保険料の納付において以下のような状況が考えられます。
(1)入社当月に、従業員本人、或いはそのもとの勤務先の使用者により当月分の社会保険料が納付されていた場合、この従業員を新たに採用した使用者が、改めて当月分の社会保険料を納付することはできず、翌月になってもこれを納付することはできないとされています。
(2)入社当月に、従業員本人、或いはそのもとの勤務先の使用者により当月分の社会保険料が納付されていない場合、実務上入社した従業員の社会保険加入者増員の手続きを行うタイミングには所定の要件が設けられています。青島市の場合、通常毎月15日までに手続きするものとされており、16日以降は社会保険の増員手続きを行うことができません。即ち、月末入社した従業員について当月分の社会保険料を納付することは事実上不可能ということになります。ただし関連政策により、使用者が翌月に追納することは認められています。
【留意点】
使用者が当月の社会保険料を未納であるか、その追納を行っていない場合、苦情申し立てを受けるか、これを理由に労働契約の解除と経済補償金の支払いを要求されるリスクがあります。また、人件費の面で、月末に入社した従業員について入社当月分の社会保険料を負担することは、使用者のコストを増大させることになります。以上の分析と人件費面の考慮を総合すると、以下のようにまとめられます。
①緊急性の職務を除いて、一般的な職務に従業員を新規採用する場合は、できれば月初入社とすることが望ましいといえます。
②やや緊急性のある職務か、その他の月末入社せざるを得ない状況においては、会社の生産・管理面を考慮したうえで、社会保険料コストの増加を諦めることにはなりますが、月末入社とすることは可能です。入社当月分の社会保険料の納付に関しては、次のような対応が考えられます。
・上記2の(1)の状況に該当する場合、当月分の社会保険料の納付ができない旨を事前に新規入社する従業員に説明して書面で認可を取得しておくことで、リスクをなるべく低減する。
・上記2の(2)の状況に該当する場合、当月分の社会保険料が納付できない原因及び翌月に追納する旨を事前に説明し、従業員の理解を得ておくことで、法的リスクを回避する。
作成日:2018年10月22日