「インターネット裁判所」時代の到来
9月9日午前、「北京インターネット裁判所」が正式に成立しました。この裁判所では北京市の管轄区域内において、基層裁判所で受理されるべき一審の特定類型に属するインターネット案件を集中的に取り扱うとされ、当事者はウェブサイト(www.bjinternetcourt.gov.cn)から北京インターネット裁判所のネット訴訟プラットフォームにアクセスするだけで、訴訟提起、立件、送達、和解、法廷審理、判決言い渡し、執行等の全ての又は一部の訴訟プロセスを、オンラインで行うことができるようになりました。
Q1:あらゆる紛争を全てインターネット裁判所で審理することができるのですか。
A1:全てということではありません。現在インターネット裁判所で審理される紛争は、主に以下のものに限定されます。
(1)ネットショッピング契約にかかる紛争
(2)インターネットサービス契約にかかる紛争
(3)インターネット金融の貸付、少額融資の契約にかかる紛争
(4)初回発表をインターネット上で行った作品の著作権又は著作隣接権の権利所属にかかる紛争
(5)インターネット上で発表又は配信された作品の著作権又は著作隣接権の侵害により発生した紛争
(6)インターネットドメインにかかる紛争
(7)インターネット権利侵害責任にかかる紛争
(8)ネットショッピングの製品責任にかかる紛争
(9)検察機関が提起したインターネット公益訴訟案件
(10)インターネットに対する行政管理に起因する行政紛争
(11)上級裁判所により管轄を指定された、その他のインターネット関連の民事、行政事件等の案件
また、北京インターネット裁判所は基層裁判所であり、当事者が当該裁判所による判決、裁定について上訴した案件については、北京市第四中級裁判所が審理することになります。ただし、インターネット著作権の権利所属・権利侵害にかかる紛争、インターネットドメインにかかる紛争の上訴案件については、北京知的財産権裁判所が審理します。
Q2:インターネット裁判所は、既存の裁判所と何が違うのですか。
A2:主な相違点は以下の通りです。
(1)当事者は、立件から執行までの全プロセスをオンラインで手続きできるようになり、自宅から出ることなく立件、証拠の交換、法廷審理、判決の言い渡し等の訴訟プロセスを行うことができるようになります。
(2)当事者は関連文書の閲覧や法廷審理の動画再生、訴訟案件の進捗照会、訴訟書類の提出を随時オンラインで行うことができます。
(3)開廷の際、傍聴を申請する者の人数も従来のように傍聴席数の制限を受けることがなくなり、訴訟プロセスがいっそう公開されたものとなります。
(4)最大のメリットは、北京インターネット裁判所では、ハイテクノロジーが応用され、訴訟リスク評価サービスを当事者が利用できる点にあります。電子訴訟プラットフォーム上の「訴訟リスク・スマート評価システム」は、類似案件の取り込まれた 司法ビッグデータからの分析や法律知識図録に基づいて、当事者の案件状況や相応するリスクを総合して報告書に整理してくれるものです。これによって当事者は事前に訴訟リスクについて知り、不要な損失を減少させることができます。
Q3:北京のほかには、どの地域にインターネット裁判所がありますか。
A3:杭州インターネット裁判所が2017年8月に設立されています。また、広州インターネット裁判所も近く設立されるとの報道があります。これらのインターネット裁判所での試行経験の蓄積、総括に基づいて、IT企業が集中して分布する一線、二線都市において、今後インターネット裁判所が次々に設立される見込みがあります。
作成日:2018年09月11日