従業員の労災治療費の一部に労災保険基金からの給付を受けられない場合の処理について
Q.青島にある日系独資のメーカーです。労災の発生率が高く、従業員が治療を受けた後で、一部費用について労災保険の給付が下りないという状況がしばしば発生します。こうした部分の費用は、当社が負担しなければならないのでしょうか。
A.従業員が労災による傷病を治療する過程で発生する治療費については、『労働災害保険条例』第30条第3項に、次の通り明確に定められています。「労働災害で受けた傷病の治療に必要な費用が、労働災害保険診療項目目録、労働災害保険医薬品目録、労働災害保険入院サービス基準(以下これらをまとめて「三目録」という)に適合するものである場合、労働災害保険基金から給付する。」
ただし、実際に労災を受けた従業員が治療を受ける過程で、この三目録の基準を超えた治療が病院によって行われるということがよくあります。この場合、三目録の基準を超える治療費は従業員の使用者が負担するのでしょうか、それとも労災を受けた従業員が自ら負担するのでしょうか。この点は、実務において大きく議論の分かれるところとなっています。
このような状況をどう処理すべきかについて、『青島市人力資源社会保障局労働災害保険医療管理及び費用精算弁法』の関連規定では、労災を受けた従業員の三目録の範囲を超える治療費は、「使用者による告知の有無」に鑑み、「同意した者が負担する」という原則に則って負担するものと規定されています。具体的には次のような規定となっています。
①従業員が治療を受ける際、当該従業員が、「業務のために、事故傷害を負ったか職業病を患ったケース」に該当するということを、使用者が自発的に医療機関に対し、書面により告知すべきである。使用者が適時に告知しない場合、三目録を超える部分の治療費は、使用者が負担するものとする。
②使用者が書面により医療機関への告知を行った状況において、医療機関は三目録を超える医薬品、診療項目、サービス施設等の使用について、使用者か、労災を受けた従業員及びその家族の意見を求めるべきである。使用者又は労災を受けた従業員及びその家族が三目録を超える薬品、診療項目、サービス施設の使用に同意したのであれば、超過分の費用は使用者又は労災を受けた従業員及びその家族が負担する。
③使用者が書面により医療機関に告知した状況において、医療機関が三目録を超える医薬品、診療項目、サービス施設等の使用について使用者又は労災を受けた従業員及びその家族に意見を求めなかった場合は、医療機関が超過分の治療費を負担する。
留意点
上記の青島市人社局の弁法は、労働災害保険基金によってまかなわれる分を超えた治療費の問題を合理的に解決するものになっているように思われます。
実務において、労災が発生したら、使用者はまず速やかに従業員に治療を受けさせると同時に、医療機関及び主治医に対して当該従業員が「業務のために、事故傷害を負ったか職業病を患ったケース」に該当することを告知するよう心がけましょう。また、カルテに、従業員が業務のために事故傷害を負ったか職業病を患ったものであることを注記してもらうよう、主治医に依頼することも必要です。
なお、上記は青島市における状況についての説明となりますが、他の地域での取り扱いはこの限りでなく、その地域の関連規定を踏まえた対応をとる必要があります。
作成日:2018年04月17日