加工貿易の新監督管理モデルの試行申請について
今年3月5日から施行されている『企業を単位として加工貿易の監督管理モデルパイロット地区を拡大する改革についての公告』(税関総署[2018]第19号公告、以下「19号公告」という)では、「企業を単位とする加工貿易監督管理モデル」(以下「新監督管理モデル」という)のパイロット地区の範囲が、9カ所の税関から上海市、広州市、青島市等26の税関に拡大されました。
これまで長く、委託加工等の加工貿易業務に従事する企業は、主に契約を単位として加工貿易帳簿の開設、消込等の税関管理手続きを行ってきましたが、原材料を流用した場合や、完成品の輸出が先行し、その後で原材料を輸入するといった場合の、故意によらないプロセス上の問題により、税関規定への違反となりやすいという問題がありました。
新監督管理モデルの確立後は、企業を単位とすることにより、パイロット地区内の条件に合致する企業で1つの帳簿を作成し、定期的に消込を受けるという管理モデルの試行を申請できるようになりました。この措置により、監督管理手続きが簡素化されるだけでなく、プロセス上規則違反となり税関から処分を受ける事態が回避できるようになりました。19号公告が施行されてから、26のパイロット地区内において、条件に合致する日系企業は、全て新監督管理モデルの試行を申請できるようになりました。19号公告について、以下に簡単に説明いたします。
◇政策のポイント
1.企業を単位とする監督管理モデルの試行申請には、一定の要件を満たす必要があります。
企業を単位とする監督管理モデルを試行しようとする日系企業は、自身の名義で加工貿易業務に従事する生産型企業であり、かつ税関の信用ランクの要求を満たしている必要があります。ここでの信用ランクの要求とは、税関により、「一般認証」以上に認定されているか、「一般信用」に認定されている企業であっても、加工貿易に関する貨物やデータの企業内管理が良好であることをいいます。申請要件を満たしていない企業には、従前の「契約を単位とする」監督管理モデルが適用されます。
2.監督管理手続きの簡素化
「新監督管理モデル」は、帳簿の開設、消込周期、外注加工、集中的国内販売、深加工結転、残余材料結転の各手続きを簡素化し、申告伝票を減らし、通関の効率を向上させることで、貿易の簡素化を促進するものとなっています。
3.加工貿易企業の責任を強化
新監督管理モデルは、企業による自主管理を促し、自律的管理の責任強化を図り、企業が関連のデータ、伝票、資料を適切に保管することを求めています。要求の通りに関連データ、伝票、資料を提出、保管していない企業に対しては、新監督管理モデルの試行が認められない可能性があります。
◇留意点
今回のパイロット地区における改革は、これまで契約を単位とする監督管理モデルを実施していた加工貿易企業を主な対象としています。
新監督管理モデルに強制性はないため、企業は自ら申請するかどうかを決定することができます。契約を単位とする監督管理モデルを実施する企業で、新監督管理モデルの申請要件を満たしているようであれば、企業自身の実情に鑑み、税関への申請を検討いただくことができます。
また、新監督管理モデルが主流になりつつあるとはいっても、パイロット地区の税関で新監督管理モデルが完全に把握され、対応が確立するまでには一定時間を要すると予想されます。申請を検討される日系企業の皆様は、19号公告の内容を入念に読まれ、今後の監督管理の動向にもご注目いただけるとよいかと存じます。
作成日:2018年03月22日