法律相談Q&A

「史上最も厳しい」環境保護施策

Q.青島の日系企業です。最近、中国の環境保護政策が厳しさを増していると聞いています。最新の環境保護の動向と方針について教えて下さい。

A.中国経済の急速な発展とともに、環境問題が次第に顕在化するようになりました。かねてより中国政府でも環境問題の解決を重視し、環境保護を強化するためのさまざまな取り組みが行われています。

1.環境保護への法的根拠としての環境保護立法の強化
2014年から、全人代常務委員会、国務院、環境保護部等、複数の機関による環境保護関連法令の集中的な公布が相次いでいます。これらの中に、新『環境保護法』、『環境保護所管機関による日割連続処分施弁法』、『環境保護税法』等も含まれており、中でもこの度改定された新『環境保護法』は、環境保護に関して「史上最も厳しい」法律であると言われています。

2. 環境保護に対する監督管理の政府職責の明確化、環境法執行の強化
①地方自治体による環境保護業務に対する、中央政府の監督が強化されました。2016年1月4日、環境保護部、中央紀律委員会、中国共産党中央組織部により設立された8つの中央環境保護督察組をそれぞれ各省(自治区、直轄市)へ派遣し、国に代わって各地で環境保護等に関する業務を行っています。
②地方自治体の下級機関による環境保護業務に対する、上級機関の監督が強化されました。環境保護目標責任制及び政府の主要責任者の引責辞任制度の規定が追加され、環境保護目標の達成状況が政務の業績における考課の指標とされるようになりました。

3.企業の汚染防止責任への監督強化、環境関連法への違反行為への法的制裁加重、違法コストの増加
①連続する日数分の制裁金を計算し、制裁金の額にも上限を設けないとした。
②「ブラックリスト」制度を確立し、環境関連法への違反情報を社会信用ファイルに記録して社会へ公表し、企業の信用レベルを低下させる。
③資金凍結、資産押収、生産制限、生産停止等の行政処分措置の規定を追加した。
④行政拘留の規定を追加した。新『環境保護法』第63条所定の状況の一つに該当し、犯罪を構成しない場合、直接責任者を拘留することができるとする。
⑤その他、公害訴訟、環境修復制度、終身責任制等の関連する環境保護政策を制定した。

環境保護部ウェブサイトの情報によると、今年1月から8月に中国全土で行われた調査の結果、処分が下された環境違法事件は2.5万件近くに及び、日割計算される制裁金の金額も9億元に及んでいます。ちなみに、取り締まりを受けた環境違法事件の件数は、山東省が最多となっています。取り締まりの対象となった環境汚染事件の中でも、密かにパイプラインを設置して汚染物質を排出する、基準を超えて汚染物を排出するといったケースが多いようです。中国の環境保護に関する政策はまだ模索段階にあるとはいえ、今後、環境保護及び処分に関する政策の体系化、システム化がより進み、所管の各機関の管轄区内における環境保護及び汚染に対する処分への監督管理もいっそう厳格化されて対象範囲が拡大されるものと思われます。これについて、日系企業では以下のような措置を取られることをお勧めいたします。

①実際の生産経営において、内部統制の強化・徹底や、最新の環境保護政策の遵守を図り、潜在的違法リスクを予防し、制御する。
②会社の環境保護設備、関連の許可等が最新の法律規定に合致するものとなっているかどうか、全社点検を実施し、問題を発見したら、速やかに改善する。
③所在地の環境保護局等の政府機関のウェブサイトを随時チェックするようにし、政府機関との意思疎通を図り、交流を深める。
④中国での企業新設を計画している場合、事前に関連する地域の環境保護政策について調べ、環境アセスメントや、予定地の環境状況の調査を行っておくことが望ましい。

作成日:2017年10月18日