民法総則:中国民事立法史上の一里塚
◇全国人民代表大会にて『中華人民共和国民法総則』が審議され、可決されました。これは、中国の民法典編纂業務の最初の一歩の完成するものであり、中国の民事立法史上、一里塚的な意義があります。今回は、本法について簡潔に説明させていただきます。
◇今回説明させていただく法律
『中華人民共和国民法総則』(以下「本法」という。)は、全国人民代表大会にて2017年3月15日に公布され、同年10月1日から施行されます。
◇日系企業の皆様に留意していただく必要のあるポイント
1.訴訟時効が2年から3年に延長されました。
訴訟時効の起算点は、もともと「権利者が権利の損害を知ったか、知るべき日から計算される」と規定されていたものが「権利者が権利の損害及び義務者を知ったか、知るべき日から計算される」と調整されました。時効期限と時効の起算点という2つの面から民事主体の権益の保護が強化されました。
2.「習慣」も民事紛争解決の根拠にできるようになりました。
民事紛争を処理する場合、関係する法律に規定がない場合でも、公序良俗に違反しないことを前提に「習慣」を適用することができるようになりました。しかし、前述の「習慣」について、『民法総則』に具体的な規定は設けられておりません。実務において、「習慣」の定義と範囲をどのように理解し把握すれば良いかについては、地区ごと担当者ごとに理解が異なる可能性があります。そのため、具体的には関係する所管機関の理解により取り扱う必要があります。
3.民事行為は、公共秩序及び善良な風習に違反してはならず、違反すれば、無効な行為となります。
4.法人の実情と登記の状況が一致しない場合、善意の第三者に対抗できません。
実務において、企業が董事、監事、総経理を交代される際には、速やかに関係する所管機関に出頭して登記変更手続を行って下さい。行わない場合、企業に不利な法的結果が生じる恐れがあります。
◇日系企業の皆様に留意いただきたい点
『民法総則』は、民事法律関係の基礎的、総合的な法律規定であり、上では主に企業と密接に関係のある幾つかの新規定を挙げました。上記の規定のほか、『民法総則』は、非法人組織の民事主体としての地位及び責任、代理の整備を確認する等、その他の民事法に関係する規定を調整いたしました。全体的に言って、『民法総則』は、民事行為を更に制度化し、民事に対する違法、違約行為への懲戒力を高め、相応の違法、違約コストを増加しました。外資系企業にとりましても、更に秩序のある、信義則を守る社会環境が構築され、企業の生産、経営に利するのではないかと存じます。
作成日:2017年05月08日